王宮に咲くは神の花

ごいち

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第四章 三人目のハル・ウェルディス

策略

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 領兵が満足すれば、最後に挑んでくるのはいつもコーエンだ。
 シェイドは蕩けて潤んだ瞳で髭面の傭兵を見つめた。

「よしよし、お待ちかねだったな」

 あからさまな優越感を示して、コーエンが挑みかかってきた。体を俯せに返され、腹の下に丸めた敷物が押し込まれる。
 シェイドは意識して足を開き尻を高く掲げて、先の二人の時よりも従順に男を迎え入れた。

「デカいのが欲しかったか? ん?」

「……ン……ッ」

 入り口を浅く嬲る亀頭を待ちきれない様子で、シェイドは尻を突き出した。浅く埋められただけの塊を、自ら後ろに下がって呑み込んでいく。
 自分を犯す男を悦ばせようと小刻みに尻を揺さぶり、中を締めながら奥へ奥へと誘い込む。
 その尻が、大きな音を立てて一つ叩かれた。

「この……盛りのついたメスめ! そら、望み通りお前の好きな奥までブチ込んでやるぞ!」

「ン!……ンン――ッ!」

 筋の浮いた怒張が潜り込んできた。
 反射的に引いた体を引き戻されて、自ら巨大だと嘯く怒張が容赦なく埋まってくる。
 二人の領兵に思う存分犯されて腫れた肉壺は、新たに入ってきた異物の大きさに悲鳴を上げていた。なのにその悲鳴さえも、脳に辿り着くころには蕩けるような官能に変わる。
 怒張を根元まで収められる頃には感じすぎて、腰の下の敷物をぐっしょりと濡らすほどの蜜を零してしまっていた。

「びしょびしょにしちまって、そんなに嬉しいか。だったら、好きなだけ食いやがれ」

 悦に入ったコーエンの言葉に、口が利けるならどうしてこれが嬉しいものかと吐き捨ててやりたかった。けれど白い尻がそれを裏切る。
 言葉の通りに自ら揺すって太いものを出し入れし、吸い付く粘膜が濡れた音を立てた。反り返った怒張に中を押し広げられ、内側から責められると屹立の根元が切なく疼く。
 それでもまだ足りない。
 凶器のようなこの肉棒をもっと激しく出し入れされて、入り口が捲れ上がるほど乱暴にされたい。大きな雁に浅いところをたっぷり擦って高められ、昂りきって逝く時には腹の奥底を深々と突いてほしい。

 その欲望を抑えきれずに、シェイドは四つん這いのまま大きく腰を振り始めた。

「淫売が……!」

 罵倒ももう耳に入らなかった。
 腰を振ると吊り下がった胸の札が揺れて激痛が走る。その痛みさえ痺れるような疼きに変わって、下腹を甘く苦しく苛んだ。

 ――確かに、自分は淫売になってしまった。
 国王以外の男の前で裸になり、男たちの凌辱を逆らいもせずに受け入れている。しかもそれで快楽を得ているのだから、盛りのついた雌犬よりも卑しい生き物だ。
 もしもこんな姿を国王に見られでもしたら……。

「……ンッ……」

 想像すると、感度が深まった。
 下賤の男を咥えこんで善がっている自分が呪わしいのに、体の熱はどんどん高まって行ってしまう。

「くそ……ッ」

「!……ンン――ッ……ゥウウウ、ウゥ――ッ!」

 冷静を装えなくなったコーエンが、腰を掴んで後ろから激しく突き上げ始めた。
 太く反り返った肉棒が連日の荒淫で過敏になった場所をきつく苛む。
 痛みと、それに勝る法悦に襲われ、シェイドは噛み締めた布の間から絶叫にも似た嬌声を迸らせた。

「イ、ゥウウ――――ッ!……イゥウッ、イ、イッイァウウゥ――――ッ、ッ!」

「……イキっぱなしか! このメス犬め!」

 罰を与えるように、コーエンが尻を何度も強打した。男を呑んだまま、打たれた尻が、ビクッ、ビクッ、と跳ね上がる。
 腹の奥が捩じれ、頭の中が真っ白になりそうな快感が走り抜けて来た。
 敷物に擦られる萎えた屹立からは蜜が糸を引いて垂れ落ちる。今日味わった中で一番深い法悦だった。

