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第2章 金の成る魚編
メニュー試食会
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開店に向けてあれこれ準備が進んでいくなかで、私はある日、村のみんなを集めた。
オープンする店で提供する予定の料理を、実際に試食してもらうのだ。
みんな、刺身がよっぽど気に入ったのか、他のメニューも楽しみにしてくれている。
転移装置で行ける場所をあちこち飛び回って、必要な材料を集めてきたからね。
料理人の私にも気合が入る。
自分でいうのも何だけど、私って料理のセンスがあるみたいで、たいていのものはイメージ通りに作れてしまった。
すっごい自画自賛になっちゃってるけど。
「はーい。まずは1品目」
私は村のみんなへ料理を乗せた皿を運ぶ。
1人では手が回らないので、ニナも手伝ってくれていた。
実際に店がオープンしたら、ニナはウェイトレスとして手伝ってくれることになっている。
面白そうだから、店で働いてみたいんだそうだ。
本当に働くのが好きなんだよねぇ。
1品目は、マグロに近い赤身の魚のステーキだ。
表面は火が通っているけど、中はレアになっている。
このレア加減は、新鮮な魚でなければ表現できない。
刺身と同じように、王都という海から離れた場所で売りに出来るメニューだ。
「ステーキだよ。さあ召し上がれ」
丁寧に切り分けたり、かぶりついたり、みんなそれぞれの方法でステーキを試食する。
そして一様に言った。
「「「「「美味しい!」」」」」
「良かったぁ~」
赤身のステーキは採用っと。
ミョン爺が感心しながら、ばくばく食べている。
「美味いのう……。中は生に見えるが、ちゃんと火はとおっておるから温かい。旨味がぐっと増しておるが、刺身の良さも残っておる。これは売れること間違いなしじゃ」
「ありがとう。そう言ってもらえると自信がつくよ」
さてさて、どんどん行こう。
続いての料理を運ぶと、ミョン爺や隣に座るティガスは不思議そうな顔をした。
「これは……刺身じゃないのか?」
ティガスの質問に、私は引っかかってくれたねと笑う。
私が運んだのは、確かに見た目には白身魚の刺身。
日本人なら、結構な数の人が「なるほどな」となるだろうけど、異世界人になじみがないのは当然だ。
「まずは食べてみてよ」
不思議そうな顔のまま、みんなが料理を口に運ぶ。
すると表情が驚きに変わった。
「これは……ただの刺身じゃない!?」
まんまと騙されてくれたので、私はニヤリと笑った。
ミョン爺が、これまたバクバク食べながら食レポをしてくれる。
「火は通っていない。生の状態じゃ。でも刺身よりねっとりした食感で、風味も違う。魚の旨味はもちろんじゃが、また別の旨味があるのう。これは……海藻じゃな?」
「ご名答。さすがミョン爺だね」
いわゆる昆布締めってやつだ。
タイやヒラメなんかの白身魚を、酒で湿らせた昆布に包んで置いておく。
日本酒はさすがに手に入らなかったので、仕方なく水で代用したけど、これもなかなかの美味しさだ。
前日に仕込んでおけば、注文されてすぐに出せるというのも店側からしたらありがたい。
「これも合格かな?」
「もちろんじゃ」
「よしっ」
私は軽くガッツポーズを決める。
順調順調。
この調子で3品目もいってみよう。
ニナに手伝ってもらって、新たな料理をみんなに運ぶ。
今度は一転して、きっちり火を通した料理だ。
最初に刺身で食べた味がアジに近い魚。
これをカラッと揚げてフライにした。
今日はもうみんな仕事終わりということで、大人たちにはビールも出す。
「揚げ物じゃな」
「うん。ミョン爺、油とかきつい?」
「何を言うか。肉や揚げ物は大好物じゃ」
さすがの健啖家だ。
運ばれてきたビールを一気に飲み干すと、ニナにお代わりを頼んでいる。
料理と一緒に楽しめよ……。料理と一緒に。
「これは何ですか?」
フェンリアが、フライと一緒に運ばれた茶色っぽい粘度の高い液体を指さす。
これもまた、異世界では見慣れないものだろう。
「中濃ソースって言うんだよ。フライにかけて食べてみて。味が濃いから、あんまりかけ過ぎないように」
