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一章 10歳になって
46、今夜は 6 (これは混乱の香水)
しおりを挟むジーンの強く静かな口調に、伯爵は一瞬動きを止める。
アルベラはその隙に後ろに転がってる荷物を取り、通信機に息を吹きかけておく。王子に呼ばれ、そちらへ駆ける。
(国外は勘弁! なるようになれ!!)
伯爵との会話中。扉の前。外のメイドに見えないよう壁に身を潜めながら、王子がニーニャに指示し何かを準備している様子は見えていた。抵抗するなら大人が一人の今の内とでも思ったのだろうか。アルベラは適当な会話で時間を稼いでいたにすぎなかった。
ここから先もノープラン。何か手がありそうな王子とジーンに託すしかない。
伯爵は自分に向けられた切っ先を見て、少年を見下ろす。
「………っく、くくく、ははは、ははははははは。ばかかね。やはり図に乗ってるようだな、偽者のガキ。剣の稽古を付けてもらって無駄に自信ばかり膨れたか?! 私を甘く見すぎだよ! お前たちなど私一人で十分だ! ディオールのガキ! お前も抵抗するなら容赦しないからな!」
そう言うと伯爵は腰のあたりから何かを取り出す。
瓶だろうか? 不透明の、黒塗りの瓶を地面に叩きつけた。中から黒い靄に覆われた三匹の黒い犬が飛び出る。そして自身も腰から剣を抜き、伯爵は容赦なくジーンへと切りつけた。
アルベラの「なにあれ?」という問いに、ニーニャがへとへとな声で「ま、魔獣の召喚瓶です!」と答えた。
ジーンは伯爵の剣を剣で受けるが、犬が牙をむいてくるため、それをかわすために交えた剣をなんとか受け流し地面の上を転がるように駆け回る。
「ちょこまかと! クソガキが!」
伯爵は片手で剣を振るいながら、もう片方の掌の上につぶてを生成し始めていた。それを犬の牙と伯爵の剣かを上手くかわすジーンに放つ。
自分の香水は何か役に立つだろうか? いや、今は無理だろう。考えは早々に打ち切られ、アルベラはただ拳を握る。
「王子、ジーン、一人で大丈夫?」
「そうですね。ちょっとまずいかもです」
ラツィラスの額に汗がにじむ。合わせたままの両手の周辺が少し靄がかっていた。何か準備しているようだ。
一匹、ジーンは魔獣の下あごから脳天にかけて剣で貫く。魔獣は霧散する。魔獣を貫いた瞬間のジーンの横っ腹へ、伯爵はつぶてを放つ。つぶては見事に少年の胴を圧迫し、動きを鈍らせた。そこに伯爵の突きが入るが、ジーンは剣でソレを弾く。弾いた瞬間の力を利用し、そのまま後退して伯爵から距離を取る。
「ジーン! 炎を!」
犬を剣で弾きながら、ジーンは王子の方を見た。真っ赤に輝いた瞳と、手の周りに纏う白い光。
(準備できてるな)
犬をはじく。上手い事一匹の胸を貫くことが出来た。貫かれた魔獣が霧となって霧散する。
ジーンが「行くぞ!」と叫び、ラツィラスは「うん!」と答えた。
少年の赤い髪が、瞳が、両手の爪が、赤く灯ったと思えば辺り一帯が赤く染まる。
ジーンの周りで炎の爆発が起きた。
その一瞬、白い何かが空中を這うように、王子を中心に渦を巻いて視界を覆った気がした。
アルベラは目も開けられないほどの眩しさと熱気に、自身の頭部を両腕で覆い隠す。
どうして自分が吹き飛ばされていないのか、熱に皮膚が焼かれていないのか疑問だったが、それはラツィラスを見て分かった。
両手をジーンの方へ向けたラツィラスの前に、薄くなった氷の壁が出来ていた。渦を巻くような模様のソレは、もうすでに溶け切ってしまう寸前だ。
窓が開け放たれているはずだが、部屋の中が蒸気で満たされ湿度が上がる。白く濁った視界の中に、赤く光る少年の姿が見えた。そして、扉の前に作られた壁へ背を打ち付けた伯爵の影。
アルベラの視界の端、それとは別の影が動いた気がした。耳が爆発で馬鹿になっていたが、唸り声が聞こえる気がした。
(まだ残ってた!)
