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第2章 金の成る魚編
初日終了
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「カルパッチョ1つです!」
「フィッシュフライを2皿お願いします!」
「刺身盛り合わせを3人前です!」
「これは一体……どういうことですか……?」
大忙しの店内を見て、入ってきたピノは唖然とした。
とても開店初日とは思えない超満員の店内。
これも全て、ヘルムート王が宣伝してくれたおかげだ。
「ピノ! ちょうどいいところに! ちょっと相談したことがあるの!」
私はピノを厨房に連れ込むと、事のあらましを説明した。
「国王様が……? 本当にミオンさん、どんな運してるんですか?」
「私もびっくりだよ。でも問題があってね。このままだと、品切れを起こしちゃいそうなの」
店内が満員なだけでなく、店の外にも行列ができている。
ただ最初はお客さんが入らないだろうと思って、仕入れや仕込みの量を少なめに設定してしまったのだ。
このままでは、閉店を前にして材料が無くなってしまう。
「なるほど……。それは早急に手を打たないといけませんね。長い間並んだ末に食べられなかったら、好印象は持ってもらえませんから」
「どうしたらいい?」
私は必死に料理をしながら尋ねる。
隣ではニナも懸命に腕を振るっていた。
「こうしましょう。並んでくださっている方には、おわびを言って材料がないことを伝えます。そして割引券を配るんです。この店の価格設定なら、多少の割引はしても利益になりますよね?」
「うん。大丈夫だよ」
「それなら割引券を配って、また明日以降に来てもらえるようにしましょう。ここは私もお手伝いします!」
「ごめん助かる! そしたらピノは行列の処理をお願い!」
「任せてください」
ピノはグーサインと共に笑うと、厨房を飛び出して行った。
はぁ、頼もしい。惚れる。
キュンですわ。
「天ぷら追加です!」
「はーい!」
完全に予想外の嬉しい悲鳴だなぁ。
私は汗をタオルでふき取ると、全力で料理に取り組むのだった。
※ ※ ※ ※
「お疲れ様でしたー!」
最後のお客さんを送り出し、清掃まで終えた店内。
私が言うと、みんな一斉に倒れ込んだ。
予想以上の激務だったから、疲れていないという方がおかしい。
「疲れましたぁ……。でも楽しかったです!」
ニナが大きく伸びをしながら笑顔を浮かべる。
他のみんなも、充実した顔をしていた。
「明日はきっとさらに忙しいと思いますよ。ミオンさん、仕入れは大丈夫ですか?」
「交渉してみる。何とかするよ」
アイテムボックスの中なら腐らないんだから、極端な話をすれば1年分をまとめて仕入れてもいいわけだ。
でもそんなことをしたら大損をする可能性があるから、最初はとりあえず3日分を仕入れた。
ところがどっこい、それが全てはけてしまったのだ。
明日の朝一番に、各地の朝市をまわって材料を仕入れるしかない。
転移装置が無かったらとてもできない芸当だ。
クレシュさまさまだよ。
「取りあえず今日は帰って、ゆっくり休もう。また明日、みんなよろしくお願いします!」
「「「はーい!!」」」
私は転移装置を用意する。
気付いたのだが、みんなで転移するのに別にアイテムボックスに収納する必要はないみたいだ。
私が転移装置に触れたら、ニナたちは私に触れればいい。
服が一緒に転移するみたいに、触れたいるものは全部一緒に転移するようだ。
「【転移】」
あっという間に景色が変わり、漁村へと帰ってくる。
みんなが村へ入っていくなか、私はアイテムボックスから小さな紙を取り出した。
冷蔵庫の裏側に貼り付けてあったものだ。
書いたのはクレシュだと思うけど、忙しすぎて読んでいなかった。
――国王、いい奴だっただろ?
