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124.発覚 *
しおりを挟む「あの香り……」
スピナはボソッと呟き、話し始める。
それはノワがジャニスティの部屋を監視するきっかけとなった、朝。
楽しそうに和み過ごしているアメジストを目撃した、後のこと。
「私もねぇ、色々と用事があって。そうそう、ジャニスティが苦しんでいるんじゃないかって心配で心配で……なぁんてねぇ、ぷっははは!!」
「……」
片膝を地につけお辞儀の姿勢を崩さないノワは下を向き、微動だにせず黙って話を聞く。ほんの少し前に一瞬ギラリと光を放った赤黒い眼はすぐに人形のような瞳孔へ、戻っていた。
「部屋の前に行ったのよ? この気高きスピナ様の“血”でも分けてやろうと思って。それなのにあいつは――」
「血……でございますか」
その単語に反応したノワに「あぁ~そうだったわね」と言い、ジャニスティが血塗られたサンヴァル族だという、補足をする。
「うっふふ~知らないわよねぇ? だってあいつの身の上は、内緒の話ですもの。オニキスが……あらっ、失礼。だーんーなーさまがぁ、突然連れてきた、どこぞの素性の知れない男なのよ」
「……」
秘密ばらしちゃったぁわ~と話す、スピナの顔を見る素振りもなくノワは変わらず下を向いたままで、聞いていた。
「サンヴァル族って、高い魔力を持っているのよ。だから未熟な奴は暴走しちゃうらしくて。これは私の推測なんだけれど、あいつは何かやらかしたんじゃないかしらねぇ」
「……力の暴走」
一言だけポツリと呟いたノワは少しだけ顔を上げスピナの目を、見つめる。
――まるで霞がかったガラスのような、眼で。
「んふふ……その顔、素敵よ。無理もないわよ~さすがのノワちゃんでも、驚くわよね、ねっ? だって、何か問題でも起こしてなきゃ――そうでなければあの“終幕村”になんか、いるわけがないじゃない?」
「終幕……ですか」
いつもは冷酷そのものなノワの変化が楽しくて仕方がないとスピナは面白可笑しく話し大きな声で、嘲笑う。
「あぁ話が逸れたわね。そのジャニスティに門前払いされちゃって」
「……」
「そう、やはりいたのねぇ? アメジスト」
(そして、まさか! あの部屋にレヴシャルメがいたなんてね)
「ははっん。妹なわけないじゃない」
(ノワの話が本当であれば、種族が違い過ぎるのよ)
「だぁって、レヴは天使じゃない?」
「はい、仰る通りです」
そしてスピナの顔からはフッと笑みが消えいつもの冷たい視線で、言った。
「甘く、あまぁ~い――ベルメ苺の。嫌な匂いだったわ」
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