何でかは知らないけど、私は中濃ソースの作り方を知っていた。
野菜やスパイスはこの世界でも手に入る。
ワインやお酢も手に入る。
配合を試行錯誤して作り上げたのが、この自慢の中濃ソースだ。
「美味い! 美味いぞ!」
ソースをかけてかぶりついたミョン爺が、ビールを飲んで大きな声を上げた。
元気なお爺さんだよ、本当に。
「これは素晴らしい取り合わせじゃな! フライ、ソース、そしてビール。どれも最高にマッチする。これは大人気になるぞ」
「それは良かった。じゃあこれも合格だね」
「当然じゃな」
「ちょっと提案なんだが」
3品目の合格を勝ち取ったところで、ネロが手を挙げた。
……何か某バラエティ番組みたいなになってるな。
私は大手飲食チェーンの開発担当じゃないし、村のみんなも一流料理人じゃないんだけど。
「このソース、めちゃくちゃ美味しい。単体でも売れると思うんだ。お持ち帰りとかで売ってみるのはどうだ?」
「なるほど……。それは考えたことなかった。でもありかもね。検討してみるよ」
新しく商売の幅が広がったところで、いきましょう4品目。
ちょっとヘビーだけど、次も揚げ物だ。
それも日本人なら泣いて喜ぶ揚げ物。
天ぷらだ。
魚や貝、そして野菜も天ぷらにした天盛り。
醤油がないので天つゆは作れなかったけど、お塩や魚から取ったお出汁で食べてもらう。
小麦粉と卵、それに揚げる材料と油があれば和を再現できるんだから、これまた偉大な料理だ。
「おほっ……これはっ……」
ミョン爺が恍惚の表情を浮かべる。
これも気に入ってもらえたみたいだ。
「見事じゃの。サクッとした衣と、中の魚のふわふわほくほくとした食感……。だがどこか、親しみを感じる部分もある……」
「それは衣にビールが入ってるからじゃないかな?」
「何と! なるほどこのわずかに感じる風味はビールじゃったか!」
ビールを入れることで衣がふわっとする効果がある。
それにミョン爺が「親しみを感じる」といった通り、異世界人の味覚により寄せることもできる。
ビール作戦、大成功みたいだ。
みんなに食べてもらって美味しいと言ってもらえると、嬉しいし自信もつく。
この調子で開店まで頑張るぞー。
「じゃあ次のメニュー行くよー!」
私は元気よく叫ぶと、ニナと一緒に5品目を運ぶのだった。
オープンする店で提供する予定の料理を、実際に試食してもらうのだ。
みんな、刺身がよっぽど気に入ったのか、他のメニューも楽しみにしてくれている。
転移装置で行ける場所をあちこち飛び回って、必要な材料を集めてきたからね。
料理人の私にも気合が入る。
自分でいうのも何だけど、私って料理のセンスがあるみたいで、たいていのものはイメージ通りに作れてしまった。
すっごい自画自賛になっちゃってるけど。
「はーい。まずは1品目」
私は村のみんなへ料理を乗せた皿を運ぶ。
1人では手が回らないので、ニナも手伝ってくれていた。
実際に店がオープンしたら、ニナはウェイトレスとして手伝ってくれることになっている。
面白そうだから、店で働いてみたいんだそうだ。
本当に働くのが好きなんだよねぇ。
1品目は、マグロに近い赤身の魚のステーキだ。
表面は火が通っているけど、中はレアになっている。
このレア加減は、新鮮な魚でなければ表現できない。
刺身と同じように、王都という海から離れた場所で売りに出来るメニューだ。
「ステーキだよ。さあ召し上がれ」
丁寧に切り分けたり、かぶりついたり、みんなそれぞれの方法でステーキを試食する。
そして一様に言った。
「「「「「美味しい!」」」」」
「良かったぁ~」
赤身のステーキは採用っと。
ミョン爺が感心しながら、ばくばく食べている。
「美味いのう……。中は生に見えるが、ちゃんと火はとおっておるから温かい。旨味がぐっと増しておるが、刺身の良さも残っておる。これは売れること間違いなしじゃ」
「ありがとう。そう言ってもらえると自信がつくよ」
さてさて、どんどん行こう。
続いての料理を運ぶと、ミョン爺や隣に座るティガスは不思議そうな顔をした。
「これは……刺身じゃないのか?」
ティガスの質問に、私は引っかかってくれたねと笑う。
私が運んだのは、確かに見た目には白身魚の刺身。