「……だから何で知ってるのさ」
本当に不思議な人だ。
軽く恐怖すら覚える。
私は再びメモをアイテムボックスにしまうと、自分の家へ帰るのだった。
「フィッシュフライを2皿お願いします!」
「刺身盛り合わせを3人前です!」
「これは一体……どういうことですか……?」
大忙しの店内を見て、入ってきたピノは唖然とした。
とても開店初日とは思えない超満員の店内。
これも全て、ヘルムート王が宣伝してくれたおかげだ。
「ピノ! ちょうどいいところに! ちょっと相談したことがあるの!」
私はピノを厨房に連れ込むと、事のあらましを説明した。
「国王様が……? 本当にミオンさん、どんな運してるんですか?」
「私もびっくりだよ。でも問題があってね。このままだと、品切れを起こしちゃいそうなの」
店内が満員なだけでなく、店の外にも行列ができている。
ただ最初はお客さんが入らないだろうと思って、仕入れや仕込みの量を少なめに設定してしまったのだ。
このままでは、閉店を前にして材料が無くなってしまう。
「なるほど……。それは早急に手を打たないといけませんね。長い間並んだ末に食べられなかったら、好印象は持ってもらえませんから」
「どうしたらいい?」
私は必死に料理をしながら尋ねる。
隣ではニナも懸命に腕を振るっていた。
「こうしましょう。並んでくださっている方には、おわびを言って材料がないことを伝えます。そして割引券を配るんです。この店の価格設定なら、多少の割引はしても利益になりますよね?」
「うん。大丈夫だよ」
「それなら割引券を配って、また明日以降に来てもらえるようにしましょう。ここは私もお手伝いします!」
「ごめん助かる! そしたらピノは行列の処理をお願い!」
「任せてください」
ピノはグーサインと共に笑うと、厨房を飛び出して行った。
はぁ、頼もしい。惚れる。
キュンですわ。
「天ぷら追加です!」
「はーい!」
完全に予想外の嬉しい悲鳴だなぁ。
私は汗をタオルでふき取ると、全力で料理に取り組むのだった。
※ ※ ※ ※
「お疲れ様でしたー!」
最後のお客さんを送り出し、清掃まで終えた店内。
私が言うと、みんな一斉に倒れ込んだ。
予想以上の激務だったから、疲れていないという方がおかしい。
「疲れましたぁ……。でも楽しかったです!」
ニナが大きく伸びをしながら笑顔を浮かべる。
他のみんなも、充実した顔をしていた。
「明日はきっとさらに忙しいと思いますよ。ミオンさん、仕入れは大丈夫ですか?」
「交渉してみる。何とかするよ」
アイテムボックスの中なら腐らないんだから、極端な話をすれば1年分をまとめて仕入れてもいいわけだ。
でもそんなことをしたら大損をする可能性があるから、最初はとりあえず3日分を仕入れた。
ところがどっこい、それが全てはけてしまったのだ。
明日の朝一番に、各地の朝市をまわって材料を仕入れるしかない。
転移装置が無かったらとてもできない芸当だ。
クレシュさまさまだよ。
「取りあえず今日は帰って、ゆっくり休もう。また明日、みんなよろしくお願いします!」
「「「はーい!!」」」
私は転移装置を用意する。
気付いたのだが、みんなで転移するのに別にアイテムボックスに収納する必要はないみたいだ。
私が転移装置に触れたら、ニナたちは私に触れればいい。
服が一緒に転移するみたいに、触れたいるものは全部一緒に転移するようだ。
「【転移】」
あっという間に景色が変わり、漁村へと帰ってくる。
みんなが村へ入っていくなか、私はアイテムボックスから小さな紙を取り出した。
冷蔵庫の裏側に貼り付けてあったものだ。
書いたのはクレシュだと思うけど、忙しすぎて読んでいなかった。
――国王、いい奴だっただろ?
「……だから何で知ってるのさ」
本当に不思議な人だ。
軽く恐怖すら覚える。
私は再びメモをアイテムボックスにしまうと、自分の家へ帰るのだった。
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