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177.数字

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(せっかく楽しそうなところ、可哀そうだが)

「さて」
「んーぅなあぁ……キュぅー」
「ん? はは。それは面白い反応だな、クォーツ」

 安心し、信頼しきっているクォーツが話す、レヴ族の言語。その言葉が表す意味はもちろんジャニスティには、理解出来ない。が、しかし――血の繋がりはなくとも魔力で繋がっている“兄妹”。そよ風のように一瞬一瞬で変化する妹の表情が今、何を言いたいのか? やはり不思議と手に取るように解り始めていた。

――そう、ジャニスティとクォーツ。二人の間に多くの言葉は必要ないのだ。

 しかしあまり時間に余裕のないジャニスティはお姫様抱っこでキャッキャと喜んでいる妹をゆっくりと、絨毯じゅうたん床に下ろす。その彼自身は片膝をつき目線をクォーツに、合わせた。

「うぅに~? お兄様ぁ」
 少しだけ頬をぷくっと膨らませむくれた顔のクォーツを見てジャニスティはフッと笑い頭を撫でながら少しだけ、質問を始めた。

「クォーツ、今起きたのか?」
「んー、ん~? えっと、あのテーブルに――」

 どうやら時計の見方を知らないクォーツは窓から射し込む太陽の光具合で、時刻を伝えようとする。それに気付いたジャニスティは胸ポケットから懐中時計を取り出すと、針を指差す。

「ほら、これを見てごらん」
「わぁ、綺麗ですわ! あと何か、動いているの……」

 よく磨かれた美しいガラスの内側で時を刻む、細い針。それをじっと眺め真剣な表情で考えた後、兄ジャニスティの顔へと視線を移す。

「これは、時計というんだ」
「“とけい”……あっ! あそこにもありますの!!」

 クォーツはふと、同じようなものが壁にも掛かっていたことを思い出しその方へ身体を向け、指を差す。その「見つけた!」と、はしゃぎ嬉しそうに満面の笑みを浮かべるクォーツの可愛い仕草にまた、彼も微笑む。

 それから頷いたジャニスティは続けて、話し始めた。

「そうだ。あれも時計。時間の流れを読むためにある。それで、クォーツ。起きた時、あの壁にある時計を見たかな? どんな風になっていたか、覚えているかい?」

 そう言うと再び手元の懐中時計を見せ中の針がどう向いていたかを、聞く。

「うーんと、これが“Ⅶ”で、これは“Ⅹ”と“ⅩⅠ”のここにあってぇ」

 昨日ジャニスティは必要最低限の教育をする為、クォーツが発するレヴ族の言語を聞いては人族の言葉との擦り合わせをしていた。その際にレヴ族と人族における“数字”の認識が共通していると、判ったのである。
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