34 / 37
第3章 海の主討伐編
冒険者エルバウ
しおりを挟む
アーケロンが現われてから2日目。
私が海獣退治に出かけようとすると、村に来客があった。
10人の馬に乗った男たちだ。
「村長はいるかー!?」
先頭を行く男が声を上げる。
全員が武器や鎧で装備を固めている。
この間見た騎士たちの身に着けていた甲冑とは違うから、彼らは冒険者だろう。
「何の用じゃ?」
出てきたミョン爺が問いかける。
するとリーダー格の男は、馬を降りて言った。
「近くの町の冒険者パーティー『風の剣』だ。俺はリーダーのエルバウ。この近くの海に海獣が出たと聞いたから、討伐しに来た。アーケロンがいるというのは本当か?」
「それは本当じゃ。そこの丘の先から見下ろせば、巨体が確認できるじゃろう」
もう情報が伝わっているんだ。
保存できるよう加工した魚は、村にある程度の備蓄がある。
それを売りに行った村人たちの会話を聞いて、アーケロンの存在を知った。
そんなところだろう。
「よし、行くぞ」
エルバウは馬の背に戻り、後ろの男たちに声を掛ける。
そして手綱を握ぎ、丘の先端へ向かった。
慌てて私も後を追う。
彼らが本気で馬を走らせなかったこともあり、AGIが高い私は余裕でついていくことができた。
「ずいぶんと足が速いな」
「そりゃどうも。それで、本当にアーケロンが倒せるの?」
「やってみなきゃ分からないだろ。だけど奴にかかっているのは4,000万G。挑戦してみる価値はある」
「言っとくけど、そんなに時間はかけられないんだよね。漁ができないのは死活問題だからさ」
「偉そうに言ってくれるが、お前らじゃ倒せないんだろ? 俺らが来てやったことに感謝してくれないとな」
「そういうセリフは、ちゃんと倒してからにしてくれる?」
走りながら、私とエルバウはにらみ合う。
若干イラっとしたけど、まあやれるって言うならやってみるといい。
でもそんな悠長に待てないのは事実だからね。
今日の『美音』は臨時休業、明日は定休日だけど、明後日からは営業日になる。
つまりそれまでに、決着をつけなきゃいけないわけだ。
「おおお……想像以上にでかいな」
丘の上に到着したエルバウ、そして男たちは、アーケロンを見て息を呑んだ。
誰だって、初めてあれを見たなら圧倒される。
それは間違いない。
「さてと、準備に入るか。おい、村人」
「私のこと? ミオンっていう名前があるんだけど」
「村人、ここから崖の下へ行く道はどこだ?」
だからミオンっていう名前があるっつーの。
いちいちイライラさせてくれるな。
「飛び降りたらいいんじゃない?」
イラっとした私、ついつい意地悪な返答をする。
するとエルバウの方もカチンと来たのか、青筋を浮かべて言った。
「真面目に答えろ。俺はお前たちを助けてやるって言ってるんだ」
「はいはい。案内しますよーだ」
私は冒険者たちを先導して歩き始める。
村を通り過ぎて下り坂を進み、Uターンして海岸へ出た。
アーケロンの甲羅は海面からはみ出していて、本当に島みたいだ。
そういえば、元の世界にそんな伝説があったな。
小島だと思って上陸したら、実は巨大なカメの背中で海に潜られて溺死しちゃうっていうやつ。
あれはアーケロンって名前じゃなかったと思うけど。
「あー、そういえば」
――アーケロンの下にはクラーケンがいるよ。
とても優しい私が教えてあげようと思ったのに、エルバウたちはさっさと準備に取り掛かってしまった。
人の話は聞くもんだよ?
「よーし。作戦通りに行くぞ」
エルバウの合図で、冒険者のうち2人が海に触れる。
「「【アイスロード】」」
たちまちパキパキと音を立てて海岸が凍り、2つの氷の道ができる。
それはアーケロンへと伸びていった。
「行くぞ!」
エルバウ、そしてもう1人の冒険者を先頭に、彼らは2手に分かれて氷の道を駆けていく。
「アーケロン覚悟ぉ!」
エルブウが走りながら剣を構えた。
その瞬間。
――ドガァァァン!!!!!!
