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第2章 金の成る魚編
開店準備①
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オークションから2日後。
私はまたしても王都の商業ギルドにいた。
今回は商売の相談だ。
「王都で商売をするには許可証が必要になります。その申請用紙がこちらです」
ピノが私の前に紙を置く。
業務内容、店舗の有無や形態、開業資金などなど。
書かなきゃいけないことがたくさんだ。
「ミオンさんは商売をされるのは初めて……ですよね?」
「うん。ずぶの素人だよ」
「なるほど。でも、商業ギルドが1から開店までお手伝いしますので、安心してくださいね」
「……コンサル料とか取られないよね?」
「取りませんよ。そこまでがめつくないです」
ピノは「ですが」と笑った。
「商売が上手くいけば、王都全体の景気が良くなります。商業ギルドに入ってくるお金も必然的に増えるわけです。結果的に私たちの利益になります」
そういうことか。
あの本部長にしてこの受付嬢ありって感じだなぁ。
「正直、ミオンさんに資金の心配は不要だと思いますが……」
「竜血茸のおかげだね」
「はい。店舗形態はどのようなものを考えておられますか?」
「そうだね……」
最初は、王都への移動に数日かかるので簡易的な形式にしようと思っていた。
でも転移装置『TM-0』が手に入ってしまったからなぁ。
実質的に王都と村がゼロ距離になった以上、しっかりした店を構えてもいいかもしれない。
お金もあることだし。
「ちゃんとした建物を使って営業しようかな。今って借りられる空き物件あるの?」
「ありますよ。ミオンさんの所持金なら、借りることもできますし買うこともできます」
「じゃあ後で紹介してもらおうかな」
「はい。何件かご案内します。それで具体的に商売の内容は?」
「魚を使おうと思ってるんだけど……」
私は刺身の話をピノにする。
生魚と聞いて、彼女は少し不安そうな表情を浮かべた。
魚を生で食べるの? という感じだ。
文化がないんだから、心配になるのも無理はない。
こうなると思って、今日の私は新鮮な魚を持ってきている。
「ここって調理場的なものある?」
「簡単で良ければありますよ」
「じゃあそこでさ、刺身を試してみない?」
「ちょっと怖いですけど……。ミオンさんが言うなら、試してみます」
「決まりだね」
ピノに調理場へ案内してもらって魚を取り出す。
この間と同じように、手早くさばいていく。
「慣れてるんですね」
「まあね。これくらいはできないと、店をやろうなんて思えないよ」
「それもそうですね」
私は刺身を切り分けると、塩をふりかけた。
そしてピノの口元へ運んであげる。
「さあ、お試しあれ」
「美味しいんですかね……」
恐るおそる、ぱくりと刺身を食べるピノ。
強張っていた顔が、噛むたびに和らいでいく。
「美味しいっ!?」
「それは良かった」
「生魚ってこんなに美味しいんですね……。ミオンさん、この知識はどうやって手に入れたんですか?」
「遠方には何でも生で食べたがる国があるんだよね。それを参考にしたの」
参考っていうか丸パクリだけど。
でも村の人たち、そしてピノの味覚に合ったのならまず間違いはないだろう。
「この刺身、王都で人気でるかな?」
「上手くお客さんを集めることができれば、成功すると思います。集客に関しては、私たちは商売のプロ集団です。そこにミオンさんの刺身みたいな斬新な発想が加われば……」
「いけそうだね」
「はい。頑張りましょう」
私はピノとがっちり握手を交わす。
商業ギルドが協力してくれる以上に、心強いことはない。
何せ商売に関しては本当に素人だからね。
調理場から戻って座ると、ピノが尋ねてきた。
「何か他にアイデアってありますか?」
「えっとね……あ、そうだ。店のデザインのことなんだけど」
私はぽんっと手を打つと、アイテムボックスから少し大きめの紙を取り出した。
私の数少ない特技の1つが絵だ。
それを活かして、店のデザインを考えておいたのだ。
オークション前に作ったものだから、屋台仕様になっているけど、店舗にも応用できるはず。
「これは……なかなか奇抜なデザインですね」
「うん。目立つでしょ?」
作ったデザインは、寿司屋を参考に大漁旗などを盛り込んだものだ。
ショッピングモールのフードコートにありそうだけど、異世界の王都では違和感が半端ない。
でも目立つ分、集客に役立つはずだ。
「このデザインですと……物件を買い取って、自費で改造するのが良いかもしれませんね。初期費用はかさみますけど、オークションの収入があれば十分なはずです」
「なるほど……。まあまずは、物件を見てみてからの方がいいのか」
「そうですね。もしよろしければ、空き物件に早速ご案内しますよ」
「うん。お願い」
「かしこまりました」
いよいよ異世界に飲食店オープンが近づいてきた。
最初に転生した時は、こんなことになると思わなかったなぁ。
そもそもは引きニートだった私が、国の中心、言ってみれば東京みたいな場所で店をやろうっていうんだからびっくり。
