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199.商人
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「どういうことかね? 私は君に此処での出店を許可した覚えはないが」
仕入先との打ち合わせを何事もなく平穏に終えたオニキスは息つく間もなく、服飾の祭典が予定されている街の中央――開催場所へと向かい早めに、到着した。
屋敷を出る前にエデから報告を受けていた通りすでに催しの一部は開始され予定の区域外でも、広範囲に洋服店や宝飾品等の店が並ぶ。
そして予想だにしない出来事が――その中でもひと際目立つ人物が、オニキスの怒りを買っていた。
「おぉー! これはこれは!! 聞いていた時間よりも、お早い到着で驚きましたが、いやぁっははは……嬉しいですねぇ。また、お会いできて光栄です! オ~ニキ~スさん!!」
無礼極まりなく「先程ぶりですけどねぇ」と、ペラペラ調子よく話す――その人物とは。
「社交辞令は必要ない、カオメド君。質問に答えてくれればよい」
「やだなぁ~そんな怖い顔しないで下さいよ、オニキ……」
「カオメド様、無礼にも程があります。我が当主に――」
冷静さは失わず紳士的に問い質すオニキスに目も合わせず、ふふんと鼻を鳴らし笑いながら話すカオメドの挙動はあまりにも、不審だった。
それを見て聞いていたフォルも、黙ってはいない。
彼の言葉を遮るように鋭い目で忠告をすると同時に商談の時から監視していたカオメドへ対して、わずかずつ込み上げ抱かれていった不信感は時間と共に増幅するばかりである。
――何があろうと、主を護る。
そのまるで敵を斬るようなフォルの視線にはベルメルシア家を……オニキスとベリルを思う心が、込められていた。
「おぉ、僕としたことが舞い上がってしまい、大変失礼致しました。それでえーっと……僕に、何をお聞きになりたいと?」
「君は何を……はぁ……よいか、カオメド=オグディア。君へ今一度、問う。一体どういうつもりで、この街で行う大事な祭典に、許可なく店を出しているのか? そう、私は聞いている」
誰に対しても余裕を見せ爽やかに話すオニキスは温厚な性格と有名だが今回ばかりは深く溜息をつきながら、眉根を寄せる。
『誰だい? あの派手な商人は』
『確かに見たことないな』
『ベルメルシア様と、何か揉めているみたいだ』
『てっきり特別な商人かと』
コソコソと話す声が所々から、聞こえ始める。
祭典準備をする街の者たちはこれまで見たことのないような冷たいオニキスの表情に驚き、聞いたことのない圧力をも感じる低い声色が重い空気と、緊張感を生んでいた。
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