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第14話 魔王城内の見学
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オークの料理長オーキンスが私に弟子入りした後、アドルの提案により「魔王城の施設見学会」を行うことになった。
そういうわけで、オーキンス達とは一旦分かれて、私たち3人とアドルは厨房を後にする。
魔王城の無尽蔵にも思える広さの廊下を歩く私は、壁際にある窓から外を見ていた。
「あれは第2練兵所です」と私の視線の先を見ながら答えるアドル。
目の前に広がる広大なグラウンドのような場所には、大小さまざまな魔物達が鎧のようなものを着て動いていた。
流石は魔王軍といったところか、戦闘訓練の練度が人間達とは違って見える。
というより、訓練でもあんなに激しくぶつかり合ってたらいつか死人が出るだろと私は思うのだった。
「あんなに激しく訓練してるけど、近々戦争でもあるわけ?」
私が「もしかして魔王軍って戦時中?」とアドルに聞くと、アドルは「そんなことはないですよ」と答えた。
廊下を歩きながら話すアドルと私の後ろでは、騎士であるガウェインが「訓練……」と窓の外を眩しそうに見ている。
普段はガウェインも、私の子守り以外にエルメリア王国軍の兵士として訓練をこなしていたことを思い出す。
そこで私はふと思いつき、アドルに訓練について尋ねた。
「ねえ、あの訓練ってガウェインも参加できるの?」
私の質問に対してアドルは「もちろんできますよ」と答える。
背後からは「お嬢様!ガウェイン君が死んでしまいます!!」とアリシアが騒いでいるが、当の本人は「やりたいです!お嬢様!」とやる気満々であった。
私としても、ガウェインには私を守れる程度の強さを手に入れてほしいと思う。
ガウェインも騎士としては優秀な方だが、流石に今のままでは暴力の権化みたいな魔物たちに歯が立たないだろう。
なので、多少死にそうになったとしても強くなってもらわないと困るのだ。
それに、あんなにヤバイ戦闘力の連中をのちのち家臣として扱わなけらばならなくなることを考えるとガウェインの強化は急務である。
人間の騎士が魔物に侮られてはいけないのだ。
それは、すなわち人間である「魔王妃」の軽視へとつながるはずであるから。
「それじゃあ、早速参加してみる?」
ガウェインも乗り気だったので、私はアドルに訓練当日参加の申し込みを打診してみると「ガウェイン殿なら第3部隊から参加するのがいいでしょう」と返答をもらう。
昨晩すれ違った白い犬の「ビッケ」が所属する部隊であるという。
第1、第2、第3と強さが変わる魔王軍の仕組み的に、一番弱い「第3部隊」の訓練から参加するのがいいでしょうということだった。
私やアリシアも「あのワンちゃんでも生きてるなら大丈夫ね」となんだか安心する。
「では、ガウェイン殿は訓練に向かっていただきましょうか」
アドルはその辺を歩いていたメイドを捕まえて、ガウェインを第3部隊の練兵所へ向かわせた。
魔王妃様の護衛は魔王城ならば必要ないから、心配せずに訓練してきなさいと言うアドル。
まあ、さっきの「第2部隊」の訓練を見る限り、確かにガウェインが一人いたところで即死級のダメージを受けたら問答無用で死ぬ気がする。
それに立場上アドルはおそらく魔王の次くらいに強いはずなので、それに守られている私は城内で一番安全であるはずだ。
スタイルが良く、顔も可愛い狸のメイドさんに連れていかれるガウェインを見送りながら歩く一行。
遠ざかる彼の背中を見つめながら、心の中で「さすがにビッケには勝てるでしょ?」と自らの家臣を信頼する私であった。
そのあとも、アドルに案内されるように廊下からつながる超巨大な倉庫の前を私たちは通る。
「ここが魔王城の倉庫でございます」
そこは、前世でいう某通販サイトの「配送センター」のような圧倒的な広さを持つ空間であった。
謁見の間や食堂もえらい広かったが、ここはそれらと比べても巨大である。
入り口に立つ倉庫番の魔物たちに挨拶すると「魔王妃様もいつでも来てくださいね」と好意的な印象を受けた。
アドルからも「倉庫にはいろんなものがあるので、何か必要に感じたものがあれば自由に申し出てください」と言われる。
倉庫には、他の魔物たちや魔王様も時々やってきてあれこれと注文していくらしい。
それを聞いて私は「魔王城の連中って結構フリーダムね」と思うのだった。
それからデカすぎる倉庫を後にした私たちは、いよいよ城の入り口へとやってきた。
マトリョシカの様に様々なサイズの扉が併設された「巨大な城門」の手前に滅茶苦茶に広いホールがある。
というか、天井も吹き抜けになっていて空も見えるため、そこはほぼ屋外であった。
「それでは街を見てまいりましょうか」
