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2.はじまり
しおりを挟むはじまりは一週間前。
工事現場のように、蝉が狂奏曲を奏でる夏の日。
世間は夏休みだというのに茹だる様な暑さの中、受けたくもない補習が続いていた。
「日野~、お前まだ帰らないのか~?」
大嫌いな数学Aが終わり、心なしかいつもより疲れが見えるクラスメイトに声をかけられ、少年はあわてて顔をあげた。
「あ、いや。なんか生物化学室に忘れ物したみたいだから先に帰っていいよ」
慌てすぎてずれてしまったメガネを戻しながら、少年・日野檜は申し訳なさげに笑う。
あせった。
妄想してた。
大嫌いな数学は大抵妄想時間。
クラスメイトの声かけでやっと現実世界に帰ってきた少年は、作り笑いを浮かべてごまかす。
閃光のように強く熱斜が降り注ぐ窓際の席。
にも関わらず、少年は冷や汗を拭いながら「んじゃあな~」と立ち去るクラスメイトの背を見送った。
妄想、といってもその内容は必ずしもピンクがかったものではない。
授業中に黒ずくめの強盗が突然乱入してこないかな、とか。
教頭あたりが「日野君! すぐに帰りなさい! 君のお父さんが……!!」みたいな、なんか少年漫画でありそうな展開がおこらないかなぁ、という類の妄想がほとんどである。
そして《運悪く》その主人公が自分になってしまった。
仕方なく自分はこの授業から抜け出さなくてはいけない――なんて、とりとめのない妄想を繰り返し、現実逃避するのが少年の日常だった。
***
「誰もいない校舎っていいなぁ」
本館からすこしはなれた別館へ向かいながらぼやく。
昼時であるにもかかわらず、補習は午前中だけなので、普段にぎやかな校舎がいまはシンと静まりかえっている。
ここには自分以外誰もいない。
トリップだ。
トリップのフラグたってきた。
行くとしたらどこだ?
時代は?
日本か?
異世界か?
日本語通じるか?
考えながら一人うす気味悪く笑う。
普段のヒノキは無口だ。
余計なことは口に出さないし、顔にも出さない。
それは授業中などに遺憾なく発揮される。
意見は言わない。
手を挙げるなんて自殺するようなものだと思っている。
当然、教師とも眼を合わさない。
合いそうであれば、神業のような速さで逸らす。
おとなしく授業をうけて、人並みに人付き合いして、かえって妄想して寝る。
それがヒノキの普段。
リア充の皮をかぶっているようで全く隠せてない完全な隠伽キャオタクで、非社交的民族だ。
ちなみに家族も同族だ。
父は寡黙だし、母も近所づきあいがヘタで町内会の集まりを毎回どうやって断るか、最低3日は悩んでいる。
姉は、夢大好きっ子・自称夢巫女だ。
いつも「万が一、異世界にトリップしてしまったら」の対処法を真剣に考え、講義してくれる。
トリップしてしまった場合、まず自分は何ルートに進まなければいけないのかを一番にアセスメントしなければならないそうだ。
それによりその後の行動パターンも変わってくるらしい。そんな姉さんはその内、二次元の子供が出来たと騒ぎだしそうで怖い。
そんなことを考えていると、目的の生物化学室についた。
だが、当然のように扉は閉まっている。
「あ。しまった…」
鍵借りてくるの忘れた。
どうしても入るなら、いったん本館の職員室に戻り、鍵を借りてこなければならない。
だがヒノキはその行為が面倒になった。
忘れ物は筆箱。
しかし、よく考えたら明日の一限目は《化学》。
どうせ家で勉強もしないんだし、筆箱ぐらい明日早めにきてとればいいや、そう思ったのだ。
誰でも一度はありそうな話。
それが異質なものへと変わってしまった原因は、その後のヒノキの行動にあった。
ヒノキはなぜか、そのまま別館4階の男子トイレに入った。
理由は分からない。
今でも思い出せない。
特に排泄感に追われていた訳ではないし、正直トイレにいく必要性はなかった。
なのに、ヒノキは誘われるようにトイレに入っていった。
導かれるように小便器の前を素通りし、一番奥の個室に入る。
鍵を閉め、無意識にズボンを下げ、便座にすわった。
その瞬間、おしりにひんやりと、かつ、ぬめり気のある何かが触れた。
――何?
戸惑いから口を開いた瞬間、目の前にあの男性器に似た触手に口をふさがれた。
そして全身を拘束されて、制服をはぎとられ。
そこから先はよく覚えてない。
でも、体に植えつけられた快楽だけは身体が覚えていて、それからずっと、ヒノキはこのトイレに通っていた。
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