海中から現れた腕が、氷の道を破壊する。
エルバウたちは前方を、そして背後を破壊され、氷の小島に孤立した。
「くくくくクラーケンだぁ!?」
「冗談じゃねえ!」
「海獣が2頭は聞いてねえぞ!?」
あーあ。
だから人の言うことは聞くもんだって言ったのに。
……実際には口に出して言ってないか。
「何をやってる! もう一度だ! 氷の道を作るんだ!」
エルバウが慌てて指示を出す。
しかし道ができるより一歩早く、海中から腕が突き上げてきた。
今度は道の破壊が目的じゃない。
冒険者たちへの直接的な攻撃だ。
「「「「「ぐああああああ!!!」」」」」
高々と上空へ跳ね飛ばされる冒険者たち。
はぁ……。
気に食わない奴らだけど、目の前で死なれたら目覚めが悪いしな。
仕方がないから助けてやるか。
「はぁ……」
私は改めてため息をつくと、海へと走り出した。
私が海獣退治に出かけようとすると、村に来客があった。
10人の馬に乗った男たちだ。
「村長はいるかー!?」
先頭を行く男が声を上げる。
全員が武器や鎧で装備を固めている。
この間見た騎士たちの身に着けていた甲冑とは違うから、彼らは冒険者だろう。
「何の用じゃ?」
出てきたミョン爺が問いかける。
するとリーダー格の男は、馬を降りて言った。
「近くの町の冒険者パーティー『風の剣』だ。俺はリーダーのエルバウ。この近くの海に海獣が出たと聞いたから、討伐しに来た。アーケロンがいるというのは本当か?」
「それは本当じゃ。そこの丘の先から見下ろせば、巨体が確認できるじゃろう」
もう情報が伝わっているんだ。
保存できるよう加工した魚は、村にある程度の備蓄がある。
それを売りに行った村人たちの会話を聞いて、アーケロンの存在を知った。
そんなところだろう。
「よし、行くぞ」
エルバウは馬の背に戻り、後ろの男たちに声を掛ける。
そして手綱を握ぎ、丘の先端へ向かった。
慌てて私も後を追う。
彼らが本気で馬を走らせなかったこともあり、AGIが高い私は余裕でついていくことができた。
「ずいぶんと足が速いな」
「そりゃどうも。それで、本当にアーケロンが倒せるの?」
「やってみなきゃ分からないだろ。だけど奴にかかっているのは4,000万G。挑戦してみる価値はある」
「言っとくけど、そんなに時間はかけられないんだよね。漁ができないのは死活問題だからさ」
「偉そうに言ってくれるが、お前らじゃ倒せないんだろ? 俺らが来てやったことに感謝してくれないとな」
「そういうセリフは、ちゃんと倒してからにしてくれる?」
走りながら、私とエルバウはにらみ合う。
若干イラっとしたけど、まあやれるって言うならやってみるといい。
でもそんな悠長に待てないのは事実だからね。
今日の『美音』は臨時休業、明日は定休日だけど、明後日からは営業日になる。
つまりそれまでに、決着をつけなきゃいけないわけだ。
「おおお……想像以上にでかいな」
丘の上に到着したエルバウ、そして男たちは、アーケロンを見て息を呑んだ。
誰だって、初めてあれを見たなら圧倒される。
それは間違いない。
「さてと、準備に入るか。おい、村人」
「私のこと? ミオンっていう名前があるんだけど」
「村人、ここから崖の下へ行く道はどこだ?」
だからミオンっていう名前があるっつーの。
いちいちイライラさせてくれるな。
「飛び降りたらいいんじゃない?」
イラっとした私、ついつい意地悪な返答をする。
するとエルバウの方もカチンと来たのか、青筋を浮かべて言った。
「真面目に答えろ。俺はお前たちを助けてやるって言ってるんだ」
「はいはい。案内しますよーだ」
私は冒険者たちを先導して歩き始める。
村を通り過ぎて下り坂を進み、Uターンして海岸へ出た。
アーケロンの甲羅は海面からはみ出していて、本当に島みたいだ。
そういえば、元の世界にそんな伝説があったな。
小島だと思って上陸したら、実は巨大なカメの背中で海に潜られて溺死しちゃうっていうやつ。
あれはアーケロンって名前じゃなかったと思うけど。
「あー、そういえば」
――アーケロンの下にはクラーケンがいるよ。
とても優しい私が教えてあげようと思ったのに、エルバウたちはさっさと準備に取り掛かってしまった。
人の話は聞くもんだよ?
「よーし。作戦通りに行くぞ」
エルバウの合図で、冒険者のうち2人が海に触れる。
「「【アイスロード】」」
たちまちパキパキと音を立てて海岸が凍り、2つの氷の道ができる。
それはアーケロンへと伸びていった。
「行くぞ!」
エルバウ、そしてもう1人の冒険者を先頭に、彼らは2手に分かれて氷の道を駆けていく。
「アーケロン覚悟ぉ!」
エルブウが走りながら剣を構えた。
その瞬間。
――ドガァァァン!!!!!!
海中から現れた腕が、氷の道を破壊する。
エルバウたちは前方を、そして背後を破壊され、氷の小島に孤立した。
「くくくくクラーケンだぁ!?」
「冗談じゃねえ!」
「海獣が2頭は聞いてねえぞ!?」
あーあ。
だから人の言うことは聞くもんだって言ったのに。
……実際には口に出して言ってないか。
「何をやってる! もう一度だ! 氷の道を作るんだ!」
エルバウが慌てて指示を出す。
しかし道ができるより一歩早く、海中から腕が突き上げてきた。
今度は道の破壊が目的じゃない。
冒険者たちへの直接的な攻撃だ。
「「「「「ぐああああああ!!!」」」」」
高々と上空へ跳ね飛ばされる冒険者たち。
はぁ……。
気に食わない奴らだけど、目の前で死なれたら目覚めが悪いしな。
仕方がないから助けてやるか。
「はぁ……」
私は改めてため息をつくと、海へと走り出した。
11
お気に入りに追加
2,354
あなたにおすすめの小説

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)
田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ?
コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。
(あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw)
台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。
読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。
(カクヨムにも投稿しております)

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい
うどん五段
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。
ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。
ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。
時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。
だから――。
「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」
異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ!
============
小説家になろうにも上げています。
一気に更新させて頂きました。
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。
大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。
ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。
主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。
マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。
しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。
主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。
これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる