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第2章 金の成る魚編
開店
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「それじゃあみんな」
海鮮料理店「美音」オープン当日。
ニナ、フェンリア母娘をはじめとする店員みんなの前で、私は店長っぽくあいさつをする。
「今日から開店です。私自身、初めての体験だけど精一杯頑張るので、慣れないことも多いと思いますがご協力お願いします!」
みんなからパチパチと拍手が起こった。
開店は今日のお昼。
そこからは、不自然にならない程度にSOS団のメンバーが来ることになっている。
「張り切って準備を始めよう! 事前に指示しておいた通りで!」
「「「了解です!」」」
店員たちが一斉に動き始める。
お客さんをお迎えするフロアの最終チェックや、軽い清掃をする人。
下ごしらえが必要な料理の仕込みをする人。
開店前ギリギリまでチラシを配る人などなど。
私はニナと一緒に料理の準備だ。
母親の代わりに家事をやっていただけあって、ニナの包丁さばきは見事なもの。
それに吸収力もすさまじく、私が考えたメニューのうち何品かは自分1人で作れるようになっている。
「ミオンさん、この処理が終わった魚は冷蔵庫ですよね?」
「そう! これもしまっておいてもらえる?」
「分かりました!」
本当に冷蔵庫が手に入って良かったなぁ。
それにしても、ニナがきびきびはきはき働いてくれるから、店の雰囲気がすごく良くなる。
「美音」の看板娘は早くも決定だね。
「お邪魔しまーす」
開店まで残りわずかとなったところで、ピノがやってきた。
店内を見渡して感慨深げに呟く。
「いよいよですね……」
「そうだね。わくわくしてきたよ」
「頑張ってくださいね。また後ほど、食べに来ますから」
「はーい。待ってるよ」
どこかに行く途中だったらしく、ピノはすぐに出て行く。
そしていよいよ、王都で唯一の海鮮料理店「美音」オープン時間になった。
「それでは!」
私は店員みんなと手を重ね合わせる。
「楽しく頑張ろう! エイエイオー!」
「「「オー!」」」
「いざ開店!」
私は看板を裏返して「OPEN」にすると、通りに向かって声を張り上げた。
「海鮮料理店『美音』! ただいまよりオープンです! ぜひご来店くださーい!」
通行人たちが、一斉にこちらを見る。
興味ありそうな顔をする人もいたけど、みんな歩いて行ってしまった。
そう簡単には行かないよね。
でも作戦があるんだから焦らない焦らない。
10分くらいすると、ドアに取り付けたベルがカランカランと音を立てた。
お客さんが入ってきた証だ。
「「「いらっしゃいませー!」」」
みんなで元気よく迎える。
でも入ってきたのはSOS団のメンバーだ。サクラだ。ネロとティガスだ。
早速フェンリアがテーブルに案内し、お水を出す。
それを飲み干すと、2人はそれぞれ注文した。
「俺はビールと天ぷらを頼む」
「俺もビール。それからフィッシュフライと……愛娘の笑顔かな」
「はいはい。ご注文ご確認します。ビールがお2つ、フィッシュフライと天ぷらがお1つずつですね」
私が教えたとおりの接客。
親バカな父をあしらえるあの感じなら、酔っぱらいへの対応もできちゃいそうだ。
教育上よろしくないから、そういう時は私やフェンリアが対応しようと話しているけど。
「ビールが2つ、フィッシュフライと天ぷらが1つずつです!」
「了解!」
サクラとはいえ、初めてのお客様だ。
まずはビールが運ばれていき、その間に私は天ぷら、ニナはフィッシュフライに取り掛かる。
パチパチと油のはじける音が厨房に響いた。
「フィッシュフライ揚がりました!」
「こっちもできたよ~」
フィッシュフライにはソースを、天ぷらには塩をつけて盛り付ける。
2つまとめてトレーに載せると、ニナに任せた。
「よろしくね」
「はい!」
店として初めての料理が、お客さんの元へと運ばれていく。
それと同時に、再びカランコロンとベルが鳴った。
まだ次のサクラが来るには早い。
ということは……正真正銘のお客さんだ……!
「いらっしゃいませー!」
厨房を出て、お客さんを出迎える。
やってきたのは、黒いフード付きのローブに身を包んだ老夫婦だった。
お客さんは嬉しいんだけど……怪しすぎるでしょ!
「い、いらっしゃいませ」
私は顔が引きつらないように注意しながら、老夫婦をテーブルに案内する。
お水を出して、メニューを手渡した。
2人してぱらぱらとメニューをめくったあと、旦那さんの方が尋ねる。
「この店のイチオシは何じゃ?」
「どれも美味しくてオススメですが……当店は生の魚を提供しています。こちらの刺身盛り合わせや昆布締めなどがイチオシですよ」
「ほう、生の魚……。ではその2つをもらうかの」
「刺身盛り合わせと昆布締めですね。こちら何人前に致しましょう?」
「食べるじゃろ?」
「もちろんですわ」
奥さんの返答を確認して、旦那さんは人差し指と中指を立てた。
「2人前じゃ」
「かしこまりました」
「それから私、この赤身のステーキが食べたいですわ」
「かしこまりました。こちらは何人前にしましょう?」
「同じく2人前で頼む」
「かしこまりました。ではお待ちください」
注文を取り終えて、私は厨房に戻る。
身なりは怪しかったけれど、何だか上品な雰囲気の漂う夫婦だったなぁ。
「ニナ、赤身のステーキをお願い。フェンリアは昆布締めを出しておいてくれる?」
「はい!」
「分かりました~」
2人に指示を出して、私は刺身盛り合わせに取り掛かる。
するとまたしてもベルが鳴った。
まだまだサクラは来ないはず。
あれ? これってひょっとして、SOS団作戦いらなかったやつかな……?
