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第13話 作戦会議
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グロウが軟禁されていた部屋を出て、朝食をとっていた場所に戻る。
新たに1人を加えた状態で、俺たちは再び食卓を囲んだ。
まだ食事を取れていなかったグロウ、そしてエリンはフルーツを食べながら。
その他のメンバーは食事を終わりにして、作戦会議を開催する。
それにしてもどんだけ食べるんだ、我が娘。
「グロウ、お前はミラのいる場所に簡単に出入りできるのか?」
「まあ、関わりはあるからな。ちゃんとした理由がありゃ、怪しまれることはねえはずだ」
「理由は作れるか?」
「問題ねえ」
「よし。じゃあティグリナにこう伝えろ。『森でエリンを見た。彼女は何やら不思議な生物をテイムして、森でのんびりと生き延びている。あんたが彼女を追い出したのは、間違いだったかもしれない』と。くれぐれも、竜などというワードは口にしないようにな」
「お、おう。それは気を付けるけどよ、ティグリナにそれを言ってどうすんだ? ミラちゃんを助け出すんじゃねえのか?」
意味が分からないようで、明らかに困惑しているグロウ。
小王たちも、いまいち俺の意図を掴みかねているようだ。
エリンはエリンで、フルーツを食べながら難しい顔をしている。
大切な“お姉ちゃん”に関わる話ということで、予言うんぬんの時よりはちゃんと聞いているみたいだ。
例にもれず、理解はできてないようだけど。
「ミラにエリンがこの森にいるといったところで、彼女がここへたどり着ける可能性は低い。孤児院を抜け出すことも難関だし、抜け出したとて追手が向けられるだろう。それなら、ティグリナにミラを連れてきてもらった方がいい」
「そう言えば、ティグリナはミラを連れてくるってのか?」
「ああ。まず間違いなく」
ティグリナからすれば、まさかエリンに才能があったとは予想外のはず。
でもただのテイムではなく、“不思議な生物”かつ“魔境で生き延びられる”という要素をプラスすることで、今までにケースのなかった才能であり見落としたのも仕方ないと思わせられる。
そして話を聞く限り強欲な彼女のことだ。
必ずや、エリンを連れ戻したいと思う。
でも今までにしてきた仕打ちを考えれば、エリンが素直にティグリナの言うことを聞くとは考えられない。
そこで鍵となるのがミラ。
エリンが慕っていた彼女を利用すれば、自分の元に引き戻せると考えるはずだ。
「分かった。あんたの言う通りにするよ。でも今ふと思ったんだが、あんたなら孤児院に忍び込んでさくっとミラちゃんひとり連れ出すくらいわけないんじゃねえのか?」
「まあな。でもそれでは、ティグリナに大ダメージは与えられても致命傷は与えられない。第二のミラ、エリンのような悲劇が、また繰り返される」
「まさかあんた、ミラちゃんを助け出そうってだけじゃなくて孤児院もぶっ潰そうってのかよ?」
「ああ。でもそのために、今度は彼らの協力が必要になる」
俺はグロウから、小王たちに視線を移した。
4体の顔が一気に引き締まり、指示を受ける姿勢になる。
何とも頼もしい奴らだ。
「調べてほしいことがある。領主とその直轄にあるという軍についてだ」
「ミラという少女の売却先として内定していると噂のところですね?」
「そうだ。どんな些細なことでもいいから、出来るだけ多くの情報が欲しい。誰かやってくれるか?」
「それなら、俺が行くっすよ」
手……というか翼を挙げたのは、イグルだった。
「高度をめちゃくちゃあげて飛べば、移動中も目立つことはないと思うっす。レオやスネクなんかが街に現れたら、大騒ぎで調査どころじゃないっすからね。俺が適任っす」
「貢献できず申し訳ありませんが、確かに私が街に行くわけには……」
「そうねぇ~。残念だけど、ここはイグルちゃんに任せるしかないと思いますわ」
「大丈夫だ。小王たちには、いずれ必ず仕事が来ると思ってくれていい。そしたらひとまず調査に関しては、イグルに任せた」
「任されましたっす」
俺が直接、街に出向いてもいいのだが、そうするとエリンをひとりにしてしまう。
彼女の以前の境遇と精神状態を考えるに、不特定多数の人間がいる場所へ連れ出すのはまだ避けたいからだ。
いくら小王たちがいれば安全とはいえ、いきなり父親である俺がエリンをひとりぼっちにするわけにはいかなかった。
「それじゃあ、第一段階としてグロウとイグルに動いてもらおう。それぞれ、進展があったら何かしらの方法で報告をくれ」
「ああ、分かった」
「分かりましたっす」
この第一段階次第で、この先の作戦の内容が少し変わってくる。
そもそも、万が一にもティグリナがグロウの話に食いついてこなければ、作戦は根底から崩れてしまうわけだ。
その点に関しては、グロウの背中に全てがかかっている。
グロウもそのことを理解したのか、自分の両頬を軽くぽんっと叩いて気合を入れた。
「頼んだぞ、みんな」
「みんな、ミラお姉ちゃんを助けてください!」
俺の言葉に続いて、エリンからも期待のこもった言葉が発せられる。
「エリンちゃんの頼みとあら、失敗するわけにゃいかねえな」
「王とプリンセスのご依頼……必ずや、成功させて見せるっす」
