王宮に咲くは神の花

ごいち

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第三章 ミスル離宮

奥侍従の煩悶

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「ん……」

 背後の壁にシェイドを追い詰め、ジハードは長く厚みのある舌を歯列の間から滑り込ませた。
 濡れた舌と舌が擦れ合う感触に、シェイドは小さく呻きを漏らす。ジハードの舌は巧みに動いて、この舌で愛撫された時の感覚をシェイドの脳裏に蘇らせた。
 息苦しさにシェイドが顔を逸らそうとするのを許さず、ジハードは頬に添えた指先で耳朶を擽りながら、もう片方の手を胸元に滑らせる。

「……!……んっ、んん……」

 胸の柔らかい肉はシェイドの弱い場所だ。爪先で引っかかれるとすぐにぷくりと勃ちあがって、ジハードの指を押し返す。ジハードは健気な肉の突起を虐めるように爪の先でそれを弄り続けた。
 鳩尾から下腹にかけて総毛立つような快感が走り、シェイドは思わず腰を引いてジハードから身を遠ざける。

「足を開け」

 隠そうとする仕草に目敏く気づいたジハードが、静かに命じた。

 知られた羞恥に目元を染めて、それでも命令通りにシェイドは足を開いた。
 薄い体毛に守られた欲望が、浅ましい形に変化している。ジハードはそれを手に取って前後に扱き、勃ち上がりかけた屹立の勢いを確かなものへと変えてしまった。

「俺の妃はお前だ。だからお前が孕めば良い」

「陛下……」

 昨夜も、泣きが入るまでここを嬲られた。

 ジハードは巧みな指淫でシェイドの屹立を射精の寸前まで高めては、乳首を弄び後孔を苛んで生殺しにする。
 奥侍従が自らの快楽の追及を禁じられていると知りながら、耐えかねたシェイドがその禁を破って自身への愛撫を強請るまで、執拗に嬲り続けるのだ。
 結局、涙ながらに乞うても、ついに男としての解放は与えられなかった。体内を穿たれ続ける女の悦びに最後には正気さえ失って、いつ閨が終わったのかも覚えていない。今日も目が覚めた時からずっと、体の芯に熱が灯りっぱなしだった。

 今もジハードはシェイドの男の部分を駆り立てるだけ駆り立てると、あっけなく手を離してしまった。その手は両足の奥へと滑りこむ。

「……濡れているぞ」

 指先を窄まりの中に埋めて、ジハードが笑いを漏らした。書斎で溢れ出た分は拭い取ったが、体の奥に大量に吐き出された昨夜の残滓がまだ溜まっていて、少しずつ降りてきているのだ。
 ジハードが二本の指で肉の門を拡げると、内股を温かいものが伝い落ちていくのが分かった。

「侍従の不手際だな。……それともお前が俺の子種を腹の中に収めておきたかったのか」

「あぁっ……!」

 笑いながら、ジハードが指を窄まりの中に深く埋めてきた。
 内側に粘液を溜めた肉壺は、骨ばった長い二本の指を難なく呑み込んだ。我が物顔で自在に動く指に内壁が吸い付き、指先がその壁を擦るたびに腰が淫靡に跳ね上がった。

「指にいやらしく食いついてくる。望み通り、たっぷり種をつけてやろう」

「……っ……」

 体を強引に返されて、シェイドは湯殿の壁に縋りついた。
 後ろから伸びたジハードの手に片方の膝が持ち上げられ、立った姿勢で後孔が無防備になる。
 その窄まりに熱い怒張の先端が押し当てられた。

「あ……っ」

 ジハードはまだ表宮殿で政務を行うための略装を纏ったままだ。
 足下の床は静かに溢れる湯で濡れているが、ジハードは服を濡らさないよう、このまま立って事を行うつもりなのだ。





 怖い、と思った次の瞬間、濡れた窄まりを押し広げてジハードの逞しい牡が入り込んできた。

「……!……う……」

 シェイドより頭一つ背が高いジハードは、腰の位置も高い。
 揺るぎない強さで下から押し上げてくる怒張に、シェイドは壁に縋り付いて伸び上がったが、逃げられるはずはなかった。
 爪先立った腰を両手で引き下ろされ、太い凶器が肉を割って進んでくるのを喘ぎながら受ける以外にない。

「力を抜け」

 ジハードはそう言ったが、力を抜けばジハードの怒張が容赦なく奥まで入ってくるだろう。それに、爪先立ちになっていては、力を抜けるはずもない。

「シェイド」

 ジハードは聞き分けのない奥侍従に焦れた声を上げた。
 できない、とシェイドが首を横に振ると、ジハードは残る膝の裏にも後ろから手をかけ、幼児に小水を促す時の要領でシェイドの体を宙に浮かせた。

「ぁあっ……、いや……!」

 思わず石造りの壁に刻まれた彫刻に手をかけ、しがみついて逃れようとしたが、それを許すようなジハードではない。壁に体を押しつけるようにして追い詰め、両脚を大きく左右に開かせた姿で、守るもののない窄まりの中に猛った怒張を呑み込ませていく。

 シェイドの口から怯えを表す悲鳴が上がったが、湯殿の壁に反響した声が消えるより早く、ジハードの全てを体内に収めさせられていた。

「……お前は、俺に抱かれるのが嫌なのか」

 背後から体を密着させたジハードが、壁に縋るシェイドの耳元に低く囁いた。その怒りの気配にシェイドは震えあがる。

 両脚はまだ浮いたままだ。体の中には深々と芯棒が入れられて、その先端は腹を突き破りそうなほど奥まで刺さっている。
 泣こうが喚こうが、助けは来ない。
 ここは美しいけれど堅固な牢獄で、シェイドは刑を執行される罪人だった。卑しい北方の血を引いて王宮に生まれたことこそが、王家の血筋を冒涜するというあまりにも大きな罪なのだ。

「いいえ……」

 震える声で、シェイドは心にもない言葉を紡いだ。
 自分を守れるのは自分だけだ。この牢の中で受ける罰を少しでも軽微なものにしたいのなら、心を偽って従順な囚人であり続けるしかない。

「天にも昇るほど嬉しゅうございます……陛下にご寵愛いただけて、またとない誉れにございます!」

 恐怖と屈辱の涙を豊かな髪の流れに隠し、シェイドは奥侍従としての求められるであろう答えを叫んだ。

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