これはただのサービス残業ですから!

ごいち

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「それじゃ、空の道でリーリクルまで向かおう!」
「そうだね」

 ほうきにまたがり、ぎゅっとにぎる。ラルフもほうきを取り出してまたがり、ひゅんっと音を立てて空の道へ向かう。

 アシュリンもラルフを追いかけるように空を飛ぶ。

 良い天気だから、見晴らしも良くて思わず笑顔を浮かべてしまう。

「いい天気ー!」

 空気もんでいて、アシュリンは思わず大きく空気を吸い込んだ。

「空の道は……こっちだね!」

 リーリクルに行く空の道を選び、ラルフの姿を探す。彼はアシュリンのことを待っていたようで、分かれ道で待っていてくれた。ルプトゥムも一緒に。

「この道を真っ直ぐ進めば、リーリクルはすぐだよ!」
「そうなんだ。じゃあ、早速行こうか」
「うん!」

 分かれ道には小さな箱が置いてあり、その箱に手を入れて「リーリクルに行きます」とつぶやくと、手首にシュルンと赤いひもが巻き付く。

 これは空の道を使うために必要なもので、必ず小さな箱に手を入れないといけない。

 ラルフも箱に手を入れて、赤いひもを巻き付けた。

「おじいちゃんたちに会ったら、どんなことを話そうかなぁ」

「いろんなお話ができるね、お土産話、たくさんでしょ?」
「……あっ、お星さまでおどろかせるのも良いかも!」

 良いことを思いついた! とばかりに目を輝かせるアシュリンに、ラルフはくすりと口角を上げてルプトゥムを呼ぶ。

 使い魔たちは自由に空を飛べるが、大体は主人と一緒に飛んでいる。

「リーリクルに行く道、結構混んでいるね」
「そうだねー。陸路りくろが使えないなら、仕方ないのかな」

 アシュリンは飛んでいるスピードを落として、邪魔にならないようにはじに移動した。

 ラルフを呼んで端っこを飛んでいると、急いでいるのかピューンと音がするくらい、いきおいよく飛んでいる人がいて、「こらー! 空の道の速度を守りなさーい!」と空の道を警備けいびしている人が追いかけている。

「……空の道ってにぎやかだよね」
「……本当にね」

 陸路よりも空の道を通ったほうが、移動は楽だ。

 楽だが、こうしてたまに速度を守らない人がいて、そのたびに警備員が追いかけるというレースが始まってしまうことがある。

「今日はレースの日かぁ」
「なにをそんなに急いでいるんだろうねぇ」

 のんびりと飛んでいるアシュリンとラルフは、やれやれとばかりに両肩を上げて、視線をわしてくすくすと笑い合った。

 そのうちにスピードを出していた人が警備員につかまり、しょんぼりとしているところを追いしていく。

「みんなが速度を守れば、誰かにぶつかっちゃうこともないよね」

「うん、安全に飛ぶことって大事だね」

 空の道は魔法でできていて、もしもほうきから落ちてもぽよよんとした雲が受け止めてくれる。なので、たまにいるのだ。わざとスピードを出して、飛んでいる人にぶつかり、雲に落とす人が。
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