アイテムボックスを極めた廃ゲーマー、異世界に転生して無双する。

メルメア

文字の大きさ
上 下
15 / 37
第2章 金の成る魚編

800,000Gの男

しおりを挟む
 ぽかぽかとした日差しを浴びながら、気持ちよく寝ていると、急に馬車が止まった。
 その衝撃で目が覚める。

「ん……どうしたの~?」

 体を起こしてみると、馬車が武装した男たちに囲まれていた。
 危険ですので次の宿場町まで護衛……って雰囲気じゃないね。
 どうやら賊のようだ。

「囲まれたか……」

 ネロが顔をしかめる。
 やや遅れて目を覚ましたニナも、賊を見てびくりと肩を震わせた。

「俺は山賊ランガル。懸賞金800,000Gゴールド。札付きの賊なんだぜ」

 800,000Gか。
 懸賞金として高いのか低いのかは分からないけど、それなりに名の知れた山賊ではあるみたいだ。
 ランガルは腕を組んで立ち、ネロを見ながら言う。

「ここらの道を護衛もなしに通ろうなんてのは、襲ってくれって言ってるようなもんだぜ。さあ、持ち金と積み荷を全部置いて行ってもらおうか」

「護衛ならいるんだけどな」

 そう言うと、私は荷台から軽い身のこなしで飛び降りた。
 そしてランガルの前に立って笑う。

「お前が護衛だと?」

「そうだよ。何か文句ある?」

「女が1人か」

「おやおや、女だからってなめちゃいけないと思うけどな」

「ふむ。確かにそうだ。女だろうと男だろうと、強い奴は強い。だがな、強い奴にはオーラってもんがある。お前にはそれがねえ」

 能ある鷹は爪を隠すんだけどなぁ。
 それに……

「それを言ったらあなたにもオーラはないよ」

「ああ?」

 ランガルの目が鋭くなった。
 組んでいた腕を解き、右の拳を振り上げる。

「大人しく金と荷物を置いていくなら命は見逃してやろうと思ったんだがな」

 ランガルの拳が勢いよく私の頭へ迫ってくる。
 私は避けるどころか一歩も動くことなく、その拳を見つめていた。

「【頭砕拳】」

 本気の拳が私の頭を直撃した。
 なるほどね。
 確かに普通だったら頭が砕けてもおかしくないレベルの攻撃だ。
 でも……

「な、何だ!?」
「全くダメージを受けてないぞ!?」
「ボスの拳を頭で受け止めたってのか……?」

 馬車を囲んでいた取り巻きたちが、一斉に驚きの声を上げる。
 目の前のランガルも目を見開いた。

「ね? 強くない」

 拳の強さ、重さは上々。破壊力はある。
 でも遅い。
 この至近距離でも、ゲームで必須のPSである見切りを身に着けている私なら避けられる。

「これで終わると思うなよ」

 ランガルは再び拳を振り上げた。

「【火炎拳】」

 今度は炎をまとった拳。
 しかしこれもまた、私の頭を粉砕するどころか焦げ傷を作ることもできない。

「何で効かねえ……」

「強いから」

 私は笑って答えると、振りきれなかった拳を掴んだ。
 いまだに炎をまとっているけど気にしない。

「あなたを突き出したら800,000Gもらえるんでしょ?」

「だとしたらどうした?」

「【収納ストレージ】」

「何だと?……おわぁぁぁ……」

「ボスぅ!」
「ボース!!」
「何しやがった今ぁ!」

 ランガルをアイテムボックスに収納する。
 よし。800,000Gゲットだぜ。

「それで」

 私は後ろで馬車を囲んでいる手下どもを振り返った。

「次は誰がやるの?」

 数秒の沈黙。
 そして、手下たちは一斉に逃げ出していった。
 めんどくさいし、何か取られたわけでもないから追わなくてもいいか。
 王都への行程に影響が出てもいけないからね。

「よっこらしょ」

 私が荷台に戻ると、ニナが笑って言った。

「さすがです。ミオンさん」

 ネロも助手席からグーサインを出している。
 まあ護衛も兼ねて連れて行ってもらってるんだから、これくらいの仕事はしないとね。

「懸賞金がかかってるのって、捕まえたらどうすればいいの?」

「今日、泊る予定の宿場町で引き渡せばいい。お金ももらえるはずだ」

「わーい。そしたら夜ご飯がちょっと豪華になるかもね」

 私はアイテムボックスの中を思い浮かべた。
 きちんとランガル800,000Gが収納されている。
 さあ、次の街までまた寝るかなぁ。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

初期ステータスが0!かと思ったら、よく見るとΩ(オメガ)ってなってたんですけどこれは最強ってことでいいんでしょうか?

夜ふかし
ファンタジー
気がついたらよくわからない所でよくわからない死を司る神と対面した須木透(スキトオル)。 1人目は美味しいとの話につられて、ある世界の初転生者となることに。 転生先で期待して初期ステータスを確認すると0! かと思いきや、よく見ると下が開いていたΩ(オメガ)だった。 Ωといえば、なんか強そうな気がする! この世界での冒険の幕が開いた。

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)

田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ? コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。 (あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw) 台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。 読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。 (カクヨムにも投稿しております)

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

うどん五段
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。

大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。 ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。 主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。 マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。 しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。 主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。 これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

処理中です...