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第22話 計画と放牧とわくわく
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「本格的に牧場計画を進めていこうか」
モンスター討伐が成功してから少し経ったある日。
俺がそう言うと、ミルは顔を輝かせて何度もぶんぶん頷いた。
彼女は今、あぐらをかいたコングの上に座って体を預けている。
ぬいぐるみたちが負った傷を、ミルが縫って直してあげたことで、すっかり彼女になついてしまったようだ。
もちろん、他のみんなからもかわいがられたり頼られたりしていて、ぬいぐるみたちはすっかり村に溶け込んでいる。
ライオンとエルフが同居する村なんて、そうそう見られないんじゃないだろうか。
「村長の許可も出たし、むしろ村のためになると言ってくれてる。基本的に俺が取り仕切るけど……2人にも、たくさん手伝ってもらうからな。リルとミルは牧場計画実行委員だ」
「じっこーいいんですね!」
「そうだ。まずは飼う動物を決めるんだけど……」
ウシとニワトリを増やすことは確定だ。
ウマも飼うけど、すでに10体いるから、これは新たに増やさなくていいだろう。
ウシにニワトリとくれば、ブタを飼いたくなるところだけど、お肉が取れないとなると生産性がかなり低い。
ブタだってめちゃくちゃかわいいのは承知だけど、今回の趣旨にはそぐわないんだよな。
正直、他にもっとぴったりな動物がいる。
「ヒツジ、それからヤギを飼おうと思うんだ」
これはどちらも、毛やミルクを取ることができる。
クマゴローはじめ猛獣たちの傷をミルが縫ってくれた後、はげてしまった毛まではどうしようもなかったのだが、時間と共にもふもふが復活していた。
だからヒツジの毛刈りも、十分に可能なはずだ。
「ぬいぐるみにかんしては、ケントさんがきめるのがいいとおもいます! ケントさんがいちばん、どんなどうぶつがいいか、わかってるとおもいますし!」
「よし。それで土地の問題なんだけど……」
「そこは、わたしからてーあん」
頭にプヨタローを乗せたリルが、ひとつ伸びをしてから話し始める。
「あたらしくとちをかいたくするの、とくさくじゃない。つかれるし、もくざいもつかいきれない。むだになる」
「それは俺も思っていた。放牧がベストかなと。クマゴローたちが見張ってくれれば、そうそう危険なことも起きないはずだしな。ぬいぐるみたちだから、どこか遠くや変なところに行ってしまう心配もない」
「うん。だからだいじなの、かんりたいせいのこうちく」
「管理体制の構築……。まあ、その通りなんだけど」
相変わらず、5歳児から出てくる言葉とは思えない。
ミルに至っては、おねーちゃんなにいってるのって顔してるぞ。
でもミルはそこがいいんだよ。
年相応なところがかわいい。
「ぼくじょーのぬいぐるみたちがつくるもの、むだなくかいしゅうしなきゃいけない。そのためのシステム、すごくだいじ」
「間違いないな。いくら向こうが協力的とはいえ、毎日牛乳を搾ったり、卵を回収したりしなきゃいけないわけだし」
「そう。でも、むらのみんな、いそがしい」
「んーでも、そこまで心配することないんじゃないか?」
だって明らかに暇そうな奴がひとりいるし。
俺も他に村の仕事は手伝うけど、朝の時間をぬいぐるみ牧場の世話に当てればいい。
そんでそれを……
「リルが手伝えばいい。2人いて、ぬいぐるみたちが協力してくれれば何とかなるだろ」
「むむっ。わたしを、はたらかせるき?」
「暇だろ?」
「じっけん、いそがしい」
「卵の殻とか、ヒツジの毛とか、実験に向いてると思うんだけどなー。手伝わないなら、あげられないなー」
「ぐぬぬ……。ケント、ひきょうもの」
「まあまあ。リルの研究も手伝ってやるからさ」
「ぬぬぅ……。しかたない」
決まりだな。
その様子を見ていたミルが、慌てて手を挙げる。
「あの! わたしもてつだいますから!」
「お、そうか。よく働いて偉いな。ありがとう」
「わーい。じゃあわたしは、はやおきしなくていい~」
「リルは強制な」
「なんでぇ!」
とりあえず必要なぬいぐるみたちをテイムして……。
牛乳やヤギのミルクなんかを加工して、いろんな乳製品が作れる。
そこに卵が合わされば、料理の幅はぐんと広がるな。
