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第30話 顔面キックと怠け者と牧場スタート

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 朝。
 俺は眠ったままのグレイに、顔面キックを喰らって目を覚ました。
 ぽふっという優しい目覚ましではあったけども、いやはや寝相が悪いなこのネコは。

「ぬぁ~」

 大きく伸びをして、一日が始まる。
 窓の外を見てみれば、ちょうど太陽が昇ってきているところだった。
 よし、しっかり起きれたな。
 今日からいよいよ、牧場の仕事が始まる。

「にゃ~」

 俺がベッドを出ようとすると、少し遅れてグレイも目を覚ました。
 そして早速、俺の頭にネコ型リーゼントを形成する。

「おはよう、グレイ」
「にゃ~」

 俺は顔を洗うと、着替えて家の外に出た。
 空気は少しひんやりしているが、寒くて震えるというような感じではない。
 適度に目を覚ましてくれる気持ちの良い朝だ。

「今日から牧場のお仕事だぞ~」
「にゃ~」
「グレイも手伝ってくれるのか?」
「……」
「おい」

 頭の上の気分屋な怠け者と、そんな会話を交わしながら歩く。
 行き先はもちろんぬいぐるみハウスだ。
 豊かな森の朝の空気を楽しみつつ、目的の場所に到着する。
 そこではもうすでに、リルとミルが待っていた。

「おはようございます!」
「ふぁ~。おは……よ……」

 元気いっぱいのミルと、頑張って早起きはしたものの半分寝ているリル。
 うん、今日もいつも通りだな。

「おはよう。手伝ってくれてありがとうな」
「はい!」
「ねむい……」
「動いてりゃ目も覚めるさ。さーてと」

 俺はドアを引き開けて、ぬいぐるみハウスの中に入った。
 基本的に鍵などはかけておらず、ぬいぐるみたちが自由に出入りできるようになっている。
 実際、何体かはもうすでに姿が見えなかった。
 朝の散歩にでも行ったのかもしれない。

「じゃあ今日の分担な。ミルはニワトリたちの卵を集めてくれ。終わったら、他のことも手伝ってもらうから教えて」
「はい!」

 元気よく答えて、ミルは早速ニワトリたちの元へ向かう。
 卵を集めるのは、ある意味で単純な作業だ。
 コツも何もないし、初めてでも十分に1人でできることだろう。
 ましてや働き者のミルなわけだし。

「じゃあ俺たちは、まずウシの乳しぼりから始めるぞ」
「ふぁい……」

 気の抜けた返事をして、リルは俺の後をついてくる。
 ウシはモー子に加えて、新たに3体を追加でテイムした。
 もちろん、全て乳牛だ。
 黒毛和牛なんてテイムしたって、肉は食べられないんだから意味ないしな。

「まずはここをこうして握って……」

 俺は牧場のおっちゃんが言っていたことを思い出しながら、リルの前で乳しぼりを実演する。
 これは少しのコツがいるけど、小学生が体験で出来るようなことだし、そんなに難しくもない。
 案の定、何だかんだで要領の良いリルはすぐにできるようになった。

「ふかふかしてて、なんかきもちいい……」
「なー。本当のウシとは、ちょっと違う感覚なんだよ」
「きもちよくて、ねそうになる……」
「仕事中だぞー」

 のんびりまったりした会話を交わしながら、じゃーじゃーウシの乳を搾っていく。
 何とも平和な朝だな。

「このぎゅうにゅう、またホットケーキにつかうの?」
「それもいいし、他にもたくさん使い道があるんだぞ」
「じっけん?」
「いやー、食用で頼む。牛乳からはいろいろ美味しいものが作れるから、それも一緒にやろうな」
「えー、めんどくさい」
「おい」
「ししょく、まかせて」
「おいおいおい」

 相変わらずのだらけっぷりだなこの子は。
 それでも何だかんだで、ちゃんと乳を搾っていってるんだけど。

「ふふっ。なんか、おもしろい」
「乳しぼり、楽しいか?」
「わるくない」
「素直に楽しいって言えよ。てかその前は言えてただろ」

 リルもそれなりに楽しんで働いてくれてるようだな。
 これからも手伝ってくれそうで何より。

「おわり~」

 最後のウシの乳を搾ると、リルは今にも寝そうな勢いで転がった。
 確かに床はふかふかだし、気持ちが良いけども。

「まだまだ仕事はあるぞ」
「えー」

 不満げに口を尖らせるリル、そして卵を回収し終えたミルと一緒に、俺は次の仕事へ取り掛かるのだった。
 レッツ、ヒツジの毛刈り体験。
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