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第26話 クリーンな動力とハイエルフの技術と突然の来訪者

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「失敗作って、この車は走らないのか?」

 俺が尋ねると、双子はそろって首を横に振る。
 そして神妙な面持ちで言った。

「ちゃんと、はしります。でも……」
「はしるほど、もりがよごれる」
「森が汚れる?」
「エリサはそういってた。たくさん、よくないけむりがでて、もりがしんじゃうって」

 良くない煙……排気ガスのことだろうか。
 それは当然、森の木々をはじめ環境に良くない。
 これは地球ですでに身を持って体験している。

「だから、エリサはこのくるまを、はしらせないことにした」
「このしっぱいをもとに、もっとよいものをつくるって、いってました。それでかんせいしたのが、“そらとぶのりもの”です」
「じゃあその“空飛ぶ乗り物”からは、良くない煙は出ないのか?」
「はい」

 まじかよ。
 環境を汚さないクリーンな動力を開発しただけじゃなく、それで空まで飛んじゃったのかよ。
 いくらなんでも、人間の夢を叶えすぎじゃないか?
 おそろしいな、ハイエルフ。

「本当にすごいな、そのエリサって」
「ふふ~ん。すごいでしょ~」
「ん?」

 今、得意気に言ったのは誰だ?
 リルじゃない。
 ミルでもない。
 もちろん、オクリギャップなわけがない。

「あ、あ、あ、あ……」
「え、え、え、え……」

 リルとミルがうわごとのように意味不明なことを呟く。
 そして少し震える指先で、俺のことを指差した。
 2人ともこれ以上ないほどびっくりした顔をしている。

「俺の顔に何かついてるのか?」
「う、うしろ……」
「後ろ……? ……うわ! びっくりした!」

 言われるがままに後ろを振り返ると、そこには、リルやミルと同じくらいの年齢の幼女が立っていた。
 耳が長く尖がっている。
 エルフだ。
 やや緑がかった白い髪が、光を浴びるときらきら輝いて、どこか神秘的な印象を抱かせる。
 いやでも、なんか変だな。
 どうにも実体感がないというか、生身じゃないような気がする。
 雰囲気に違和感があるのだ。

「エリサさん……」
「エリサ……。どうして……」
「は~い、2人とも久しぶり~」

 彼女が……エリサ。
 とんでもない技術を持つハイエルフでリルの師匠、見た目は幼女で実年齢1500歳超えのロリバ●ア。

「こら~、誰がロリバ●アだ~」
「んあっ!? 心を読まれてる!?」

 エリサは俺の心を見透かしたかのように言うと、いたずらっぽく笑った。
 別に怒ってはいないようだけど、それにしても心を読まれるのはドキリとする。

「いや~、きっとリルもミルも大きくなったんだろうね~。う~ん、会いたいな~」
「いやいや、目の前にいるだろ」
「あ~ごめんごめん。言ってなかったね。これ実は、あらかじめセットしておいた映像だから」
「いやいや、めちゃくちゃ会話かみ合ってるんだが?」
「そこはそれ。私はちょっとばかし、先のことが読めるからね~」
「それはほんとう。エリサ、みらいがみえる」
「そうだよ~。リル、証言ありがと~」

 嘘だろ嘘だろ嘘だろ嘘だろ。
 この会話があらかじめ設定されていた映像?
 試しに俺は、エリサに向かって手を伸ばしてみた。
 しかし俺の手は、彼女の体をすり抜けていく。
 まじで映像だ。
 ハイエルフ、次から次に予想の斜め上をくる。

「ふふふっ。今、私の体が本物かどうか確かめようとしたでしょ~?」
「もう怖いからやめてくれ……」

 いわゆるホログラムってやつに近い。
 でもここまでリアリティがあって、本当にわずかな違和感があるだけという精度は、そうそうあるもんじゃない。

「いや~、人間さん。あ、ごめんね。名前までは視えなかったんだ~。だから人間さんで失礼。この度は本当にありがと~」
「モンスターの件か?」
「うん、そうそう~。いや~ほんと、フィエンデルカンミラは質が悪いよね~。私、あれの研究してた時は結構なペースで血を吐いてたもん」

 まるで全て見ていたかのように話すエリサにも驚くし、さらっと恐ろしいことを言うエリサにも驚く。
 結構なペースで吐血って……研究者魂ってやつなのか?

「おかげさまで、村は守られた。だけどね……」

 エリサは少し間をおいて、真剣な表情で言った。

「まだこの物語は終わってないの」
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