【完結・R18】婚活中に異世界転移したら俺様毒舌王子に粘着溺愛された話

星式香璃143

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【第二章】愚者王の恋

16.

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《そう、この姿でお会いするのは初めてでしたね――私は、創造新AⅠ》



 この世界の、神です。

 創造神――?!
 やっと問題がひと段落したと同時に現れた新たな登場人物。伊久磨は眩暈がしてきそうだった。


「ジェニは、お知り合いだったの?」
「……腐れ縁だ」


 ド迫力の美貌をもつ創造神に対し、ジェニは生ゴミを見るよりも嫌そうな顔で吐き捨てている。ジェニがここまで露骨に嫌悪するのも珍しい。
 

「あの、試練とは何でしょうか?」
《あぁ、そうでしたね》


 尋ねると、創造神は伊久磨に穏やかにほほ笑みつつも、ジェニに対しては少し意地の悪い金色の瞳を向け語りだす。


ハートのクイーンアルジーヌではなくなった貴方と、それを目の前にしたジェニの対応を注視させていただきました。どうでしたか、アルジーヌ?》

「どう、と言われましても……」


《あの男よりも、よほど、こちらのダノワ・アイリス・スパーダの方が、を大事に愛してくれるとは思いませんか?》


「え?」
「なッッ!!!」


 伊久磨と同時に声を上げたのは、まさに名をあげられたダノワ本人だ。
 ちなみに、ジェニはずっと口を真一文字に結んだまま、眼力で創造神を射殺しそうなほど睨んでいる。


《そうですね? ダノワよ。出会いが少し遅れただけで、本来ならこの王子よりも、よほど自分の方がアルジーヌにふさわしいと、そう思いませんか?》

「そ、それは、もちろん……」



「意味が分かりません」




 パラスを抱きしめつつも、神の言葉に顔を真っ赤にし、言葉を選ぶダノワ。しかし、そのダノワより先に口を開いたのは誰よりも険しい顔つきをした、伊久磨だった。


「創造神アイ様。貴方が僕をこちらに呼んだのではないのですか? 他ならぬ、《ジェニの伴侶キングの番》として」

《――えぇ、そうでしたね。ですが、私は貴方の悲しむ姿は見たくないのです》



 創造神が意味深に言葉を濁しつつ、再びジェニを見る。



《その男は、どうも貴方を縛りすぎる。赤子気に入りの所有物おもちゃのように――そのような器量の狭い男が、自由の象徴であるアルジーヌに本当にふさわしいのか……》


「愛宕様!」


 神の言葉に後押しされたように、ダノワが声を出す。


「我々騎士団は愛宕様に命を救われ、愛宕様がハートのクイーンとしてこの世界に来られたことを心から感謝し、崇拝しております!」

「……ありがとう?」


 話の流れ的に、伊久磨が疑問符を飛ばしながらも感謝の意を述べる。


「ですが、愛宕様がハートのクイーンでなくなっても、その美しさは変わりません。それは僕の心も一緒です」
「………………ありがとう?」


 ちょっと間をおいてみたが、やはり適当な言葉が見つからず。
 とりあえず先ほどと全く同じ感謝の意を繰り返してみたが、首は不自然に傾いたままだ。
 なんだか、雲行きが怪しいな?


「ですから、僭越ながら僕が愛宕様を守るために、日本へお付き添いしたいと思います」
「え? なんで?」

「僕は貴方に心を奪われました!」

「………どうも貴様は、《従者》としてキングに力を付与してもらった恩も忘れて殺されたいらしいな?」


 なぁ、ダノワ、とジェニがそれ以上喋れば残酷に処刑すると言わんばかりに、ダノワを見る。


「ジェニ第一王子殿下、僕は本気です」
「ほう……随分と饒舌な遺言だ」


 
 いいつつジェニが容赦なく黒革の手袋を取ろうとしたのを、伊久磨が「待て」と手で制止する。



「ダノワ君、君の気持は有難い。光栄だよ」
「……はい! 僕は愛宕様に、永遠の愛と命を捧げることを誓います!」



「――だけど、その誓いは受け取れない」

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