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第3章 幼女、王都へ行く
幼女、感謝する
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「ふぅ……なるほどね」
ルーガティウスが事の全てをつづった手記を、私は静かに閉じて天井を見上げた。
「ミリアの部下たちはやっぱりすごい人たちだね」
リリスの言葉に私は笑顔で頷く。
「そりゃ、私の助手たちだからね」
まあ、ここまでとは少し想定外だけど。
私が病気になってから、アイツらがこそこそと何かやっているのは知っていた。
あえて詮索したりはしなかったのだが、まさか転生などということを考えていたとはね。
ただ恩を返すだけでなく、謎解きを作って挑戦状にするというのも彼ららしい。
考えてみれば、最初から手記の隠し方ひとつとってもおかしかった。
ユーゲルの【幻惑錠】を解くには七賢人を上回る実力が必要。
メリュンが使った【浮定の封櫃】に至っては、彼女自身かその声帯を完璧に再現できる人しか開けられない。
要は、私でなければほぼ100%見つけられない仕掛けだったわけだ。
そして裏裏意味。
裏意味はまだ法則性があるためリリスが解読できたけど、裏裏意味はまるで法則性のない文字の羅列だ。
私とアイツら以外に読みことが出来ない文字で、最終目的地を知らせてきた。
そして最後の最後は七賢人の人形との戦闘。
攻撃パターンが分かりきっていたから倒すことが出来たが、私がいなければ苦しい……というかほぼ無理だったはずだ。
こうした違和感も、全ては転生するかもしれない私へ向けたものだというのなら、簡単に納得がいく。
ルーガティウスは「どうか謎を解き、驚いて、笑ってください。」とか言っていたっけ。
うん、まあ、少しはびっくりしたかな。
まさかお前らが転生などということを考えているとは思わなかった。
でも研究を成功させたことにはさして驚かないよ。
だってお前らは私の最高の助手たちなんだから。
答え合わせをするとしたら研究は大成功。採点するなら満点だよ。
「ん……んん……」
うめき声と共に、床に横たわっていたイリナが目を覚ました。
体を起こし、私たちの方を見て瞬きを繰り返す。
「全部……終わったの……?」
「終わったよ。立てる?」
「うん、何とか」
「そっか。じゃあ帰ろう。歩きながら全部話してあげるよ。そうだ、上ではシエルが待ってるんだったね」
私は手記を箱に戻し、それを大切に抱えて歩き出す。
左にリリス、右にイリナが並んだ。
さてと。
ルーガティウスは私が「やるじゃん。偉い偉い」と言うと確信していたらしい。
それを知りながら言うのはどうにもしゃくだけど、それくらいは言ってやってもいいか。
どうせなら……
全てを聞いて「絆だね……うぅ……絆だよ……」とか言いながら感動の涙を流しているしているイリナと、何がなんだか分からないという顔をしているシエル、そしてリリスを連れて、私は『賢者たちの広場』へとやってきた。
シエルにはあとでちゃんと説明することにしよう。
夕暮れの時の陽射しを浴びて、銅像たちはキラキラと輝いている。
造られてからだいぶ経つだろうに、きれいに手入れされているな。
私は1人、リスターニャの銅像の背後に立つ。
そして銅像の1人1人、特にルーガティウスたち4人とは長めに目を合わせた。
「はぁ……しょうがない」
まさか私がここでコイツらに感謝することになるとは。
リリスが頭を下げた時には、どうだお前たち、良かったなみたいな偉そうな雰囲気だしてたくせにね。
「んー、まずは、そうだね。ありがとう。お前たちのおかげで、やり遺したことが成し遂げられる」
パンツの整理はもう達成したけど。
「それからリリスとも出会えた。彼女をエルフに戻すこともできたよ。ルーガティウス。お前の子孫は立派な剣士だぞ。言っておくけど、お前は子孫に完敗したからな」
リリスとイリナ、それにシエルは、少し離れた場所から私のことを見守っている。
おそらくこの声は聞こえていないかな。
聞こえていたとしたら何だか恥ずかしい。
「謎解きもなかなかに楽しめた。昔のことも思い出せたしね。本当にありがとう」
あー、「言うと確信している」とか言われて口にするのって本当にしゃくだな。
でもそれくらいはしてやらないと。
「お前たち、やるじゃん。偉い偉い」
大賢者リスターニャの物語は、助手たちとの出会いをもって始まったと言っても過言ではない。
そして2000年前、その物語は第1章の終わりを迎えた。
それから時が経ち、第2章がやはり助手たちのおかげで始まっている。
アイツらがくれたこの最高のプレゼント。
活かしてやらないと申し訳が立たないね。
私は決意と共に銅像へ語りかける。
「まあ見ててよ。私が新しい仲間と始める2周目の物語を」
パンツから始まって盗賊と戦い、王都では転生の謎を知った。
物語はまだまだ序幕。オープニングが終わっただけだ。
本当に面白いのはこれからだよ、多分ね。
だからお前らには見守っていてほしい。
前世大賢者のつよかわ幼女がこれから歩んでいく冒険の日々を。
「お前たち、お疲れ様。本当にありがとう」
感謝を伝えて私はみんなの元へ戻る。
「あれ?ミリア泣いてる?」
「な、泣いてないし!」
リリスの言葉に、私は強がりながら顔を反らしてみせた。