日本人なら、結構な数の人が「なるほどな」となるだろうけど、異世界人になじみがないのは当然だ。
「まずは食べてみてよ」
不思議そうな顔のまま、みんなが料理を口に運ぶ。
すると表情が驚きに変わった。
「これは……ただの刺身じゃない!?」
まんまと騙されてくれたので、私はニヤリと笑った。
ミョン爺が、これまたバクバク食べながら食レポをしてくれる。
「火は通っていない。生の状態じゃ。でも刺身よりねっとりした食感で、風味も違う。魚の旨味はもちろんじゃが、また別の旨味があるのう。これは……海藻じゃな?」
「ご名答。さすがミョン爺だね」
いわゆる昆布締めってやつだ。
タイやヒラメなんかの白身魚を、酒で湿らせた昆布に包んで置いておく。
日本酒はさすがに手に入らなかったので、仕方なく水で代用したけど、これもなかなかの美味しさだ。
前日に仕込んでおけば、注文されてすぐに出せるというのも店側からしたらありがたい。
「これも合格かな?」
「もちろんじゃ」
「よしっ」
私は軽くガッツポーズを決める。
順調順調。
この調子で3品目もいってみよう。
ニナに手伝ってもらって、新たな料理をみんなに運ぶ。
今度は一転して、きっちり火を通した料理だ。
最初に刺身で食べた味がアジに近い魚。
これをカラッと揚げてフライにした。
今日はもうみんな仕事終わりということで、大人たちにはビールも出す。
「揚げ物じゃな」
「うん。ミョン爺、油とかきつい?」
「何を言うか。肉や揚げ物は大好物じゃ」
さすがの健啖家だ。
運ばれてきたビールを一気に飲み干すと、ニナにお代わりを頼んでいる。
料理と一緒に楽しめよ……。料理と一緒に。
「これは何ですか?」
フェンリアが、フライと一緒に運ばれた茶色っぽい粘度の高い液体を指さす。
これもまた、異世界では見慣れないものだろう。
「中濃ソースって言うんだよ。フライにかけて食べてみて。味が濃いから、あんまりかけ過ぎないように」
何でかは知らないけど、私は中濃ソースの作り方を知っていた。
野菜やスパイスはこの世界でも手に入る。
ワインやお酢も手に入る。
配合を試行錯誤して作り上げたのが、この自慢の中濃ソースだ。
「美味い! 美味いぞ!」
ソースをかけてかぶりついたミョン爺が、ビールを飲んで大きな声を上げた。
元気なお爺さんだよ、本当に。
「これは素晴らしい取り合わせじゃな! フライ、ソース、そしてビール。どれも最高にマッチする。これは大人気になるぞ」
「それは良かった。じゃあこれも合格だね」
「当然じゃな」
「ちょっと提案なんだが」
3品目の合格を勝ち取ったところで、ネロが手を挙げた。
……何か某バラエティ番組みたいなになってるな。
私は大手飲食チェーンの開発担当じゃないし、村のみんなも一流料理人じゃないんだけど。
「このソース、めちゃくちゃ美味しい。単体でも売れると思うんだ。お持ち帰りとかで売ってみるのはどうだ?」
「なるほど……。それは考えたことなかった。でもありかもね。検討してみるよ」
新しく商売の幅が広がったところで、いきましょう4品目。
ちょっとヘビーだけど、次も揚げ物だ。
それも日本人なら泣いて喜ぶ揚げ物。
天ぷらだ。
魚や貝、そして野菜も天ぷらにした天盛り。
醤油がないので天つゆは作れなかったけど、お塩や魚から取ったお出汁で食べてもらう。
小麦粉と卵、それに揚げる材料と油があれば和を再現できるんだから、これまた偉大な料理だ。
「おほっ……これはっ……」
ミョン爺が恍惚の表情を浮かべる。
これも気に入ってもらえたみたいだ。
「見事じゃの。サクッとした衣と、中の魚のふわふわほくほくとした食感……。だがどこか、親しみを感じる部分もある……」
「それは衣にビールが入ってるからじゃないかな?」
「何と! なるほどこのわずかに感じる風味はビールじゃったか!」
ビールを入れることで衣がふわっとする効果がある。
それにミョン爺が「親しみを感じる」といった通り、異世界人の味覚により寄せることもできる。
ビール作戦、大成功みたいだ。
みんなに食べてもらって美味しいと言ってもらえると、嬉しいし自信もつく。
この調子で開店まで頑張るぞー。
「じゃあ次のメニュー行くよー!」
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