「王子!」
アルベラは王子を押し倒す。体の横を魔獣の黒い霧が掠める。
「ちっ」
伯爵の舌打ち。
「ガキが、調子に乗り゛おっっで」
耳のなかがワンワンと反響していて聞き取りにくいが、それは聞き覚えのある喋り方だった。やけに濁点がかった声。
「も゛ういい。お゛前らも゛、ごんな壁も゛、さっさど壊しで出て行っでやる゛」
「あいつ、薬を飲んだ」
ぽつりとアルベラがこぼす。
両手が離せず耳がふさげなかった。仕方がない。覚悟はしていたことだ。
ラツィラスは「きぃぃぃん」と耳の奥に響く不快な音に疎ましさを感じながら目を凝らす。
どうやらジーンは無事だ。そして、衣類がぼろぼろになり布が焼けちぎれぶら下がっているようなシルエット。あれは伯爵だろうか? 蒸気のせいで視界が悪かった。
(――――――――?!)
突然体が後ろから押し倒される。
ラツィラスは一瞬何が起きたか判断に遅れた。背中の上にアルベラが乗っているのは分かった。そしてその上を黒い影が飛び越えた。ギラりと光る爪が見えた気がした。
少女に守られてしまった。
ラツィラスの胸に黒い靄が生まれる。
彼女は身を呈して自分を守ってくれた。それは助かる。気持ちは嬉しい。だがその代わり、もしもあの爪や牙に、標的でなかった筈の自分が捉えられてしまったらと考えなかったのだろうか。
自分の代わりに誰かに傷つかれた者の気持ちや痛みを、分かった上での行動だろうか。
守られるのは嫌いだ。
ラツィラスは忌々しげに唇を噛む。
普段ジーンが護衛をしてくれているが、あれはまた話が別だった。何かあっても共闘であるから。そもそも、今回ほどの何かなど起きたこともないのだが。
「アルベラ嬢、ありがとうございます。けどこんな―――」
あの魔獣がまたこちらへ飛び掛かってきた。
少女には、自分自身の身の安全だけを考えて早く逃げて欲しかった。
だが実際、今から彼女がここから離れてもどれだけ距離をとれるかはたかが知れている。少し離れたところで、獲物認定されていた場合気まぐれに逃してもらえるとは限らない。
もしかしたら彼女もそれを悟ったのかもしれない。
伯爵の方を見ていた少女は魔物がまた来たこと気づくと、端から逃げるこなど考えにないように、素早くまたラツィラスを庇うようにその上へと覆いかぶさる。
「やめ………」
やめて、と言おうとした声が押しつぶされる。ラツィラスの視界が暗くなる。
――――――いやだ。
魔獣の牙が見えた。
背中に、頭上に少女の息遣いを感じた。
真っ直ぐな緑の瞳が、迎え撃つように魔獣に向けられていた。
――――――いやだ、やめろ。
彼女を押しのけて体制を直すことは難しい。その前にあの身軽な魔獣は少女の首を捉えてしまう。
心に芽生えたのは、感謝や心配といった類いではなかった。それはどちらかといえば怒りに近く、脳天をちりちりと焼き付けながら頭部全体を包み込もうとしていた。
――――――僕を、
頭の奥が熱を発するように熱い。この感情をぶつけられるなら、発散されるなら何でもいい。
ラツィラスは手を突き出した。
「僕を庇うな!!!!」
ラツィラスがアルベラの体の隙間から突き出した右手が風を生む。それが地を蹴ってこちらに真っ直ぐ飛び掛かってきた魔獣の体を吹き飛ばし、壁へと叩きつけた。
ドサリ、と魔獣の落ちる音と自身の上からと、二つの落ちる音が重なる。上から感じる振動と重み。
消すことまでは出来なかったが、あの犬は気は失ったようだ。
八つ当たりのような一撃だった。
ラツィラスは息を深く吐き、自分を落ち着かせる。
「アルベラ嬢、こんなこと」
「………ちょっと!」
上からアルベラの呆れた声がはっきり聞こえた。ラツィラスは耳が充分に回復していることに気づく。
「ニーニャ、重い」
そういえば自分の体にのしかかる重さが増えていた。
「す、すみません! お嬢様に魔獣が飛び掛かってるのが見えたので、………あれ? あれれ?」
どうやら魔獣を吹き飛ばしたタイミングでアルベラの使用人も主人を守ろうと身を呈したらしい。大分タイミングは遅かったものの勇気ある行動だ。と、ラツィラスは落ち着きを取り戻した思考で現状を整理する。
だが、やはり言っておかなければならないことはある。
「アルベラ嬢………」
「あ、すみません王子!」
