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第16話 イグルの報告
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「まずは基本的な情報からお伝えするっす」
そう言って、イグルは話を切り出した。
俺とエリンにモフリン、グロウ、小王たちは、真剣に彼の話に耳を傾ける。
「領主の名前はベルクルド・アンナウントっす。歳は55。先代の領主だった父親の後を引き継いで、領主の座に就いたみたいっす。いろいろ情報は集めたんすけど、まあ評判は良くないっすね。かなりの横暴者で、悪いことも相当やってるみたいっすよ」
「ああ、確かにベルクルドの評判は良くはねえよ」
グロウが深々と頷きながらそう言った。
一言でいえば、ベルクルドは“悪徳領主”といったところか。
「さらにこのベルクルドという男、かなり金に貪欲らしいっす。わいろなんてのは当たり前で、グロウの言っていた直轄の軍を使ってかなり黒いこともしてるみたいっすよ」
「その軍にミラの入隊が内定しているというのは本当か?」
「本当みたいっすね。そもそもミラというその少女ありきで、孤児院の運営は成り立っているみたいっす」
「詳しく聞かせてくれ」
「もちろんっす」
イグルはひとつ咳払いしてから、さらに話を続ける。
「ベルクルドは貪欲な男なので、利益の出ない事業には金を出したがらないんすよ。領内には3つの孤児院があるっすけど、そのうち2つは公的な支援が一切ない状態で運営されてるっす。でもひとつだけ、ベルクルドが資金援助をしている孤児院があるっす」
「それがティグリナのところということか」
「ご明察っす。裏を返せば、ティグリナの孤児院はベルクルドにとって利益になるというわけっすね」
ここまでくれば、ベルクルドとティグリナが結託して作り上げたからくりを読み解くのはそう難しくない。
ベルクルドはティグリナに資金援助をする代わりに、ミラを育成させる。
せっかくなのでテイマーを育成して売り飛ばす場所という機関にしてしまうことで、ミラが成長するまでの間も継続的に利益が得られる。
もちろん表向きはただの孤児院であり、そこにベルクルドが援助しているとなれば、多少は彼自身のイメージ改善も図れる。
そしてミラが才能を開花させた段階で、ベルクルドの配下に置けば、その高い能力ゆえに大きな利益をもたらすというわけだ。
「普通だったら摘発されてもおかしくない運営体制も、領主の息がかかった事業となれば他もそう簡単に手出しできないな」
「その通りっす。実際、孤児院の内情を知っているのは、ベルクルドとティグリナを除けばごく少数。2人に近しい人間か、グロウのようなごく限られた外部の人間っす。まあもし彼らが告発したところで、領主権限で握りつぶされるっすけどね。それこそ、軍が黒いお仕事をすることになるっす」
まったくあくどいことを考えるものだな。
その時間を別のことに割けば、もっとクリーンな方法で金が儲けられるだろうに。
「ということは、今回の件でベルクルドが動いてくる可能性はあるのかしら?」
「スネクの言う可能性は十分にあるっすよ。お金大好きコンビっすからね。エリンちゃんの才能が金になるって話を聞きつけば、何かしら一枚かんでくる可能性は高いっす。そこでなんすけど……」
イグルは少し間を置いて、やや低めの声で言った。
「上手く使えば、ベルクルドもまとめて潰せるかもしれない情報を掴んだっす。ベルクルドが潰れれば、孤児院は後ろ盾を失うっすよ」
「ふむ。聞こう」
「何とベルクルド、過去に実の息子を追放したことがあるんすよ」
イグルが部屋の出入り口になっている扉を指し示す。
全員の注目が集まるなかで、1人の男が姿を現した。
「はじめまして。わたくし、リエルと申します」
この男が、ベルクルドによって追放された息子……?
ふむ。なかなか面白いストーリーを描けそうだな。
そう言って、イグルは話を切り出した。
俺とエリンにモフリン、グロウ、小王たちは、真剣に彼の話に耳を傾ける。
「領主の名前はベルクルド・アンナウントっす。歳は55。先代の領主だった父親の後を引き継いで、領主の座に就いたみたいっす。いろいろ情報は集めたんすけど、まあ評判は良くないっすね。かなりの横暴者で、悪いことも相当やってるみたいっすよ」
「ああ、確かにベルクルドの評判は良くはねえよ」
グロウが深々と頷きながらそう言った。
一言でいえば、ベルクルドは“悪徳領主”といったところか。
「さらにこのベルクルドという男、かなり金に貪欲らしいっす。わいろなんてのは当たり前で、グロウの言っていた直轄の軍を使ってかなり黒いこともしてるみたいっすよ」
「その軍にミラの入隊が内定しているというのは本当か?」
「本当みたいっすね。そもそもミラというその少女ありきで、孤児院の運営は成り立っているみたいっす」
「詳しく聞かせてくれ」
「もちろんっす」
イグルはひとつ咳払いしてから、さらに話を続ける。
「ベルクルドは貪欲な男なので、利益の出ない事業には金を出したがらないんすよ。領内には3つの孤児院があるっすけど、そのうち2つは公的な支援が一切ない状態で運営されてるっす。でもひとつだけ、ベルクルドが資金援助をしている孤児院があるっす」
「それがティグリナのところということか」
「ご明察っす。裏を返せば、ティグリナの孤児院はベルクルドにとって利益になるというわけっすね」
ここまでくれば、ベルクルドとティグリナが結託して作り上げたからくりを読み解くのはそう難しくない。
ベルクルドはティグリナに資金援助をする代わりに、ミラを育成させる。
せっかくなのでテイマーを育成して売り飛ばす場所という機関にしてしまうことで、ミラが成長するまでの間も継続的に利益が得られる。
もちろん表向きはただの孤児院であり、そこにベルクルドが援助しているとなれば、多少は彼自身のイメージ改善も図れる。
そしてミラが才能を開花させた段階で、ベルクルドの配下に置けば、その高い能力ゆえに大きな利益をもたらすというわけだ。
「普通だったら摘発されてもおかしくない運営体制も、領主の息がかかった事業となれば他もそう簡単に手出しできないな」
「その通りっす。実際、孤児院の内情を知っているのは、ベルクルドとティグリナを除けばごく少数。2人に近しい人間か、グロウのようなごく限られた外部の人間っす。まあもし彼らが告発したところで、領主権限で握りつぶされるっすけどね。それこそ、軍が黒いお仕事をすることになるっす」
まったくあくどいことを考えるものだな。
その時間を別のことに割けば、もっとクリーンな方法で金が儲けられるだろうに。
「ということは、今回の件でベルクルドが動いてくる可能性はあるのかしら?」
「スネクの言う可能性は十分にあるっすよ。お金大好きコンビっすからね。エリンちゃんの才能が金になるって話を聞きつけば、何かしら一枚かんでくる可能性は高いっす。そこでなんすけど……」
イグルは少し間を置いて、やや低めの声で言った。
「上手く使えば、ベルクルドもまとめて潰せるかもしれない情報を掴んだっす。ベルクルドが潰れれば、孤児院は後ろ盾を失うっすよ」
「ふむ。聞こう」
「何とベルクルド、過去に実の息子を追放したことがあるんすよ」
イグルが部屋の出入り口になっている扉を指し示す。
全員の注目が集まるなかで、1人の男が姿を現した。
「はじめまして。わたくし、リエルと申します」
この男が、ベルクルドによって追放された息子……?
ふむ。なかなか面白いストーリーを描けそうだな。
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