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314.御守
しおりを挟む(ジャニスの手からいつも感じていた温もりは、こんなにも煌びやかな光を帯びていたのね)
彼女は身体中の血液がじわっと全身に巡るのを感じそれは足から指先、耳や唇までにも伝わっていきその熱がドクドクと、心臓の奥へと進んでゆく。
生まれてからの十六年間、一度も感じ見ることが出来なかった周囲の魔力。それが突如、力を覚醒させたアメジストは「自分は世の中のために今後何が出来るだろう」と心の中で、思案していた。
そしてアメジストの心は急に、切ない気持ちになる。
(私はこれからもずっと、このまま“御嬢様”と呼ばれる存在なのかな?)
ズキっ。
「――ッ!?」
思わず自分の胸に手を当てた彼女。それは痛みにも似た、感覚だった。
「うーぅう~♪ お兄様からのお願いごとぉ~!! 嬉しいですのぉ」
「ん? 嬉しい……それはクォーツ、表現が合っているのかどうか、ちょっと私も――」
そんな時に聞こえてきたのは元気いっぱい小鳥のように心地良く高い声の可愛い妹、謎多き“レヴシャルメ種族”の血が流れるクォーツである。それに答える優しく潤んだ美声はいつだって彼女を安心させてくれる、ジャニスティだ。
「んなふ? どぉしてですのぉ、お兄様? うれしいで良いですのぁ」
「そう……うーん。そうだろうか」
(もうすっかり、兄妹ね)
この時、復元の際に自然と吸収したジャニスティの血がクォーツの中で騒ぐのか? 幼いながらも使命感に溢れる表情は『自分が頼りにされている』と喜びを感じ、両手を広げる。
その様子をジャニスティは困惑した表情で、見つめていた。なぜならクォーツの『嬉しい』を純粋に受け止めることの出来ない理由があり少し、複雑な心境であったからだ。
「お兄様ってぇ! わたし、ちゃんと頑張れるです!」
「あぁ、はは……そうだな。分かっているよ」
恐らく困難な状況に陥れば発揮されるであろうまだ見ぬクォーツの、力。それは謎多きレヴシャルメ種族が持つ魔力のことだが実際、どのような能力とどれだけの強さがあるものなのか?
もちろん彼自身、知る由もない。
だがあのレヴ一族が住む屋敷が襲われた事件を思えばレヴシャルメとは攻撃性の低い種族ではないかと推測し、考えていた。
その結論に至った彼がクォーツへとかけた魔法『ディファ―ンドル』には『守り・防衛・助ける』との効果がある。
自分でも身を護れるようにクォーツ自身が、“お守り”となれるようにと。そんな彼の思いから創られた特殊な、庇護魔法であった。
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