人は変われば変わるもんだ。
私はピノと一緒に物件リサーチに向かうのだった。
私はまたしても王都の商業ギルドにいた。
今回は商売の相談だ。
「王都で商売をするには許可証が必要になります。その申請用紙がこちらです」
ピノが私の前に紙を置く。
業務内容、店舗の有無や形態、開業資金などなど。
書かなきゃいけないことがたくさんだ。
「ミオンさんは商売をされるのは初めて……ですよね?」
「うん。ずぶの素人だよ」
「なるほど。でも、商業ギルドが1から開店までお手伝いしますので、安心してくださいね」
「……コンサル料とか取られないよね?」
「取りませんよ。そこまでがめつくないです」
ピノは「ですが」と笑った。
「商売が上手くいけば、王都全体の景気が良くなります。商業ギルドに入ってくるお金も必然的に増えるわけです。結果的に私たちの利益になります」
そういうことか。
あの本部長にしてこの受付嬢ありって感じだなぁ。
「正直、ミオンさんに資金の心配は不要だと思いますが……」
「竜血茸のおかげだね」
「はい。店舗形態はどのようなものを考えておられますか?」
「そうだね……」
最初は、王都への移動に数日かかるので簡易的な形式にしようと思っていた。
でも転移装置『TM-0』が手に入ってしまったからなぁ。
実質的に王都と村がゼロ距離になった以上、しっかりした店を構えてもいいかもしれない。
お金もあることだし。
「ちゃんとした建物を使って営業しようかな。今って借りられる空き物件あるの?」
「ありますよ。ミオンさんの所持金なら、借りることもできますし買うこともできます」
「じゃあ後で紹介してもらおうかな」
「はい。何件かご案内します。それで具体的に商売の内容は?」
「魚を使おうと思ってるんだけど……」
私は刺身の話をピノにする。
生魚と聞いて、彼女は少し不安そうな表情を浮かべた。
魚を生で食べるの? という感じだ。
文化がないんだから、心配になるのも無理はない。
こうなると思って、今日の私は新鮮な魚を持ってきている。
「ここって調理場的なものある?」
「簡単で良ければありますよ」
「じゃあそこでさ、刺身を試してみない?」
「ちょっと怖いですけど……。ミオンさんが言うなら、試してみます」
「決まりだね」
ピノに調理場へ案内してもらって魚を取り出す。
この間と同じように、手早くさばいていく。
「慣れてるんですね」
「まあね。これくらいはできないと、店をやろうなんて思えないよ」
「それもそうですね」
私は刺身を切り分けると、塩をふりかけた。
そしてピノの口元へ運んであげる。
「さあ、お試しあれ」
「美味しいんですかね……」
恐るおそる、ぱくりと刺身を食べるピノ。
強張っていた顔が、噛むたびに和らいでいく。
「美味しいっ!?」
「それは良かった」
「生魚ってこんなに美味しいんですね……。ミオンさん、この知識はどうやって手に入れたんですか?」
「遠方には何でも生で食べたがる国があるんだよね。それを参考にしたの」
参考っていうか丸パクリだけど。
でも村の人たち、そしてピノの味覚に合ったのならまず間違いはないだろう。
「この刺身、王都で人気でるかな?」
「上手くお客さんを集めることができれば、成功すると思います。集客に関しては、私たちは商売のプロ集団です。そこにミオンさんの刺身みたいな斬新な発想が加われば……」
「いけそうだね」
「はい。頑張りましょう」
私はピノとがっちり握手を交わす。
商業ギルドが協力してくれる以上に、心強いことはない。
何せ商売に関しては本当に素人だからね。
調理場から戻って座ると、ピノが尋ねてきた。
「何か他にアイデアってありますか?」
「えっとね……あ、そうだ。店のデザインのことなんだけど」
私はぽんっと手を打つと、アイテムボックスから少し大きめの紙を取り出した。
私の数少ない特技の1つが絵だ。
それを活かして、店のデザインを考えておいたのだ。
オークション前に作ったものだから、屋台仕様になっているけど、店舗にも応用できるはず。
「これは……なかなか奇抜なデザインですね」
「うん。目立つでしょ?」
作ったデザインは、寿司屋を参考に大漁旗などを盛り込んだものだ。
ショッピングモールのフードコートにありそうだけど、異世界の王都では違和感が半端ない。
でも目立つ分、集客に役立つはずだ。
「このデザインですと……物件を買い取って、自費で改造するのが良いかもしれませんね。初期費用はかさみますけど、オークションの収入があれば十分なはずです」
「なるほど……。まあまずは、物件を見てみてからの方がいいのか」
「そうですね。もしよろしければ、空き物件に早速ご案内しますよ」
「うん。お願い」
「かしこまりました」
いよいよ異世界に飲食店オープンが近づいてきた。
最初に転生した時は、こんなことになると思わなかったなぁ。
そもそもは引きニートだった私が、国の中心、言ってみれば東京みたいな場所で店をやろうっていうんだからびっくり。
人は変われば変わるもんだ。
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