 絶頂に痙攣する尻をなおも責め立て、激しく腰を叩きつける音が部屋に響いた。周りの温度が上がり、先に事を済ませた領兵たちの興奮も増していく。
 ――そのせいで、彼らは部屋に誰かが駆け込んでくる気配に気づくのが遅れた。





「……お前たち……!」

 鍵のかかっていない扉を開け放ったのは、日が傾くまではこの部屋に来るはずのないラナダーンだった。
 ラナダーンは部屋の状況を認めると目を座らせた。腰の剣に手をかけ、今にも抜いて斬りかかりそうな表情で低く唸る。

「今すぐここを出ていけ。……今すぐにだ」

 その気迫と怒気に、丸腰の男たちが敵うはずはなかった。











 領兵とコーエンを蹴散らしたラナダーンは、ひどく疲れた様子を見せ、悄然と寝台の端に腰かけた。

 シェイドは荒い息を吐いて寝台に倒れ伏したまま、疲労の滲む横顔をひそかに観察する。
 ――何もかもうまくいかない。ラナダーンの浅黒い横顔はそう告げているように見える。

 祖父のマクセルは仮初めと言えども北方人の頭に王冠を載せることを拒み、王権を譲るよう国王を説得しているはずのアリアは塔から出て来ない。
 領兵と傭兵は好き放題して統率が取れず、王都に額環を取りに行かせた部下からも何の報告もない。
 八方手づまりになった、と。

 額環さえ手に入れることができれば、ラナダーンはこの状況を打開できるはずだった。だが、良い知らせが彼の元へ届くことはないだろう。
 王都までは馬で駆ければ往復に二日程だ。それがもう五日も経つのに知らせがないのは、王都へ行かせた部下が捕らえられたためだろうと、シェイドは考えていた。

 『第一王位継承者を示す黄金の額環は、王都ハルハーンにあるヴァルダンの城下屋敷の中。今は亡きタチアナ・ヴァルダンの部屋の中に置かれている』
 ――シェイドが、ヴァルダン家の詳細な間取りとともに、そう偽りを教えたからだ。

 ヴァルダンの屋敷の警備が厳重なことを、あの屋敷で半年を暮らしたシェイドはよく知っている。
 国王が突然消息を絶った今、ヴァルダンの警備は普段よりいっそう厳しくなっているだろう。
 そこへ素性怪しい男たちが忍び込んで行ったのだから、見逃されるはずがない。

 離宮の鳥に託した伝言がなくとも、ヴァルダンの手の者はいずれここに辿り着いていたはずだ。
 居所さえ掴めれば、城壁の向こうで大人しく手をこまねいているほどサラトリアは間の抜けた男ではない。そして戦神に例えられるジハードもまた、ただ諾々と大人しい虜囚のままではいないだろう。

 後はただ、一度の機会があればいい。
 国王が無事ここを脱出するための夜――それが、今夜だった。





「ラナダーン……」

 シェイドは半身を起こしてそっと手を伸ばすと、寝台の端に腰かけたラナダーンの服の裾に触れた。
 振り返った顔には微かな戸惑いが浮かんでいた。シェイドは深い恍惚を味わった後の熱っぽく潤んだ瞳で見つめ、大事なことを打ち明けるかのようにひそやかに囁いた。

「貴方にお伝えしたいことがあります。今夜にでも、私のために時間を作っていただけませんか」

 否、と言われるのならそれも仕方のないことだ。
 ラナダーンは夜が更けてからここへやってきたことはない。きっと祖父であるマクセルの目が厳しいのだろう。その時には叫び声でも上げて、警備する兵たちの注意を引くしかない。

 だがラナダーンは操られたように頷くと、裾を掴んだシェイドの手を取って慈しむように甲に口づけした。
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