アルベラが退き、ラツィラスが立ち上がる。継いで「………ジーン?!」という慌てた様子の彼女の声に、視線をお付きの友人の元に引き付けられる。部屋の中心に炎の輪が出来ていた。その中心には、衣類がぼろぼろとなり、所々にやけどを負った伯爵がいた。彼が突き出す両手の先には、首を掴まれ、宙吊りにされたジーンの姿。
「ジーン!!」
王子が声を上げる。
伯爵の粗い息遣い。ダメージはそれなりにあったらしい。だが、薬で強化されたうえ、痛みが感じなくなり興奮状態にある彼に引く気配はない。
ジーンは顔をゆがめ、伯爵の手を掻きむしっていた。
アルベラは考える。炎の輪が邪魔だ。無くなったとしても自分にできる事は無いかもしれない。だが、あの足や腕に噛みついてやる位は出来る。
(けど痛みが感じないなら噛みついた所でどうにも………………………………いや。……………湿気。蒸気)
その湿気も蒸気も、もう先程よりは落ち着いてきてしまったが「もしかしたら」と思ったら試さない手はなかった。自分の髪が視界の端でご機嫌に揺れているのがわかる。
「王子。ジーンを助けて伯爵を戦闘不能にできるかもしれません」
「アルベラ嬢?」
「消火の水と、私にもあの、コレ。お願いしても良いですか?」
アルベラは「コレ」と、両手を向かい合わせ六つの指を合わせる仕草をする。王子の顔にいつもの笑顔はなかった。ただ、真面目に少女の言葉を聞き入れ、こくりと首を縦に振る。
「クソガキがぁ、ぐぞがきがぁ!!!」
「………ん、ぐっ」
ジーンは自分を掴む手を掻きむしりながら火を放っていた。普通なら皮膚を焼かれて厚いと感じるはずなのに、伯爵は熱を感じていないのか身じろぎもしない。
自分たちを囲んだ炎の熱気を、ジーンも感じていないわけではなかった。伯爵と自分を閉じ込めるための火の手も、相手の体力を削る効果を発揮していないのでは作り損だ。一方的に自分の体力だけ削る様ではマイナスでしかない。
だが、もしかしたらこの火を解いた瞬間、この男は真っ直ぐに他の三人へと向かうかもしれない。と思うと解いてしまうのもいかがなものかと思った。
自分はどうしたらいいか。ラツィラスの強化があれば、このまま相手の体を生命活動が出来なくなる程にまでなら焼き尽くしてしまう事も可能だが果たしていいものか。
何かが様子を見るように動き、視界にはいる。
「………にを?」
悩み、苦しさに耐えるだけで手いっぱいのジーンの周囲。明かりがじゅうじゅうと音を立てて一気に消された。
自分たちを包んでいた炎が消え、伯爵は辺りを見回す。
水気が追加され、あたりにはまた蒸気が立ち込めていた。蒸気だけではない。多分霧も発生している。
(どこから? ラツィラスか?)
ふわりと、嗅ぎなれない香りが鼻をつく。
(香水?)
ジーンは伯爵の手から気道を確保しつつ様子を伺う。
ラツィラスたちの居た方から、人の近づいてくる気配がした。
水色の光と、二つの緑の光が霧の中浮きあがる。
「………ぁ、んた、なにを」
「ディオ゛ール゛の゛がきぃぃぃぃ!!!」
伯爵はジーンを投げ捨てた。
アルベラは一直線へ向かってくる伯爵へ、先ほど周辺に振りまいた、残りの香水を瓶ごと投げつける。
「伯爵! 存分にその香りを堪能しなさい!!!」
あらかじめ割れる寸前までヒビを入れてた香水瓶は伯爵の頭に直撃し見事に中身をぶちまける。
匂いが濃く、きつくなり、アルベラの髪がより強く輝く。口の中には喉の奥から競りあがるような甘ったるさが充満していた。蜜や砂糖よりも甘い、感覚がマヒして苦味にも感じてしまいそうな甘ったるさ。
アルベラが投げたのは、虫の実験にて「混乱」の効果を表した香水だった。本当は痺れの香水を使いたかったが、先ほどの爆発か、王子を押し倒した際か。タイミングは不明だがどこかに落としてしまったようだ。だがこちらでも動きが止められないこともないはず。
ニーニャの捕らえた虫や、部屋の隅の蜘蛛に試したところ混乱からの攻撃性は見受けられず、皆「ぽかん」としているような感じでアルベラを見上げていた。動けばふらふらと千鳥足で、前後や左右という感覚も狂ってしまったのかゾンビのように知能を感じさせない動きをしていたのを思い出す。
何より大事なのは、どんなにこの香水を使っても、虫は死ぬことがなかったという事だ。コーヒーの時の即効性や、眠りの効果の香水を大量に吹き付けた虫が、半々の確率で目覚めない個体があったことを考えれば大分安全なもののように感じる。この香水なら、今いる室内の他の者たちに効いてしまったとしても命に関わることはない、はず。
