上 下
1 / 3

🌸第1話🌸

しおりを挟む
 薄いカーテン越しに降り注ぐ柔らかな日差しに、開きかけた瞳はやむなく閉じることになる。目覚ましは静かなままだから起きる時間にはまだ少し早そうだ。もう少しだけこの心地よい眠気に身を任せていたい。そう思って潔く二度寝を決めようと布団を肩まで深くかぶる。はずだったのに。

 ばさっ

 「アリア! 起きろ!!」

 元気のいい大声と共に勢いよく布団をはがされたかと思うと、瞬時に寒さが全身に襲ってくる。

 「寒い! まだ時間じゃないんだからもう少し寝かせてよノア!」
 「だめだめ! もうお日様が登ったから起きなきゃだよ! なんたって今日は僕とデートなんだから!」

 何やら騒いでいるノアだが、生憎布団が恋しくてたまらない私はノアの手に収まった愛しの布団を取り返すのに必死だった。私よりも5つも年下の少年とはいえ、やはり男の子なのだ。想像以上に力が強く、取り返すのも一苦労だ。こんな時は、

 「もう、返してくれないならこうだよ!」
 「うわっ!」

 私が手を一振りすると、今までノアがぎゅっと力強く握っていたのが嘘みたいにほどけて私の手元に戻ってくる。これでもうひと眠りできる。ずるいーだかなんだか叫んでいるノアは無視して私は意気揚々と布団に潜り込んで目を閉じた。

 「魔法はずるいよアリア! …って、あ! 寝ちゃダメなんだって~!」

 私が眠りに着こうとしているのに気付いたノアがベッドに近づいてくる気配がする。

 「だ~か~ら~! 起きてよ、アリアぁ」

 ベッドのそばまで来たノアはこちらに手を伸ばしたかと思うと控えめに私の体を揺すってくる。最初の内はいつか諦めるだろうと放っておいたけど、いつまでも諦めないノアに仕方なく手を伸ばした。

 「うわ!」

 どさっ

 私の方に置かれた手をぐっと引っ張って、無理やり布団の中に引き込む。まあ、私の腕力じゃ無理な話だからまた魔法頼りなんだけど。そんなことどうでもいいのだ、今はこの私の安眠を妨害してくるノアをおとなしくさせるのが最優先なんだから。一度目をあけて、ちらとノアの様子を確認すると何が起きたのか分からないという顔をして数秒フリーズしたあと、ぼっ、と音が出るくらいの勢いで顔が赤くなっていく。なんなら首とか耳まで真っ赤に染まっている。

 「緊張してるの? ノアったらかわいー♡」
 「なっ、! 、っえ??」

 普段はもう12になったんだから子ども扱いするなって、うるさいけどやっぱりまだまだ子供のようだ。布団の中で行き場を無くした腕をパタパタと忙しなく動かしている。そんな初心な反応をしてくれるノアの腕ごとぎゅっと抱きしめる。

 「お姉ちゃんはもう寝るんだから、大人しくしてて」

 ぴたっ、と動きを止めたのをいいことに私は目を閉じる。ようやく二度寝が再開できそうだ。すぐさまやってきた眠気に抗うことなくすやすやと眠りに入った私は、その後に呟いたことなんて全く耳に入ってはいなかった。

 「……うぅっ。 当たってるんだよぉ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【ヤンデレ鬼ごっこ実況中】

階段
恋愛
ヤンデレ彼氏の鬼ごっこしながら、 屋敷(監禁場所)から脱出しようとする話 _________________________________ 【登場人物】 ・アオイ 昨日初彼氏ができた。 初デートの後、そのまま監禁される。 面食い。 ・ヒナタ アオイの彼氏。 お金持ちでイケメン。 アオイを自身の屋敷に監禁する。 ・カイト 泥棒。 ヒナタの屋敷に盗みに入るが脱出できなくなる。 アオイに協力する。 _________________________________ 【あらすじ】 彼氏との初デートを楽しんだアオイ。 彼氏に家まで送ってもらっていると急に眠気に襲われる。 目覚めると知らないベッドに横たわっており、手足を縛られていた。 色々あってヒタナに監禁された事を知り、隙を見て拘束を解いて部屋の外へ出ることに成功する。 だがそこは人里離れた大きな屋敷の最上階だった。 ヒタナから逃げ切るためには、まずこの屋敷から脱出しなければならない。 果たしてアオイはヤンデレから逃げ切ることができるのか!? _________________________________ 7話くらいで終わらせます。 短いです。 途中でR15くらいになるかもしれませんがわからないです。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

好きだった幼馴染に出会ったらイケメンドクターだった!?

すず。
恋愛
体調を崩してしまった私 社会人 26歳 佐藤鈴音(すずね) 診察室にいた医師は2つ年上の 幼馴染だった!? 診察室に居た医師(鈴音と幼馴染) 内科医 28歳 桐生慶太(けいた) ※お話に出てくるものは全て空想です 現実世界とは何も関係ないです ※治療法、病気知識ほぼなく書かせて頂きます

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

【R18】黒髪メガネのサラリーマンに監禁された話。

猫足02
恋愛
ある日、大学の帰り道に誘拐された美琴は、そのまま犯人のマンションに監禁されてしまう。 『ずっと君を見てたんだ。君だけを愛してる』 一度コンビニで見かけただけの、端正な顔立ちの男。一見犯罪とは無縁そうな彼は、狂っていた。

お兄ちゃんはお医者さん!?

すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。 如月 陽菜(きさらぎ ひな) 病院が苦手。 如月 陽菜の主治医。25歳。 高橋 翔平(たかはし しょうへい) 内科医の医師。 ※このお話に出てくるものは 現実とは何の関係もございません。 ※治療法、病名など ほぼ知識なしで書かせて頂きました。 お楽しみください♪♪

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

初めてなら、本気で喘がせてあげる

ヘロディア
恋愛
美しい彼女の初めてを奪うことになった主人公。 初めての体験に喘いでいく彼女をみて興奮が抑えられず…

処理中です...