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第4章 幼女、孤児院に恩返しする

幼女、復帰する

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「ふわぁ……おはよう……」

 王都から帰ってきて1週間。
 しばらく休んでいた私だが、今日から冒険者活動再開だ。

「おはよう~」

 食卓には2人分の朝食、それからリリスが席に座っている。

「あれ?フィナとマインは?」

「もう出かけたよ。ご飯は作っておいてくれたみたい」

「そっかそっか」

 リリスの隣に座り、2人で手を合わせる。

「「いただきます」」

 孤児院へ向かうにあたって、みんなへのプレゼントを買いたい。
 そのためにはお金がいる。
 今日から依頼をどんどんこなして、プレゼント代を稼ぐ予定だ。

「ミリア、今日はどうするの?」

「んー、協会にちょうどいい依頼があったらそれをやろうかな。なかったらダンジョンか野外かでモンスターを狩る」

「りょーかい。私も付き合うね」

「ありがと。ご飯食べ終わって準備できたらすぐ出発でいい?」

「いいよ」

 この1週間、あれこれと研究関連で頭は使っていたが、全くと言っていいほど戦闘はしていない。
 少し体も鈍っているだろうし、今日はゆっくりと軽くやろうっと。

 食器の片づけをして準備を整え、私とリリスはギルドホームをあとにした。
 冒険者協会への道を手を繋いで歩いていく。
 今日のリリスは、長い耳を隠すためのローブをかぶっていない。
 私が開発したスキル【外形擬態】を習得し、自分の姿を完璧な人間に見せているのだ。
 といっても、耳が人間のものになっているだけだけど。

「あ、ミリアだ!」

 向こう側から駆けて来た男の子が、私の前で立ち止まった。
 武器屋の息子ロインだ。

「久しぶり、ロイン。元気?」

「元気だよ!その子は?」

「初めまして、リリスだよ」

 リリスが右手を差し出す。
 ロインはその手を取ってぶんぶん振った。
 大丈夫?ちぎれない?

「ぼくはロイン!父さんは武器屋やってるんだ!よろしくね!」

「うん。よろしく」

 今日もロインは元気いっぱいだな。
 両ひざに擦りむいた痕がある。
 相変わらずのわんぱくぶりなようだ。

「今日はエリーチェお姉いないの?」

「私たちだけだよ。エリーチェは仕事でどこか行ってると思う」

「そっか~」

 ロインは残念そうにため息をついた。
 本当にエリーチェになついているみたいだね。

「そうだ!友達と約束してたんだった!じゃあねバイバイ!」

 ロインは思い出して手を叩くと、またすごい勢いで駆け出していった。
 せわしない子だな。
 あーあ、また石につまずいて転んでるし。
 それでもすぐに立ち上がって走り出すと、その背中は街の人混みへと消えていった。

「何というか……すごい元気な子だね」

「ね。ロインのお父さん、ゼンはすごく腕のいい職人なんだよ。私がサーナと戦ってる時に着てた鎧、覚えてる?」

「あー、あの紫色のやつ?」

「そう。あれもゼンに造ってもらったんだ。だから武器が欲しいとかメンテナンスしたいとかの時は、ゼンの店に行くといいよ」

「私も鎧とか作ってみようかなー」

「いいね!じゃあお金を貯めなきゃ」

「うん!私は鎧のため、ミリアは孤児院のみんなのため、頑張って稼ごうか」

「そうだね」

 幼女が2人、モンスターを狩って金を稼ごうなどと物騒な会話をしながら街を歩いていく。
 そして到着しました。久しぶりの冒険者協会。

「お、ミリアとリリスだー」

 ドアを開けると、そこにはイリナが立っていた。

「おはよう。これから依頼?」

「そう。休んだ分、しっかり働かないとね」

「頑張ってね」

「うん。ミリアたちも」

 イリナが出ていくと、入れ替わりにダリエスが入ってきた。
 私たちを見ると近づいてきて、大きな手で2人の頭を撫でる。

「今日から復帰か!いや、戦力が戻ってきてくれて助かるぞ」

「何か事案でもあるの?」

「いや、特に変わりはねえ。ただ通常時でも、ここにはたくさんの依頼が入ってくる。それに野外のモンスターの駆除も必要だからな。冒険者協会に暇な時はねえってことよ」

「なるほど。今日から私たちも頑張って働くよ」

「頼んだぜ。じゃ、俺は報告書の整理をするんで失礼するぜ」

 そう言うと、ダリエスは階段で2階へと上がっていった。
 私たちはララのいるカウンターへと向かう。

「おはよー」

「おはよう」

「あら、2人ともおはよう。今日から復帰?」

「うん。何かいい依頼あったりしない?」

「そうね……。そうだ、2人が復帰したら任せようと思ってた依頼があったのよ」

 ララはカウンターから1枚の紙を取り出した。

「ラーオンから馬車で30分くらい行ったところに、ハレイドという農村があるの。農作物の生産量が多いこの辺りにとって重要な村なんだけど、最近そこで地震が多発してるのよね」

「地震?」

「そう。村の人たちに聞いてみたところ、こんなに地震が頻発することはなかったんですって。一度、冒険者を派遣したんだけど何も見つからなかったの。もしかして2人なら、何か見つけられるかもと思ってね」

「なるほど。リリスどうする?」

「私はいいと思うよ。ちゃんと報酬が出るなら」

「それはもちろん出すわ。調査への報酬は必ず払う。さらに原因を特定、何かモンスターが原因でそれを討伐した際には、上乗せして払う」

「じゃあ、この依頼を受けるよ」

「助かるわ」

 ララは村人の証言をまとめた資料を渡してくれた。
 馬車の中でリリスと読むことにしよう。

「それじゃあ、気を付けてね。いい報告を待ってるわ」

「「はーい」」

 さてさて、復帰後最初の依頼、張り切っていくぞー。
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