幼女公爵令嬢、魔王城に連行される

けろ

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第35話 高まる緊張感

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 昨日までの無警戒な野営とは異なり、慎重に緊張感をもって準備を進めてく一行であった。
 テントを設置した後に火おこしをすることもなく、その代わりにニャルラが持ってきた「魔導ランタン」を石の上に置く。
 これは魔法陣を埋め込んだ照明器具であり、魔石を燃料として動くものだ。
 魔王城でもよく見かけた照明器具であり、これは屋敷なんかにあったものの「持ち運び用」である。

「少し暗いけど、これ以上明るくするのは危険ニャ」

 周囲数メートルがぼんやりと明るくなる程度の光を放つランタンを囲み、持ってきた保存食を食べることになる私たち。
 邪神教の魔物に襲われることを警戒しながら、手早く食事を済ませた私たちは就寝準備に入る。
 今夜の夜警はシグマ、ニャルラ、ガウェインの3人が交代で二人ずつ担当するらしい。
 二人で行うのは片方が眠りこけないようにという単純な理由もあるのだが、純粋に話し相手や夜闇のお供という意味合いもあるという。
 今回のような任務ではあまり気にならないが、超長期の任務では結構重要らしい。

「疲れている時に一人で闇の中にいると、いらぬ心配事が色々と浮かんでくるのだ」

 かつての大戦時代に、野営を数多く経験してきたシグマが語るのだからそうなのだろう。
 たしかに、夜の闇で一人悩んでいると大抵碌なことにならないのは私もよく経験している。

 シグマとガウェインが初めの番を務めることになったので、私とニャルラはテントの中へと入って寝ることにした。
 毎度のことだが、布団に入ってすぐに眠りにつけるニャルラはすごいなと思う。
 そんな彼女を横目に、私も腕の中で小さく震えるワタアメをぎゅっと抱きしめて目を閉じるのだった。


----


 シグマ達の夜警もあってか、私たちは特に邪神教の魔物に夜襲をかけられたりすることもなく翌朝を迎えた。
 寝起き眼で外に出た私は、なにやらシグマと話しているガウェインを見かける。

「おはよー、ごめんなさいね私だけ眠ってて」

 私とワタアメ以外の3人は警備のために小刻みに睡眠をとっていることになんだか申し訳ない気持ちになる。
 しかし、シグマ達は「魔王妃殿はゆっくり休んで頭を働かせるのが役割だ」と無問題といった様子で手をヒラヒラしていた。
 確かに合理的には彼らの言う通りなのだが、現状全く活躍の機会がない私は少し罪悪感を感じる。
 長期の作戦には魔物たちが言う「プライド」をはじめとする感情的な問題が付きまとうのだ。
 頭ではわかっていたが、私は現場で活動することで改めてそのことを深く認識する。

「ガウェイン、話の続きはまた後でするとしよう」

 昨夜の見張りの時からガウェインはシグマやニャルラに「気配察知」の技を教わっていたのだという。
 気配察知とは、生き物が体内に宿す「魔力」を感じ取ることで敵の現在地を知る「レーダー」のような技術であるらしい。
 シグマほどの達人になると、100m程度は魔物の存在を知覚できるという。
 中には知覚能力に秀でた魔物もおり、大戦時には半径1㎞程度を認識できるヤバい奴もいたらしい。

 私が起きたことで技術指導も一旦中断となり、軽く食事をとり移動の準備を始めた。
 ニャルラとガウェインが協力して手早く荷物をまとめ、シグマが私を担いで邪神教の調査を再開する。


----


 それから私たちは同じように野営を繰り返しながら、邪神教の廃城とやらのある場所を目指して進んでいった。
 数日間移動を重ねると、邪神教の魔物も遭遇する機会が多くなってくることに私も気づく。
 そのたびにガウェインだけではなく時々シグマ達も戦闘していたのだが、その時のシグマやニャルラの動きはガウェインとは一線を画す凄まじいものだった。
 私は成長したガウェインを見ながらも「やっぱりシグマ達は別格なのね」と改めて強さを認識する。
 しかし、シグマ達は「ガウェインもかなり強くなってきている」と高い評価を下していた。

「私にはいまいちその辺の微妙な感覚がわからないわね」

 戦闘経験も武術経験もない私には、「強さ」といった感覚的な尺度で測られる指標はいまいちピンと来ない。
 ただ、どちらのほうが強いのかという大小関係程度なら理解できる。
 というより、シグマとガウェインが戦ったらシグマの圧勝だということは素人目にわかるということであった。

「まただ、今度は少し強い魔物だな」

 そう言うや否や、戦闘態勢をとるシグマ。
 それを受けて、ガウェインやニャルラも緊張したオーラを醸し出す。

 邪神教の廃城とやらに近づくにつれて、現れる魔物たちはだんだんと強くなっていくのだった。


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