やる気に満ち溢れた表情で、グロウとイグルは早速この部屋を出て行くのだった。
新たに1人を加えた状態で、俺たちは再び食卓を囲んだ。
まだ食事を取れていなかったグロウ、そしてエリンはフルーツを食べながら。
その他のメンバーは食事を終わりにして、作戦会議を開催する。
それにしてもどんだけ食べるんだ、我が娘。
「グロウ、お前はミラのいる場所に簡単に出入りできるのか?」
「まあ、関わりはあるからな。ちゃんとした理由がありゃ、怪しまれることはねえはずだ」
「理由は作れるか?」
「問題ねえ」
「よし。じゃあティグリナにこう伝えろ。『森でエリンを見た。彼女は何やら不思議な生物をテイムして、森でのんびりと生き延びている。あんたが彼女を追い出したのは、間違いだったかもしれない』と。くれぐれも、竜などというワードは口にしないようにな」
「お、おう。それは気を付けるけどよ、ティグリナにそれを言ってどうすんだ? ミラちゃんを助け出すんじゃねえのか?」
意味が分からないようで、明らかに困惑しているグロウ。
小王たちも、いまいち俺の意図を掴みかねているようだ。
エリンはエリンで、フルーツを食べながら難しい顔をしている。
大切な“お姉ちゃん”に関わる話ということで、予言うんぬんの時よりはちゃんと聞いているみたいだ。
例にもれず、理解はできてないようだけど。
「ミラにエリンがこの森にいるといったところで、彼女がここへたどり着ける可能性は低い。孤児院を抜け出すことも難関だし、抜け出したとて追手が向けられるだろう。それなら、ティグリナにミラを連れてきてもらった方がいい」
「そう言えば、ティグリナはミラを連れてくるってのか?」
「ああ。まず間違いなく」
ティグリナからすれば、まさかエリンに才能があったとは予想外のはず。
でもただのテイムではなく、“不思議な生物”かつ“魔境で生き延びられる”という要素をプラスすることで、今までにケースのなかった才能であり見落としたのも仕方ないと思わせられる。
そして話を聞く限り強欲な彼女のことだ。
必ずや、エリンを連れ戻したいと思う。
でも今までにしてきた仕打ちを考えれば、エリンが素直にティグリナの言うことを聞くとは考えられない。
そこで鍵となるのがミラ。
エリンが慕っていた彼女を利用すれば、自分の元に引き戻せると考えるはずだ。
「分かった。あんたの言う通りにするよ。でも今ふと思ったんだが、あんたなら孤児院に忍び込んでさくっとミラちゃんひとり連れ出すくらいわけないんじゃねえのか?」
「まあな。でもそれでは、ティグリナに大ダメージは与えられても致命傷は与えられない。第二のミラ、エリンのような悲劇が、また繰り返される」
「まさかあんた、ミラちゃんを助け出そうってだけじゃなくて孤児院もぶっ潰そうってのかよ?」
「ああ。でもそのために、今度は彼らの協力が必要になる」
俺はグロウから、小王たちに視線を移した。
4体の顔が一気に引き締まり、指示を受ける姿勢になる。
何とも頼もしい奴らだ。
「調べてほしいことがある。領主とその直轄にあるという軍についてだ」
「ミラという少女の売却先として内定していると噂のところですね?」
「そうだ。どんな些細なことでもいいから、出来るだけ多くの情報が欲しい。誰かやってくれるか?」
「それなら、俺が行くっすよ」
手……というか翼を挙げたのは、イグルだった。
「高度をめちゃくちゃあげて飛べば、移動中も目立つことはないと思うっす。レオやスネクなんかが街に現れたら、大騒ぎで調査どころじゃないっすからね。俺が適任っす」
「貢献できず申し訳ありませんが、確かに私が街に行くわけには……」
「そうねぇ~。残念だけど、ここはイグルちゃんに任せるしかないと思いますわ」
「大丈夫だ。小王たちには、いずれ必ず仕事が来ると思ってくれていい。そしたらひとまず調査に関しては、イグルに任せた」
「任されましたっす」
俺が直接、街に出向いてもいいのだが、そうするとエリンをひとりにしてしまう。
彼女の以前の境遇と精神状態を考えるに、不特定多数の人間がいる場所へ連れ出すのはまだ避けたいからだ。
いくら小王たちがいれば安全とはいえ、いきなり父親である俺がエリンをひとりぼっちにするわけにはいかなかった。
「それじゃあ、第一段階としてグロウとイグルに動いてもらおう。それぞれ、進展があったら何かしらの方法で報告をくれ」
「ああ、分かった」
「分かりましたっす」
この第一段階次第で、この先の作戦の内容が少し変わってくる。
そもそも、万が一にもティグリナがグロウの話に食いついてこなければ、作戦は根底から崩れてしまうわけだ。
その点に関しては、グロウの背中に全てがかかっている。
グロウもそのことを理解したのか、自分の両頬を軽くぽんっと叩いて気合を入れた。
「頼んだぞ、みんな」
「みんな、ミラお姉ちゃんを助けてください!」
俺の言葉に続いて、エリンからも期待のこもった言葉が発せられる。
「エリンちゃんの頼みとあら、失敗するわけにゃいかねえな」
「王とプリンセスのご依頼……必ずや、成功させて見せるっす」
やる気に満ち溢れた表情で、グロウとイグルは早速この部屋を出て行くのだった。
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