「ごんなもの、痛くもかゆぐも………いだ、ぐも、………なん、ど、 も………………」
伯爵の様子が変わってきていた。足元がおぼつかず、視線も定まってない。
「アルベラ嬢。どうですか?」
口にタオルを巻いたラツィラス近づいてくる。
赤い目の恩恵。魔法の耐性も常人よりあるから大丈夫と彼は言っていたが念のため荷物に入れていたタオルを顔に撒いてもらっていた。
「多分………効いてると思うんですが」
(ジーンも王子ほどではないらしいけど耐性あるっていってたな。それでも口許を保護しててくれてればいいんだけど………)
アルベラは伯爵の様子を見る。彼はその場に膝をついていた。呆然と床を眺め静止している。良く分からないが、今のうちに縄でぐるぐる巻きにしてしまおう。
「ニーニャ! 縄持ってきて!………………………ニーニャ! ニーニャ?」
返事がない。
もしかしたらこの霧が彼女にも効いてしまっているのかもしれない。
アルベラは自分で荷物を取りに行く。縄を探し手に取り、使用人の姿を探すと壁際で膝立ちになり、伯爵と同じように呆然と床を眺める彼女の姿があった。
(………?)
なにか、思っていた効果と違う。
アルベラは縄を取ると王子の元に向かい、共に伯爵の手と足首とをできるだけ強く縛りあげる。念のため口にも縄を噛ませておく。
「よし、」
手の甲で額を拭い、アルベラは辺りを見回す。
室内に充満した霧はどう対処したものか。
「ありがとうございます、王子」
「いえ。上手くいって良かったです。けど、彼は一体どうしたんでしょうね。混乱………。何か幻でも見えているんでしょうか?」
「すみません。私も良く分からなくて。人に使ったのは初めてなうえ、制御の仕方も何も良く分からないもので。この霧もどうしたことやら………」
王子の補助は無くなったものの、霧の存在にアルベラの毛先は喜ぶようにふわふわなびき、明かりを灯していた。
(今後、これの抑え方も覚えていかないと)
アルベラは手櫛で髪を撫でつける。
「まあ、即効性の毒とかでないのは確かみたいですし。伯爵の動きを封じるためにももう少しこのままでもいいんじゃないでしょうか?」
開いた窓から散っていっているのだろう。薄まってきた霧の中、ジーンの姿が浮かび上がる。
「………つー」
「ジーン! 大丈夫?」
アルベラが声を上げる。
「いって………頭ぶつけた………」
ラツィラスは友人の無事な姿にクスクスといつものように笑う。
「ジーンも、ザリアスを見習って頭の筋肉鍛えないとね」
「ばかいえ………」
ふらりとジーンの体が傾き、ラツィラスが肩を貸す。
その姿に、アルベラは魔法の効果がジーンにも効いたのでは? これは拷問に入るのか? とそちらの心配をする。
「なんだよ、この霧」
ジーンが瞼を開いているのもだるそうに、考えるのもめんどくさそうに尋ねる。頭を振って、何かを払おうとするような仕種をしている。
「アルベラ嬢の魔法だって。混乱の効果があるらしいんだけど」
「こんらん? なるほど。………たしかに、頭がぼーっとして」
「………おじょうさま」
「ニーニャ?」
反応の無かった使用人がふらりと側へ寄ってきた。アルベラは「大丈夫なのだろうか」と彼女の姿をまじまじと見る。
「っていうか、あれ? 混乱は? 歩けてる………私の事分かってるし」
「おじょうさまぁぁぁぁぁぁ!!!!」
アルベラの疑問と被さり、ニーニャが叫ぶ。そして勢いよく抱き着き、頬ずりをする。
「おじょうざまぁぁぁ!!! だいずぎー! もっと、もっともっともっともっと! 私の事たくさんいじめてくださいー!!!!」
アルベラは訳が分からず硬直していた。
縛り上げた公爵も芋虫のように動き出し、アルベラの靴に頬ずりしている。
気を失っていた魔獣も、いつの間にかこちらに来ていた。アルベラの前に来て頭をたれ、尾を千切れんばかりに振る。まるで忠犬。
「え? えええ??」
人は極度の危険や理解の追い付かない場で、どうしようもできずに歪な笑顔を浮かべてしまう事がある。今まさに、アルベラは気持ちの悪い汗を浮かべ、そんな表情をしていた。
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