幼女公爵令嬢、魔王城に連行される

けろ

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第23話 魔王軍と邪神教

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 アドルに文字を習い、魔王軍の書庫で本を読み進めていく私とアリシア。
 とりあえず目についた「人魔大戦期の魔族の暮らし」から読み始めることにした。
 慣れた手つきで本を読み進めていく私を見たアドルは「やはり読むのも早いですね」とコメントする。
 新しく覚えた文字とは言っても、慣れてしまえば別段読むことに苦労はしないのである。
 ただ私の場合、慣れるまでの速度が尋常ではないだけだった。

「ん?これって……」

 静かで快適な書庫で本を読んでいた私は、流れてくる文章の中に気になるワードを発見した。
 その言葉とは、魔王とアドルが朝食の時に話していた「邪神教」という物騒な単語である。
 邪神教の内容が気になった私は、さらに文章を読み進めていく。
 すると、邪神教とは「約500年前に起きた大戦時の天敵」であるということが分かった。

「ねえ、さっき魔王とアドルが話してた邪神教についてなんだけど……」

 私がアドルに邪神教について尋ねると「邪神教について少しお話ししましょうか」と彼は言った。
 どこからか持ち込んでいた書類のチェックを一時中断した彼は、私とアリシアに魔族の世界情勢について語りだす。

 彼曰く、邪神教とは魔王軍のような「魔族の集団」であるという。
 ただ、平和を求める魔王軍とは異なり、邪神教は「破壊と再生」を至上命題にしているとのことだった。
 すなわち、彼らは「敵となるモノをすべて破壊し、邪神教の考える理想の世界を作ろう」としているとのことである。
 ここまで彼の話を聞いた私は「なんて排他的で過激な集団なんだ……」と困惑した。

 邪神教は今から約500年前の大戦で先代の魔王軍と人間の勇者率いる「連合軍」にやられたという話だった。
 邪神教の魔物の中には「破壊活動」が楽しいという理由だけで無差別に暴れまわる連中もいたらしい。
 つまり、平和を第一目標とする魔王軍とは水と油なわけである。

「では、邪神教が復活したとおっしゃってたのは……」

 アドルの話を聞いたアリシアが緊張した表情で問いかける。
 彼女が声が書庫に響いた後、無言でアドルがうなずいた。
 そして、それに続けてアドルは喋りだす。

「ええ、真偽のほどは未だ明確ではありませんが……」

 できれば嘘であってほしいと願うアドルの顔からは、この問題の深刻さが伺えた。
 なんだか時代の節目が訪れそうな話を聞きながら、私はひとつ疑問に思ったことがある。
 「邪神教」が復活したという言葉的に考えて、最近までは「邪神教」は存在していなかったのかという疑問であった。
 これについてはアリシアも同様に気になっていたらしい。

「いえ、正確には邪神教の教祖「フェイリス」の封印が解かれたということになります」

 疑問に対する答えとして、アドルの口から新しいワードが飛び出る。
 彼らの言う邪神教の復活とは、邪神教の教祖「フェイリス」という魔物が再び世に解き放たれたということであった。
 実際、教祖フェイリスがいない間は小さな破壊活動はあったらしいが、目立った暴走行為は見られなかったらしい。
 なので、平和を望む魔王軍としても調査はしつつも関わろうとはしてこなかったという。
 だが、ここにきて事情が変わってきたというわけである。

「訓練のないタイミングで第3部隊をはじめとした斥候部隊などを使役して調査を進めているのですが……」

 ビッケ達第3部隊を派遣して情報を集めている最中ではあるらしいのだが、過去の大戦経験者が隊長しかいない第3部隊ではなかなか踏み込んだ情報が入ってこないという。
 かといって第2部隊は戦闘部隊だし、そもそもこちらも部隊長しか大戦経験者はいないらしい。
 大戦経験者は既に多くが他界しており、なかなか人材が調査に充てられないという。

「ねえ、なんで大戦経験者じゃないといけないのかしら?」

 確かに諜報活動は高度なスキルと戦闘力が必要な行為であることはわかるのだが、どうして「人魔大戦経験者」に限って人材を探しているのかがわからなかった。
 アリシアもそのことは気になったらしく「それほどまでに邪神教の魔物は凶悪で恐ろしいのですか?」と不安そうに言う。
 しかし、それに対して「いえ、そういうわけではありません」とアドルから帰ってきた返答は思いもよらないものであった。
 確かに、一部の魔物はとんでもなく強いらしいのだが、それは魔王軍とて同じであるという。
 では、いったい何が理由なんだろうか。

「実は、大戦経験者程度に邪神教の実情を知っているものでないと務まらないのです」

 それに加えて「魔物たちは頭が悪すぎて……」と零しながら頭を抱えるアドル。
 彼の悩ましい本音のようなものを聞いた私とアリシアは「あっ……」と完全に状況を察したのだった。


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