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117.印象

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「お、奥様!?」

 急なことに驚き慌てふためくお手伝いをよそにスピナは、話し始めた。
「可愛い~可愛い~アメジストと、仲良しこよしのお前たち……いいかい? お茶会は三日後ですからねぇ、フフッ」

 扉を少しだけ開き先程とは似ても似つかない、同じ者とは思えぬ表情のスピナはニヤリと笑う顔だけ覗かせ、嫌味のある言葉を残す。そして最後に「よろしく~」と言いながらまたゆっくりと、去って行った。

 キィー……パタン。

 部屋に残された皆は呆然と、立ち尽くす。
 そんな中で足音が聞こえなくなるのを待っていたかのように一人のお手伝いが突然、口を開いた。

「大変よ、大変だわ! これからたった二日で準備だなんて……」

 その言葉にハッとした他の者たちも次々に発言を始める。

「そうよ! これから招待状を作成してお送りしなくてはいけないのよ」
「ど、どうしよう。間に合うかしら」
「間に合うかしら……じゃないわ」

――間に合わせないと、後でどうなるか!

 傍にいるアメジストはその様子を苦悶とも取れる表情で、聞いていた。

「私には……出来ることはないのかしら」
 ボソッと嘆き呟く、悲しい声。

 それは自分がまだ子供であるという現実を、受け入れてのこと。

 本当は皆のため継母スピナへ抗議をしたい。しかしどんなに意見や考えがあったとしてもスピナを納得させる力が今の自分には不足していると、分かっていた。

「お嬢様、大丈夫です。本日から私も皆の手伝いを――何とかいたします」

 アメジストの心を理解しているジャニスティは彼女が安心できるよう優しく穏やかな声で話すと、動揺した部屋にいる者たちへ聞こえるように「自分がいるから、大丈夫だ」と、言葉を発する。

 ざわざわ――!!!!

「あ、あの、ジャニスティ様が!?」
「我々の為に……そう仰るのですか!」

 皆が驚くのも無理はなかった。
 ジャニスティはこの屋敷内で“アメジストお嬢様専属のお世話係”としか皆、考えたことがなかった。そしてジャニスティ自身も他に干渉したことなど、一度たりともなかったからだ。

「ジャニス、あの……」

 まだ少し不安気な様子のアメジストは小さな声で、話しかける。するとジャニスティは微笑みながら頭を撫で、応えた。

「お嬢様には、他にやるべきことがあります」
「私の、やるべきこと?」

 私も何か手伝いを、と言いかけたアメジストにジャニスティは目を合わせ正面から向き合うと真剣な眼差しで「貴女あなた様にしか出来ないことです」と、伝えるのであった。
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