異世界修道院物語 –シスター狐っ娘、たおやかにKる-

狐囃子

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06 狐っ娘、フェンネルに改名する

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 しっかり眠って目を覚ましたが、肉体と精神に違和感がある。
 老衰や破損で身体を変えることはしばしばあったが、この身体は構成物質からして違うので違和感をぬぐい切れないようだ。匠の技を持つ御前による強化骨格へのチューンナップがされているのに調子が悪いのには理由があった。
 この身体は御前が住んで居た地球の女性のものなのだ。記憶に障害があるのは御前が制限を施した為らしく、個人情報は元より兵器や学術についての記憶を細かく検閲されている。
 ただ、早馬の真名がキャタピラ雪上車であることや、奥の院が鉄筋コンクリート製の一戸建てであることなど、地球の知識と照らし合わせるとチートを駆使して無茶苦茶していたことがわかってしまった。御前が今着ている服も普段の祭服ではなくグレーのスリーピーススーツだということまで。

「御前は文化の差で苦労なさっていたのでしょうね」
「まぁね。お前にも不自由をさせ続けてきたがようやくだ。ことが終わったら一緒にコンクリートジャングルで休暇を楽しもうじゃないか」
「500年ぶりの休暇ですか。目のクマの無い御前の雄型……もとい御姿を拝見しとうございます」
「狐、身体の色欲が漏れているよ」
「この身体の種族はジャパニーズメスガキ処女ビッチ女子大生と呼ばれるものだそうです。獣にも劣る悪女のようで精神が引きずられそうです」
「絶句だよ。頼むから自制してたおやかな修道女として頑張ってくれ。その身体は貰い物だから魂が入って動くのを初めて見たけど相当な悪女だったみたいだね」

 御前がチューンナップしたわけでは無いのだろうか?普段思いもしないような小さな違和感に気づく。
 違和感を拭うように、くるんと回ってしなを作ってみる。

「ところで名前はどうしましょうか」
「それなんだが君は今日から悲願達成の時まで特殊個体名フェル・ウラヴィン、通り名とシスター名はフェンネルとして活動しなさい」
「シスター名は良いとして特殊個体名とは何ですか?」
「種族名兼偽造戸籍名だよ。”狐”の亜種としても人名としても通用させる予定だ。ステータスを表示してごらん」
「え?まさかステータスが表示されるあれですか?この世界にもあるとは知りませんでしたが」

 って、言っているそばから現れた。ちょっと恥ずかしい。

--------------------------
・キャラ名:フェンネル(フェル・ウラヴィン)
・年齢    :20歳(獣年齢1歳・経過年齢500歳)
・性別    :女性
・身長    :5.57フィート
・体格    :格闘系
・来歴    :
 近衛騎士ウラヴィン家の改易に伴い正規ルートで全財産を寄付してパウエル修道会に入門。
 隠者志望の修道士として修道誓願を提出。
 カタリハカリナ修道院で類まれなる魔と戦う術を発揮したため、巡礼修道の一環としてゾイフ会長より期限付きのシダンシ修道院副院長を命じられた。
・LV    :3
・STR  :2
・DEX  :3
・INT   :3
・AGI   :3
・CON  :3
・HP    :2
・MP    :3
・能力名    :格闘、祈り、ゲッシュ、魅了魔法(失効)、念話、不死身、"獣に戻る"
・精神状態:正常
--------------------------

「ステータス魔法は機能制限していてね。この星で使えるのは俺と君だけだよ」
「数値が酷すぎませんか?」
「能力なら強化骨格で成し遂げたこの星この島の人型生物の中では最強レベルの値だよ」
「HP3って子供に殴られても死ぬ低さじゃありませんか?」
「ヒットポイントはそういう意味じゃないんだよ。3度致命傷を食らっても耐えることができるということさ」
「大きい数値で扱わないのですね」
「上司がいうには『精密なステータス魔法は世界のカロリーが高いからうちでは推奨していない』だってさ」
「しないだけでできるのですね……ゲームによくある数値ではないということですか。それならMPも3回魔法が使えるということでしょうか」
「そう。魔法……失効だと?」
「なんですか、それは?」
「あ、いや、気にしないで良い」

 例えばドワーフは接触魔術を持っているが日に1度しか使えない。星と地球の常識が重なってビッグバンが起きそうだ。私は今、宇宙の創生に立ち会っているのかもしれない。
 ところで私は魔法が使えるということも魅了魔法なる能力も初めて知ったのだけれど。御前に聞くべきなのだろうか。驚きを隠せていないようだが。

「状態異常も無し、と。至って正常……だね」

 御前の様子は明らかに変だ。
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