アドルの言葉を合図に、軍部や政治経済部の詰所がある城を一旦出た私たち。
ここからは、魔物たちが実際に暮らしている居住スペースの見学を開始することになった。
そういうわけで、オーキンス達とは一旦分かれて、私たち3人とアドルは厨房を後にする。
魔王城の無尽蔵にも思える広さの廊下を歩く私は、壁際にある窓から外を見ていた。
「あれは第2練兵所です」と私の視線の先を見ながら答えるアドル。
目の前に広がる広大なグラウンドのような場所には、大小さまざまな魔物達が鎧のようなものを着て動いていた。
流石は魔王軍といったところか、戦闘訓練の練度が人間達とは違って見える。
というより、訓練でもあんなに激しくぶつかり合ってたらいつか死人が出るだろと私は思うのだった。
「あんなに激しく訓練してるけど、近々戦争でもあるわけ?」
私が「もしかして魔王軍って戦時中?」とアドルに聞くと、アドルは「そんなことはないですよ」と答えた。
廊下を歩きながら話すアドルと私の後ろでは、騎士であるガウェインが「訓練……」と窓の外を眩しそうに見ている。
普段はガウェインも、私の子守り以外にエルメリア王国軍の兵士として訓練をこなしていたことを思い出す。
そこで私はふと思いつき、アドルに訓練について尋ねた。
「ねえ、あの訓練ってガウェインも参加できるの?」
私の質問に対してアドルは「もちろんできますよ」と答える。
背後からは「お嬢様!ガウェイン君が死んでしまいます!!」とアリシアが騒いでいるが、当の本人は「やりたいです!お嬢様!」とやる気満々であった。
私としても、ガウェインには私を守れる程度の強さを手に入れてほしいと思う。
ガウェインも騎士としては優秀な方だが、流石に今のままでは暴力の権化みたいな魔物たちに歯が立たないだろう。
なので、多少死にそうになったとしても強くなってもらわないと困るのだ。
それに、あんなにヤバイ戦闘力の連中をのちのち家臣として扱わなけらばならなくなることを考えるとガウェインの強化は急務である。
人間の騎士が魔物に侮られてはいけないのだ。
それは、すなわち人間である「魔王妃」の軽視へとつながるはずであるから。
「それじゃあ、早速参加してみる?」
ガウェインも乗り気だったので、私はアドルに訓練当日参加の申し込みを打診してみると「ガウェイン殿なら第3部隊から参加するのがいいでしょう」と返答をもらう。
昨晩すれ違った白い犬の「ビッケ」が所属する部隊であるという。
第1、第2、第3と強さが変わる魔王軍の仕組み的に、一番弱い「第3部隊」の訓練から参加するのがいいでしょうということだった。
私やアリシアも「あのワンちゃんでも生きてるなら大丈夫ね」となんだか安心する。
「では、ガウェイン殿は訓練に向かっていただきましょうか」
アドルはその辺を歩いていたメイドを捕まえて、ガウェインを第3部隊の練兵所へ向かわせた。
魔王妃様の護衛は魔王城ならば必要ないから、心配せずに訓練してきなさいと言うアドル。
まあ、さっきの「第2部隊」の訓練を見る限り、確かにガウェインが一人いたところで即死級のダメージを受けたら問答無用で死ぬ気がする。
それに立場上アドルはおそらく魔王の次くらいに強いはずなので、それに守られている私は城内で一番安全であるはずだ。
スタイルが良く、顔も可愛い狸のメイドさんに連れていかれるガウェインを見送りながら歩く一行。
遠ざかる彼の背中を見つめながら、心の中で「さすがにビッケには勝てるでしょ?」と自らの家臣を信頼する私であった。
そのあとも、アドルに案内されるように廊下からつながる超巨大な倉庫の前を私たちは通る。
「ここが魔王城の倉庫でございます」
そこは、前世でいう某通販サイトの「配送センター」のような圧倒的な広さを持つ空間であった。
謁見の間や食堂もえらい広かったが、ここはそれらと比べても巨大である。
入り口に立つ倉庫番の魔物たちに挨拶すると「魔王妃様もいつでも来てくださいね」と好意的な印象を受けた。
アドルからも「倉庫にはいろんなものがあるので、何か必要に感じたものがあれば自由に申し出てください」と言われる。
倉庫には、他の魔物たちや魔王様も時々やってきてあれこれと注文していくらしい。
それを聞いて私は「魔王城の連中って結構フリーダムね」と思うのだった。
それからデカすぎる倉庫を後にした私たちは、いよいよ城の入り口へとやってきた。
マトリョシカの様に様々なサイズの扉が併設された「巨大な城門」の手前に滅茶苦茶に広いホールがある。
というか、天井も吹き抜けになっていて空も見えるため、そこはほぼ屋外であった。
「それでは街を見てまいりましょうか」
アドルの言葉を合図に、軍部や政治経済部の詰所がある城を一旦出た私たち。
ここからは、魔物たちが実際に暮らしている居住スペースの見学を開始することになった。
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