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第一章 転生と『はじまりの都市』アフィリシティ
第6話 酒場
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「お疲れ」
「お疲れ様です」
時刻はちょうど午後6時。
決められた場所で、俺とエリスは無事に落ち合うことができた。
中央に噴水が据えられたこの広場も、やはり人でごった返している。
これから夕食の時間に向けて、より人の動きが活発になるのだろう。
「無事に冒険者協会から承認が得られました。これでいつでも出発できます」
「それは良かった。いつ出発する?」
「いきなりではありますけど、明日の朝はどうですか? 荷物もそろっていますし」
「分かった」
「決まりですね。じゃあ、夕食を食べに行きましょう」
エリスに連れられて、さっきとはまた別のレストランに入る。
高級感のある店というよりは、品がありながらも賑やかで活気のある酒場という感じだ。
すでに多くの客が入っていて、料理をつまみながら酒を飲み交わしている。
「ひとまずビールと……おつまみは適当に頼んでいいですか?」
「うん。任せる」
空いていた机に陣取り、エリンのセレクトで酒とつまみを注文する。
ほどなくして、カリカリに上げたポテトとソーセージの盛り合わせ、そして木製のジョッキに注がれたビールがやってきた。
これぞ定番という感じの組み合わせだな。
「それでは明日からの旅が良いものになることを願って」
「ああ」
俺たちは同時にジョッキに口をつけ、一気に傾ける。
喉をごくごくと鳴らして、ビールを流し込んでいくこの感覚。
たまらんですなぁ。
「ぷはぁ~」
エリスは豪快にジョッキを置くと、そう声を上げた。
昼はぶどうジュースで我慢していたけど、本当はお酒がめちゃくちゃ好きなのかもしれないな。
「食べましょう食べましょう」
「おう」
程よく塩気のきいたカリカリポテトと、太くてジューシーなソーセージ。
これがあれば、ビールが何杯もいけてしまう。
「行くのはまだまだ先のことになってしまいますけど、フリュンデルという国があるんです。そこは《美酒美食の国》って呼ばれてるんですよ」
「なんだその魅力的な名前は」
「楽しみですよね」
「それはもうすごく」
今日だけでも《宝石の国》に《和の国》、そして《美酒美食の国》があると分かった。
もちろんそれ以外にも国はたくさんあるわけで、これからの旅がますます楽しみになる。
「ちなみに最初はどこの国に行くんだ?」
「はひひょはほふへひほふひへふ」
「うん。食い終わってからでいいぞ」
エリスは美味そうにポテトをビールで流し込む。
そして改めて言った。
「最初は《宝石の国》エメラです」
「エリスがその宝石を買った場所だな」
「そうです。アフィリシティから大陸をまわるなら、一番近くにあるエメラが最初の目的地になりますね」
「目的は冒険者協会の視察なんだろ?」
「そうです。各支部の近況を聞き取ったり、本部からの伝達事項や届け物をしたりですね。そんなに大変な業務ではないので、のんびりやってきましょう」
どうやら本当に、遊び半分仕事半分の旅になりそうだ。
ちゃんと観光もして、美味しいもの食べて楽しむとしよう。
「ちなみにエメラには、何か絶景とか美味しい食事処みたいな名所があったりするのか?」
「ありますよ。『七彩光の洞窟』という場所があります」
「何かすごそうな名前だな。どんな場所なんだ?」
「ふふふ~」
エリスは笑顔を浮かべるだけで、答えようとしない。
目の前の残っていたビールを飲み干すと、どんな場所か教えてくれる代わりに言った。
「全部をネタバレしちゃったら、楽しみが減ると思いませんか? どんな場所かは、着いてからのお楽しみにしましょう」
「それもそっか。じゃあ、楽しみにしておく」
「ええ。きっと期待は裏切らないはずです。あーっと、ビール追加しますか? それとも他のお酒にします?」
メニューを見てみると、酒の種類も豊富にある。
きっと大陸のあちこちの名産品を、取り寄せて出しているのだろう。
「お昼飲めなかったぶどう酒にするか?」
「いいですね。じゃあ、おつまみもちょっと変えましょう」
注文して間もなく、やはり木のジョッキに入った赤ぶどう酒がやってくる。
合わせる料理はチーズの盛り合わせ。
さっきの豪快な組み合わせから、一気におしゃれな雰囲気へと変化した。
「それでは改めて、旅の成功を祈って」
「ああ」
俺はちびっとぶどう酒を口に含み、香りを楽しむ。