縫い物や編み物が得意なミルにしても、ウールとかカシミヤは最高の材料になるはずだ。
うん、楽しみになってきたぞ~。
モンスター討伐が成功してから少し経ったある日。
俺がそう言うと、ミルは顔を輝かせて何度もぶんぶん頷いた。
彼女は今、あぐらをかいたコングの上に座って体を預けている。
ぬいぐるみたちが負った傷を、ミルが縫って直してあげたことで、すっかり彼女になついてしまったようだ。
もちろん、他のみんなからもかわいがられたり頼られたりしていて、ぬいぐるみたちはすっかり村に溶け込んでいる。
ライオンとエルフが同居する村なんて、そうそう見られないんじゃないだろうか。
「村長の許可も出たし、むしろ村のためになると言ってくれてる。基本的に俺が取り仕切るけど……2人にも、たくさん手伝ってもらうからな。リルとミルは牧場計画実行委員だ」
「じっこーいいんですね!」
「そうだ。まずは飼う動物を決めるんだけど……」
ウシとニワトリを増やすことは確定だ。
ウマも飼うけど、すでに10体いるから、これは新たに増やさなくていいだろう。
ウシにニワトリとくれば、ブタを飼いたくなるところだけど、お肉が取れないとなると生産性がかなり低い。
ブタだってめちゃくちゃかわいいのは承知だけど、今回の趣旨にはそぐわないんだよな。
正直、他にもっとぴったりな動物がいる。
「ヒツジ、それからヤギを飼おうと思うんだ」
これはどちらも、毛やミルクを取ることができる。
クマゴローはじめ猛獣たちの傷をミルが縫ってくれた後、はげてしまった毛まではどうしようもなかったのだが、時間と共にもふもふが復活していた。
だからヒツジの毛刈りも、十分に可能なはずだ。
「ぬいぐるみにかんしては、ケントさんがきめるのがいいとおもいます! ケントさんがいちばん、どんなどうぶつがいいか、わかってるとおもいますし!」
「よし。それで土地の問題なんだけど……」
「そこは、わたしからてーあん」
頭にプヨタローを乗せたリルが、ひとつ伸びをしてから話し始める。
「あたらしくとちをかいたくするの、とくさくじゃない。つかれるし、もくざいもつかいきれない。むだになる」
「それは俺も思っていた。放牧がベストかなと。クマゴローたちが見張ってくれれば、そうそう危険なことも起きないはずだしな。ぬいぐるみたちだから、どこか遠くや変なところに行ってしまう心配もない」
「うん。だからだいじなの、かんりたいせいのこうちく」
「管理体制の構築……。まあ、その通りなんだけど」
相変わらず、5歳児から出てくる言葉とは思えない。
ミルに至っては、おねーちゃんなにいってるのって顔してるぞ。
でもミルはそこがいいんだよ。
年相応なところがかわいい。
「ぼくじょーのぬいぐるみたちがつくるもの、むだなくかいしゅうしなきゃいけない。そのためのシステム、すごくだいじ」
「間違いないな。いくら向こうが協力的とはいえ、毎日牛乳を搾ったり、卵を回収したりしなきゃいけないわけだし」
「そう。でも、むらのみんな、いそがしい」
「んーでも、そこまで心配することないんじゃないか?」
だって明らかに暇そうな奴がひとりいるし。
俺も他に村の仕事は手伝うけど、朝の時間をぬいぐるみ牧場の世話に当てればいい。
そんでそれを……
「リルが手伝えばいい。2人いて、ぬいぐるみたちが協力してくれれば何とかなるだろ」
「むむっ。わたしを、はたらかせるき?」
「暇だろ?」
「じっけん、いそがしい」
「卵の殻とか、ヒツジの毛とか、実験に向いてると思うんだけどなー。手伝わないなら、あげられないなー」
「ぐぬぬ……。ケント、ひきょうもの」
「まあまあ。リルの研究も手伝ってやるからさ」
「ぬぬぅ……。しかたない」
決まりだな。
その様子を見ていたミルが、慌てて手を挙げる。
「あの! わたしもてつだいますから!」
「お、そうか。よく働いて偉いな。ありがとう」
「わーい。じゃあわたしは、はやおきしなくていい~」
「リルは強制な」
「なんでぇ!」
とりあえず必要なぬいぐるみたちをテイムして……。
牛乳やヤギのミルクなんかを加工して、いろんな乳製品が作れる。
そこに卵が合わされば、料理の幅はぐんと広がるな。
縫い物や編み物が得意なミルにしても、ウールとかカシミヤは最高の材料になるはずだ。
うん、楽しみになってきたぞ~。
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