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第3章 幼女、王都へ行く
幼女、木の葉を探す
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「さーてと、私たちは残る2つの手記を探そう」
イリナとリリスはすぐさま出かけたため、図書館には私とシエルが残されている。
「探すって言っても……これまで何人もの学者がいろんなところを探し回ってるわよ?」
「んー、片方は根気さえあれば見つかるかな。ユーゲルの二つ名って何だっけ?」
「『鏡面の幻影術師』よ。あと、ユーゲル様ね」
「う、うん。その名の通り、人を欺くのが得意な訳だ。何たって、『木の葉隠すなら森に隠せ』が座右の銘だった男だからね」
「……そんな話、聞いたことないんだけど」
あれ。
ユーゲルの座右の銘は私も助手もみんな知ってたはずなんだけど、誰も書き遺さなかったのか。
まあ、書き遺したところでどうしようもない話なんだけど。
「さて、この場合の木の葉は彼の手記です。では森とはどこでしょう?」
「えっと……本がたくさんあるところ」
「それそうなんだけど!もうちょい具体的に言うと?」
「まさか……この図書館?」
「だいせーかい!」
私がグーサインを出しても、シエルは困惑しながら首をぶんぶん振った。
「ありえないわ。ここに入ってくる本は、全て職員によって中がチェックされているの。さすがに手記が紛れていたら気付くわよ」
「いや『鏡面の幻影術師』にとっては、手記を普通の本に見せて職員の目を欺くくらい余裕だよ」
ユーゲルの手記は、絶対にこの図書館のどこかの棚に平然と入れられている。
根拠はない。でも確信はある。
問題はどこに隠されているかだ。
圧倒的な量の本があるここで、一冊一冊をしらみつぶしに探していたらいつまで経っても終わらない。
ある程度、見当をつけて棚を絞り込む必要がある。
考えろ。
ユーゲルの性格を思い出して、アイツならどこに隠すか割り出すんだ、
きっと彼は、手記を探そうとする人の裏をかくに違いない。
普通何かを隠す時は、できるだけ目立たない場所に置きたくなるもの。
その裏というと、1番目立つ場所ということか。
「シエル」
「何?」
「この図書館の中で、1番読まれている本ってどれ?」
「それはやっぱり、リスターニャ様の伝記じゃないかしら。誰もが1回は目を通す本だもの」
「それだ」
リスターニャの伝記は何冊も所蔵されているようだから、ダミーも作りやすい。
この図書館にある私の伝記の中に、ユーゲルの手記が紛れ込んでいるはず。
「ここにある伝記を全て集めてもらっていい?」
「え、ええ」
何がなんだか分からず困惑しているシエルに頼み、私もテーブルに伝記を集めてくる。
集めてはきたのだが……
「み、見つからない……」
どれも普通の伝記で、スキルで偽装した痕跡は一切ない。
私の読みが外れた……?
いや、きっとユーゲルはこの伝記に何かの細工をしているはず。
根拠のない自信だけど。
「どれも普通の伝記ね。特に違和感はないわ」
「うーん……」
私が頭を悩ませていると、図書館へ入った時にカウンターで見かけた男性職員が近づいてきた。
「あのー、すいません。何かの研究でしょうか?リスターニャ様の伝記を集めておられるようでしたので、今ちょうど返却されたものも持ってきたんです」
そう言って、職員はシエルへ本を渡す。
まあ、横のちびっこがメインで調査しているとは思わないよね。
「ありがとうございます」
「いえ、とんでもないです」
男性職員が去ったあと、シエルが私に本を渡してくれる。
「どうかしら?私には普通の伝記にしか見えないんだけど」
「ううん。これだよ。これこそ、私が探していたユーゲルの手記だ」
さて、あとはこの本にかけられた“鍵”を壊すだけだな。
イリナとリリスはすぐさま出かけたため、図書館には私とシエルが残されている。
「探すって言っても……これまで何人もの学者がいろんなところを探し回ってるわよ?」
「んー、片方は根気さえあれば見つかるかな。ユーゲルの二つ名って何だっけ?」
「『鏡面の幻影術師』よ。あと、ユーゲル様ね」
「う、うん。その名の通り、人を欺くのが得意な訳だ。何たって、『木の葉隠すなら森に隠せ』が座右の銘だった男だからね」
「……そんな話、聞いたことないんだけど」
あれ。
ユーゲルの座右の銘は私も助手もみんな知ってたはずなんだけど、誰も書き遺さなかったのか。
まあ、書き遺したところでどうしようもない話なんだけど。
「さて、この場合の木の葉は彼の手記です。では森とはどこでしょう?」
「えっと……本がたくさんあるところ」
「それそうなんだけど!もうちょい具体的に言うと?」
「まさか……この図書館?」
「だいせーかい!」
私がグーサインを出しても、シエルは困惑しながら首をぶんぶん振った。
「ありえないわ。ここに入ってくる本は、全て職員によって中がチェックされているの。さすがに手記が紛れていたら気付くわよ」
「いや『鏡面の幻影術師』にとっては、手記を普通の本に見せて職員の目を欺くくらい余裕だよ」
ユーゲルの手記は、絶対にこの図書館のどこかの棚に平然と入れられている。
根拠はない。でも確信はある。
問題はどこに隠されているかだ。
圧倒的な量の本があるここで、一冊一冊をしらみつぶしに探していたらいつまで経っても終わらない。
ある程度、見当をつけて棚を絞り込む必要がある。
考えろ。
ユーゲルの性格を思い出して、アイツならどこに隠すか割り出すんだ、
きっと彼は、手記を探そうとする人の裏をかくに違いない。
普通何かを隠す時は、できるだけ目立たない場所に置きたくなるもの。
その裏というと、1番目立つ場所ということか。
「シエル」
「何?」
「この図書館の中で、1番読まれている本ってどれ?」
「それはやっぱり、リスターニャ様の伝記じゃないかしら。誰もが1回は目を通す本だもの」
「それだ」
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この図書館にある私の伝記の中に、ユーゲルの手記が紛れ込んでいるはず。
「ここにある伝記を全て集めてもらっていい?」
「え、ええ」
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集めてはきたのだが……
「み、見つからない……」
どれも普通の伝記で、スキルで偽装した痕跡は一切ない。
私の読みが外れた……?
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根拠のない自信だけど。
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「うーん……」
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「あのー、すいません。何かの研究でしょうか?リスターニャ様の伝記を集めておられるようでしたので、今ちょうど返却されたものも持ってきたんです」
そう言って、職員はシエルへ本を渡す。
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「ありがとうございます」
「いえ、とんでもないです」
男性職員が去ったあと、シエルが私に本を渡してくれる。
「どうかしら?私には普通の伝記にしか見えないんだけど」
「ううん。これだよ。これこそ、私が探していたユーゲルの手記だ」
さて、あとはこの本にかけられた“鍵”を壊すだけだな。
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