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🌸第1話🌸
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薄いカーテン越しに降り注ぐ柔らかな日差しに、開きかけた瞳はやむなく閉じることになる。目覚ましは静かなままだから起きる時間にはまだ少し早そうだ。もう少しだけこの心地よい眠気に身を任せていたい。そう思って潔く二度寝を決めようと布団を肩まで深くかぶる。はずだったのに。
ばさっ
「アリア! 起きろ!!」
元気のいい大声と共に勢いよく布団をはがされたかと思うと、瞬時に寒さが全身に襲ってくる。
「寒い! まだ時間じゃないんだからもう少し寝かせてよノア!」
「だめだめ! もうお日様が登ったから起きなきゃだよ! なんたって今日は僕とデートなんだから!」
何やら騒いでいるノアだが、生憎布団が恋しくてたまらない私はノアの手に収まった愛しの布団を取り返すのに必死だった。私よりも5つも年下の少年とはいえ、やはり男の子なのだ。想像以上に力が強く、取り返すのも一苦労だ。こんな時は、
「もう、返してくれないならこうだよ!」
「うわっ!」
私が手を一振りすると、今までノアがぎゅっと力強く握っていたのが嘘みたいにほどけて私の手元に戻ってくる。これでもうひと眠りできる。ずるいーだかなんだか叫んでいるノアは無視して私は意気揚々と布団に潜り込んで目を閉じた。
「魔法はずるいよアリア! …って、あ! 寝ちゃダメなんだって~!」
私が眠りに着こうとしているのに気付いたノアがベッドに近づいてくる気配がする。
「だ~か~ら~! 起きてよ、アリアぁ」
ベッドのそばまで来たノアはこちらに手を伸ばしたかと思うと控えめに私の体を揺すってくる。最初の内はいつか諦めるだろうと放っておいたけど、いつまでも諦めないノアに仕方なく手を伸ばした。
「うわ!」
どさっ
私の方に置かれた手をぐっと引っ張って、無理やり布団の中に引き込む。まあ、私の腕力じゃ無理な話だからまた魔法頼りなんだけど。そんなことどうでもいいのだ、今はこの私の安眠を妨害してくるノアをおとなしくさせるのが最優先なんだから。一度目をあけて、ちらとノアの様子を確認すると何が起きたのか分からないという顔をして数秒フリーズしたあと、ぼっ、と音が出るくらいの勢いで顔が赤くなっていく。なんなら首とか耳まで真っ赤に染まっている。
「緊張してるの? ノアったらかわいー♡」
「なっ、! 、っえ??」
普段はもう12になったんだから子ども扱いするなって、うるさいけどやっぱりまだまだ子供のようだ。布団の中で行き場を無くした腕をパタパタと忙しなく動かしている。そんな初心な反応をしてくれるノアの腕ごとぎゅっと抱きしめる。
「お姉ちゃんはもう寝るんだから、大人しくしてて」
ぴたっ、と動きを止めたのをいいことに私は目を閉じる。ようやく二度寝が再開できそうだ。すぐさまやってきた眠気に抗うことなくすやすやと眠りに入った私は、その後に呟いたことなんて全く耳に入ってはいなかった。
「……うぅっ。 当たってるんだよぉ」
ばさっ
「アリア! 起きろ!!」
元気のいい大声と共に勢いよく布団をはがされたかと思うと、瞬時に寒さが全身に襲ってくる。
「寒い! まだ時間じゃないんだからもう少し寝かせてよノア!」
「だめだめ! もうお日様が登ったから起きなきゃだよ! なんたって今日は僕とデートなんだから!」
何やら騒いでいるノアだが、生憎布団が恋しくてたまらない私はノアの手に収まった愛しの布団を取り返すのに必死だった。私よりも5つも年下の少年とはいえ、やはり男の子なのだ。想像以上に力が強く、取り返すのも一苦労だ。こんな時は、
「もう、返してくれないならこうだよ!」
「うわっ!」
私が手を一振りすると、今までノアがぎゅっと力強く握っていたのが嘘みたいにほどけて私の手元に戻ってくる。これでもうひと眠りできる。ずるいーだかなんだか叫んでいるノアは無視して私は意気揚々と布団に潜り込んで目を閉じた。
「魔法はずるいよアリア! …って、あ! 寝ちゃダメなんだって~!」
私が眠りに着こうとしているのに気付いたノアがベッドに近づいてくる気配がする。
「だ~か~ら~! 起きてよ、アリアぁ」
ベッドのそばまで来たノアはこちらに手を伸ばしたかと思うと控えめに私の体を揺すってくる。最初の内はいつか諦めるだろうと放っておいたけど、いつまでも諦めないノアに仕方なく手を伸ばした。
「うわ!」
どさっ
私の方に置かれた手をぐっと引っ張って、無理やり布団の中に引き込む。まあ、私の腕力じゃ無理な話だからまた魔法頼りなんだけど。そんなことどうでもいいのだ、今はこの私の安眠を妨害してくるノアをおとなしくさせるのが最優先なんだから。一度目をあけて、ちらとノアの様子を確認すると何が起きたのか分からないという顔をして数秒フリーズしたあと、ぼっ、と音が出るくらいの勢いで顔が赤くなっていく。なんなら首とか耳まで真っ赤に染まっている。
「緊張してるの? ノアったらかわいー♡」
「なっ、! 、っえ??」
普段はもう12になったんだから子ども扱いするなって、うるさいけどやっぱりまだまだ子供のようだ。布団の中で行き場を無くした腕をパタパタと忙しなく動かしている。そんな初心な反応をしてくれるノアの腕ごとぎゅっと抱きしめる。
「お姉ちゃんはもう寝るんだから、大人しくしてて」
ぴたっ、と動きを止めたのをいいことに私は目を閉じる。ようやく二度寝が再開できそうだ。すぐさまやってきた眠気に抗うことなくすやすやと眠りに入った私は、その後に呟いたことなんて全く耳に入ってはいなかった。
「……うぅっ。 当たってるんだよぉ」
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