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第40話 厄介なパターン
しおりを挟むワタアメのおかげで魔力を感じることができるようになった私は、シグマと協力して「隠蔽魔法陣」を探していた。
シグマの腕の中で気配察知に集中する私であるが、認識のレーダーに引っかかるのは「小動物」くらいである。
ガウェイン達と別れてからすでに30分は経過しており、だんだんと森の調べていないエリアが小さくなっていくのであった。
「なかなか見つからないわね……」
本当に魔力探知で見つかるのかしらとシグマに聞くと「間違いなく魔法陣は見つかるはずだ」と言う。
かつての大戦時にも同様にして魔法陣をいくつも破ってきたという。
時代が変わったことによって魔法陣の技術が大幅に進歩している可能性もあるが、それでも魔法陣の仕組み的に考えて微量の魔力は出るはずだ。
なので、私たちが単純に魔法陣を見つけられていないだけである可能性が高いという。
「まあ、儂らの方になくともガウェイン達が発見している可能性もあるからのう」
集中するために目を閉じたままの私にシグマが答える。
私もガウェイン達が発見してくれていることを願ってやまなかった。
----
そろそろ戻らないと間に合わないということで、私たちはハサミのある待ち合わせ場所に戻ることになる。
道中も集中して気配察知を行っていたのだが、特に魔法陣らしき魔力を検知することはなかった。
「あっ!ハサミよ!」
私が指さす方向には例のハサミが突き立っていた。
そして、ハサミの足元には既に探索を終えたらしいガウェイン達の姿が見える。
そのまま彼らのもとへ合流した私とシグマとワタアメは、早速ガウェイン達に気になることを聞くのであった。
「ねえ、こっちは何も見つからなかったけどそっちはどうかしら?」
私は平静を装っているが、内心穏やかではなかった。
もし、この質問に対する返答がNOだった場合のことが怖いのである。
彼らが見つけていなかった場合、シグマが事前に言っていた「厄介なこと」になるということだからだ。
「お嬢様、俺たちも魔法陣は見つけられませんでした……」
そう言って肩をガクリと落とすガウェイン。
隣に座り込んでいるニャルラも「これはまずいニャ……」と青い顔をしていた。
たしかに彼女の言う通り、これはかなりまずい状況である。
魔法陣が見つからない以上、これでは前に進めないだけではなく「退路もふさがれている」わけだ。
「むう、どうするかのう……」
私を地面へと降ろしたシグマは、空いた両腕を組んでうんうん唸っていた。
膠着状態になってしまった以上、何らかの作戦を立てる必要があるのだが、現状何か打開策を挙げられそうなのは私しかいない。
なので、私は冷静にこの場を切り抜ける方法を考えなければならなかった。
私は一旦石の上に座って、ワタアメの頭を撫でて落ち着こうとした。
ゆっくりと彼女の魔力を感じながら、心を落ち着かせて頭の中を整理する。
そして、状況を声に出して再確認してみることにした。
「ねえ、なんで人狼の魔物は私を狙ってきたのかしら?」
私は魔法陣探しをする前の状況まで遡って考えてみることにした。
人狼の狙いは何かと言う私に対して、ガウェインは「魔王妃だからですかね?」と答える。
シグマやニャルラも「魔王妃は魔王軍に必須な存在だからな」と私が狙われる理由はそれしかないという。
彼らが言うには「魔王」と「魔王妃」が揃って初めて魔王軍として活動が行われるらしい。
これに関しては前にも少し聞いたが、魔物たちの生態的なものも絡んでいるので「そういうもの」だと認識するしかない。
「じゃあ、今のこの状況も「私を狙っているもの」と考えてもいいわけよね?」
隠蔽魔法陣で私たちを足止めしているこの状況も、私をなんとかして始末するためであると考えるわけだ。
もし、このまま魔法陣が見つからなくて探索が続くと考えたらどうだろうか。
魔物の気配が全くない今の森の中では、4人と1匹で手分けして探すという手法を取り始めるのも時間の問題だろう。
幸いなことに私も「気配察知」ができるようになったので、魔物に襲われるリスクも低くなったわけである。
そして、ここまで考えた私はあることに気づいた。
「分かったわ……」
現状の打開策を思いついたという私に、シグマ達は驚いたようにこちらを見る。
いったい魔法陣はどこにあるのだと興味津々で私の回答を待つ一同。
その様子を見た私は、他の魔物に聞かれないように近づいて小声で話すことにした。
「残念なことに魔法陣は動いているわ」
そう、動いているから探しても見つからなかったのよ。
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