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106.心誓

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――「今に……見てなさいよ」

 小さく呟いたスピナの言葉、それが何を意味するのか? ジャニスティが理解するのにそう、時間はかからなかった。直感的に彼の思考には“仕返しをする”という文字が、ぎる。

この人奥様は一体、何をしようとしているんだ?)
 険しい表情でスピナを注視するジャニスティは二人――アメジストとクォーツの将来を守っていくため今後どう行動すべきかを頭の中で、模索する。

――お嬢様に助けていただいた、この命。
(家族とまで言って下さった貴女様にとって、私の存在が不必要となる――その日まで……)

 そしてジャニスティの視線は自然と窓際へと、向いた。
「陽の光がよくお似合いだ。二人の穏やかな時間を……」

 手を取り幸せそうに笑い合うアメジストとクォーツを見つめ、心に誓う。

――この命に代えても、必ずお守りします。

 カッカッカッ……ギィーガタンッ!!
「ま~だ、なのかしらねぇ?」

 椅子を引く音を大きく立てテーブルに着いたスピナは急ぐお手伝いたちへ強い言葉を浴びせさらに、重圧をかける。

「も、申し訳ございません! 奥様、只今――」
「お茶くらい早く持ってきて! さっさとなさいよ!!」

 当主への態度を改めるよう執事のフォルに言われたことがよほど悔しかったのか? 怒りが収まらない様子のスピナは座ったまま腕を組み鼻先をツンと上にさせたまま、話していた。

 その様子に深く溜息をついたオニキスはアメジストとクォーツの背中に手を当てテーブルへ向かい、席に着くよう促す。

「さて、そろそろ食事にしよう」

「えっとぉ……」
 “食事”という単語は何だったかなと思い出せない様子のクォーツに微笑みながらアメジストが、耳打ちをする。

「(クォーツ、美味しいの)」

「あ、あー! わぁ~い、ごはん? ですのね?!」

「はっはは、そうだ。ご飯だよ」
 満面の笑みでクォーツの頭を撫でるオニキスはやはり、とてもご機嫌である。

 この瞬間スピナの“独り言”を聞いていたのは、ジャニスティのみ。少しニヤリと笑う彼女が良からぬ考えを持っていることにオニキスはまだ、気付いていなかった。



 ベルメルシア家の屋敷でアメジストがよく関わるお手伝いたちは今、食事の部屋にほぼ集まっている。その者たちに向けてのクォーツの紹介(ジャニスティの妹として)は予定通りの展開となった。
 皆の驚きと戸惑いは予想された事であったがオニキスの助力もあり無事にクォーツは“お嬢様”として認められ、事なきを得たのである。
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