2人それぞれ、明日からの旅に向けて期待に胸を膨らませながら、アフィリシティの夜が更けていくのだった。
「お疲れ様です」
時刻はちょうど午後6時。
決められた場所で、俺とエリスは無事に落ち合うことができた。
中央に噴水が据えられたこの広場も、やはり人でごった返している。
これから夕食の時間に向けて、より人の動きが活発になるのだろう。
「無事に冒険者協会から承認が得られました。これでいつでも出発できます」
「それは良かった。いつ出発する?」
「いきなりではありますけど、明日の朝はどうですか? 荷物もそろっていますし」
「分かった」
「決まりですね。じゃあ、夕食を食べに行きましょう」
エリスに連れられて、さっきとはまた別のレストランに入る。
高級感のある店というよりは、品がありながらも賑やかで活気のある酒場という感じだ。
すでに多くの客が入っていて、料理をつまみながら酒を飲み交わしている。
「ひとまずビールと……おつまみは適当に頼んでいいですか?」
「うん。任せる」
空いていた机に陣取り、エリンのセレクトで酒とつまみを注文する。
ほどなくして、カリカリに上げたポテトとソーセージの盛り合わせ、そして木製のジョッキに注がれたビールがやってきた。
これぞ定番という感じの組み合わせだな。
「それでは明日からの旅が良いものになることを願って」
「ああ」
俺たちは同時にジョッキに口をつけ、一気に傾ける。
喉をごくごくと鳴らして、ビールを流し込んでいくこの感覚。
たまらんですなぁ。
「ぷはぁ~」
エリスは豪快にジョッキを置くと、そう声を上げた。
昼はぶどうジュースで我慢していたけど、本当はお酒がめちゃくちゃ好きなのかもしれないな。
「食べましょう食べましょう」
「おう」
程よく塩気のきいたカリカリポテトと、太くてジューシーなソーセージ。
これがあれば、ビールが何杯もいけてしまう。
「行くのはまだまだ先のことになってしまいますけど、フリュンデルという国があるんです。そこは《美酒美食の国》って呼ばれてるんですよ」
「なんだその魅力的な名前は」
「楽しみですよね」
「それはもうすごく」
今日だけでも《宝石の国》に《和の国》、そして《美酒美食の国》があると分かった。
もちろんそれ以外にも国はたくさんあるわけで、これからの旅がますます楽しみになる。
「ちなみに最初はどこの国に行くんだ?」
「はひひょはほふへひほふひへふ」
「うん。食い終わってからでいいぞ」
エリスは美味そうにポテトをビールで流し込む。
そして改めて言った。
「最初は《宝石の国》エメラです」
「エリスがその宝石を買った場所だな」
「そうです。アフィリシティから大陸をまわるなら、一番近くにあるエメラが最初の目的地になりますね」
「目的は冒険者協会の視察なんだろ?」
「そうです。各支部の近況を聞き取ったり、本部からの伝達事項や届け物をしたりですね。そんなに大変な業務ではないので、のんびりやってきましょう」
どうやら本当に、遊び半分仕事半分の旅になりそうだ。
ちゃんと観光もして、美味しいもの食べて楽しむとしよう。
「ちなみにエメラには、何か絶景とか美味しい食事処みたいな名所があったりするのか?」
「ありますよ。『七彩光の洞窟』という場所があります」
「何かすごそうな名前だな。どんな場所なんだ?」
「ふふふ~」
エリスは笑顔を浮かべるだけで、答えようとしない。
目の前の残っていたビールを飲み干すと、どんな場所か教えてくれる代わりに言った。
「全部をネタバレしちゃったら、楽しみが減ると思いませんか? どんな場所かは、着いてからのお楽しみにしましょう」
「それもそっか。じゃあ、楽しみにしておく」
「ええ。きっと期待は裏切らないはずです。あーっと、ビール追加しますか? それとも他のお酒にします?」
メニューを見てみると、酒の種類も豊富にある。
きっと大陸のあちこちの名産品を、取り寄せて出しているのだろう。
「お昼飲めなかったぶどう酒にするか?」
「いいですね。じゃあ、おつまみもちょっと変えましょう」
注文して間もなく、やはり木のジョッキに入った赤ぶどう酒がやってくる。
合わせる料理はチーズの盛り合わせ。
さっきの豪快な組み合わせから、一気におしゃれな雰囲気へと変化した。
「それでは改めて、旅の成功を祈って」
「ああ」
俺はちびっとぶどう酒を口に含み、香りを楽しむ。
2人それぞれ、明日からの旅に向けて期待に胸を膨らませながら、アフィリシティの夜が更けていくのだった。
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