その視線の先で銅像たちの顔が心底嬉しそうに笑ったのは……気のせいだよね、多分。
ルーガティウスが事の全てをつづった手記を、私は静かに閉じて天井を見上げた。
「ミリアの部下たちはやっぱりすごい人たちだね」
リリスの言葉に私は笑顔で頷く。
「そりゃ、私の助手たちだからね」
まあ、ここまでとは少し想定外だけど。
私が病気になってから、アイツらがこそこそと何かやっているのは知っていた。
あえて詮索したりはしなかったのだが、まさか転生などということを考えていたとはね。
ただ恩を返すだけでなく、謎解きを作って挑戦状にするというのも彼ららしい。
考えてみれば、最初から手記の隠し方ひとつとってもおかしかった。
ユーゲルの【幻惑錠】を解くには七賢人を上回る実力が必要。
メリュンが使った【浮定の封櫃】に至っては、彼女自身かその声帯を完璧に再現できる人しか開けられない。
要は、私でなければほぼ100%見つけられない仕掛けだったわけだ。
そして裏裏意味。
裏意味はまだ法則性があるためリリスが解読できたけど、裏裏意味はまるで法則性のない文字の羅列だ。
私とアイツら以外に読みことが出来ない文字で、最終目的地を知らせてきた。
そして最後の最後は七賢人の人形との戦闘。
攻撃パターンが分かりきっていたから倒すことが出来たが、私がいなければ苦しい……というかほぼ無理だったはずだ。
こうした違和感も、全ては転生するかもしれない私へ向けたものだというのなら、簡単に納得がいく。
ルーガティウスは「どうか謎を解き、驚いて、笑ってください。」とか言っていたっけ。
うん、まあ、少しはびっくりしたかな。
まさかお前らが転生などということを考えているとは思わなかった。
でも研究を成功させたことにはさして驚かないよ。
だってお前らは私の最高の助手たちなんだから。
答え合わせをするとしたら研究は大成功。採点するなら満点だよ。
「ん……んん……」
うめき声と共に、床に横たわっていたイリナが目を覚ました。
体を起こし、私たちの方を見て瞬きを繰り返す。
「全部……終わったの……?」
「終わったよ。立てる?」
「うん、何とか」
「そっか。じゃあ帰ろう。歩きながら全部話してあげるよ。そうだ、上ではシエルが待ってるんだったね」
私は手記を箱に戻し、それを大切に抱えて歩き出す。
左にリリス、右にイリナが並んだ。
さてと。
ルーガティウスは私が「やるじゃん。偉い偉い」と言うと確信していたらしい。
それを知りながら言うのはどうにもしゃくだけど、それくらいは言ってやってもいいか。
どうせなら……
全てを聞いて「絆だね……うぅ……絆だよ……」とか言いながら感動の涙を流しているしているイリナと、何がなんだか分からないという顔をしているシエル、そしてリリスを連れて、私は『賢者たちの広場』へとやってきた。
シエルにはあとでちゃんと説明することにしよう。
夕暮れの時の陽射しを浴びて、銅像たちはキラキラと輝いている。
造られてからだいぶ経つだろうに、きれいに手入れされているな。
私は1人、リスターニャの銅像の背後に立つ。
そして銅像の1人1人、特にルーガティウスたち4人とは長めに目を合わせた。
「はぁ……しょうがない」
まさか私がここでコイツらに感謝することになるとは。
リリスが頭を下げた時には、どうだお前たち、良かったなみたいな偉そうな雰囲気だしてたくせにね。
「んー、まずは、そうだね。ありがとう。お前たちのおかげで、やり遺したことが成し遂げられる」
パンツの整理はもう達成したけど。
「それからリリスとも出会えた。彼女をエルフに戻すこともできたよ。ルーガティウス。お前の子孫は立派な剣士だぞ。言っておくけど、お前は子孫に完敗したからな」
リリスとイリナ、それにシエルは、少し離れた場所から私のことを見守っている。
おそらくこの声は聞こえていないかな。
聞こえていたとしたら何だか恥ずかしい。
「謎解きもなかなかに楽しめた。昔のことも思い出せたしね。本当にありがとう」
あー、「言うと確信している」とか言われて口にするのって本当にしゃくだな。
でもそれくらいはしてやらないと。
「お前たち、やるじゃん。偉い偉い」
大賢者リスターニャの物語は、助手たちとの出会いをもって始まったと言っても過言ではない。
そして2000年前、その物語は第1章の終わりを迎えた。
それから時が経ち、第2章がやはり助手たちのおかげで始まっている。
アイツらがくれたこの最高のプレゼント。
活かしてやらないと申し訳が立たないね。
私は決意と共に銅像へ語りかける。
「まあ見ててよ。私が新しい仲間と始める2周目の物語を」
パンツから始まって盗賊と戦い、王都では転生の謎を知った。
物語はまだまだ序幕。オープニングが終わっただけだ。
本当に面白いのはこれからだよ、多分ね。
だからお前らには見守っていてほしい。
前世大賢者のつよかわ幼女がこれから歩んでいく冒険の日々を。
「お前たち、お疲れ様。本当にありがとう」
感謝を伝えて私はみんなの元へ戻る。
「あれ?ミリア泣いてる?」
「な、泣いてないし!」
リリスの言葉に、私は強がりながら顔を反らしてみせた。
その視線の先で銅像たちの顔が心底嬉しそうに笑ったのは……気のせいだよね、多分。
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