海鮮料理店「美音」オープン当日。
ニナ、フェンリア母娘をはじめとする店員みんなの前で、私は店長っぽくあいさつをする。
「今日から開店です。私自身、初めての体験だけど精一杯頑張るので、慣れないことも多いと思いますがご協力お願いします!」
みんなからパチパチと拍手が起こった。
開店は今日のお昼。
そこからは、不自然にならない程度にSOS団のメンバーが来ることになっている。
「張り切って準備を始めよう! 事前に指示しておいた通りで!」
「「「了解です!」」」
店員たちが一斉に動き始める。
お客さんをお迎えするフロアの最終チェックや、軽い清掃をする人。
下ごしらえが必要な料理の仕込みをする人。
開店前ギリギリまでチラシを配る人などなど。
私はニナと一緒に料理の準備だ。
母親の代わりに家事をやっていただけあって、ニナの包丁さばきは見事なもの。
それに吸収力もすさまじく、私が考えたメニューのうち何品かは自分1人で作れるようになっている。
「ミオンさん、この処理が終わった魚は冷蔵庫ですよね?」
「そう! これもしまっておいてもらえる?」
「分かりました!」
本当に冷蔵庫が手に入って良かったなぁ。
それにしても、ニナがきびきびはきはき働いてくれるから、店の雰囲気がすごく良くなる。
「美音」の看板娘は早くも決定だね。
「お邪魔しまーす」
開店まで残りわずかとなったところで、ピノがやってきた。
店内を見渡して感慨深げに呟く。
「いよいよですね……」
「そうだね。わくわくしてきたよ」
「頑張ってくださいね。また後ほど、食べに来ますから」
「はーい。待ってるよ」
どこかに行く途中だったらしく、ピノはすぐに出て行く。
そしていよいよ、王都で唯一の海鮮料理店「美音」オープン時間になった。
「それでは!」
私は店員みんなと手を重ね合わせる。
「楽しく頑張ろう! エイエイオー!」
「「「オー!」」」
「いざ開店!」
私は看板を裏返して「OPEN」にすると、通りに向かって声を張り上げた。
「海鮮料理店『美音』! ただいまよりオープンです! ぜひご来店くださーい!」
通行人たちが、一斉にこちらを見る。
興味ありそうな顔をする人もいたけど、みんな歩いて行ってしまった。
そう簡単には行かないよね。
でも作戦があるんだから焦らない焦らない。
10分くらいすると、ドアに取り付けたベルがカランカランと音を立てた。
お客さんが入ってきた証だ。
「「「いらっしゃいませー!」」」
みんなで元気よく迎える。
でも入ってきたのはSOS団のメンバーだ。サクラだ。ネロとティガスだ。
早速フェンリアがテーブルに案内し、お水を出す。
それを飲み干すと、2人はそれぞれ注文した。
「俺はビールと天ぷらを頼む」
「俺もビール。それからフィッシュフライと……愛娘の笑顔かな」
「はいはい。ご注文ご確認します。ビールがお2つ、フィッシュフライと天ぷらがお1つずつですね」
私が教えたとおりの接客。
親バカな父をあしらえるあの感じなら、酔っぱらいへの対応もできちゃいそうだ。
教育上よろしくないから、そういう時は私やフェンリアが対応しようと話しているけど。
「ビールが2つ、フィッシュフライと天ぷらが1つずつです!」
「了解!」
サクラとはいえ、初めてのお客様だ。
まずはビールが運ばれていき、その間に私は天ぷら、ニナはフィッシュフライに取り掛かる。
パチパチと油のはじける音が厨房に響いた。
「フィッシュフライ揚がりました!」
「こっちもできたよ~」
フィッシュフライにはソースを、天ぷらには塩をつけて盛り付ける。
2つまとめてトレーに載せると、ニナに任せた。
「よろしくね」
「はい!」
店として初めての料理が、お客さんの元へと運ばれていく。
それと同時に、再びカランコロンとベルが鳴った。
まだ次のサクラが来るには早い。
ということは……正真正銘のお客さんだ……!
「いらっしゃいませー!」
厨房を出て、お客さんを出迎える。
やってきたのは、黒いフード付きのローブに身を包んだ老夫婦だった。
お客さんは嬉しいんだけど……怪しすぎるでしょ!
「い、いらっしゃいませ」
私は顔が引きつらないように注意しながら、老夫婦をテーブルに案内する。
お水を出して、メニューを手渡した。
2人してぱらぱらとメニューをめくったあと、旦那さんの方が尋ねる。
「この店のイチオシは何じゃ?」
「どれも美味しくてオススメですが……当店は生の魚を提供しています。こちらの刺身盛り合わせや昆布締めなどがイチオシですよ」
「ほう、生の魚……。ではその2つをもらうかの」
「刺身盛り合わせと昆布締めですね。こちら何人前に致しましょう?」
「食べるじゃろ?」
「もちろんですわ」
奥さんの返答を確認して、旦那さんは人差し指と中指を立てた。
「2人前じゃ」
「かしこまりました」
「それから私、この赤身のステーキが食べたいですわ」
「かしこまりました。こちらは何人前にしましょう?」
「同じく2人前で頼む」
「かしこまりました。ではお待ちください」
注文を取り終えて、私は厨房に戻る。
身なりは怪しかったけれど、何だか上品な雰囲気の漂う夫婦だったなぁ。
「ニナ、赤身のステーキをお願い。フェンリアは昆布締めを出しておいてくれる?」
「はい!」
「分かりました~」
2人に指示を出して、私は刺身盛り合わせに取り掛かる。
するとまたしてもベルが鳴った。
まだまだサクラは来ないはず。
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