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33.理解

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 その表情に思わず見惚れ、見つめてしまいそうになったジャニスティは静かに、視線を外す。一瞬自分の瞳に映った彼女の顔はとても楽しそうで、嬉しそうに――幸せそうにしていた。

「うふふ……もぉ~さっきから、クォーツったらジャニスの背中からピョコピョコってお顔を出すのよ! 可愛いくて笑っちゃった。そう、まるで二人は親子みたいに見えるわ」

 アメジストが笑いながらの突拍子もない想像力に困惑するジャニスティは「ご冗談が過ぎます」と言いながら首から背中にかけて巻きつくクォーツをふわっと抱き上げ、肩に乗せる。

「アメジスト様、親子とは。それはいけません。私のような血の種族と一緒にされては、レヴ族の者たちもきっと迷惑ですよ」

 彼女には、全く悪気はなかった。

 これまでも彼の種族への固執した考えが、アメジストの思いや考えが合わず話が終わる時もあった。

 そのジャニスティが持つ種族への考え方がどうしても理解出来ない事もあった。だからだろうか? こういった種族の説明等、今までほとんど話さなかった。

 アメジストが理解できない理由。

 それは此処へ来るまでにジャニスティがどのような場所で生まれ過ごし、何処で暮らし生きてきたのかを彼女は知らなかったからである。しかしもちろん彼女が自分の考えを押し付けたことは、ただの一度もない。

 そのアメジスト自身は『種族も地位も関係ない』という、強い考えと意志を持っている。

――この思いは、譲れない。何と言われようと皆、一緒だから。

 アメジストは自分の気持ちを確かめるように、心の中で呟く。

 そしてその上で「それぞれに皆、様々な生き方や理由があるというのに」と浮かれて気が回らずに軽々しく“親子”などと例えてしまった未熟な自分の発言を後悔し、彼に謝罪した。

「そう……なのね。ごめんなさい、ジャニス」
「いえ、お嬢様。どうか謝らないで下さい。ただ……」

 言いかけてふとジャニスティは、壁に掛けてある時計の針に目をやる。
(そうだ、私は。一体どのくらいの時間、眠っていたのだろうか)

 確認した現在の時刻は午前十時前。

「さぁ、お嬢様。急に色々とあってお疲れでしょう。落ち着ける紅茶を入れますね」

 そろそろ彼女を自分の部屋へ帰さなくては昼食の時間に間に合わなくなる。そうなると部屋にいない彼女は探され大変な事になるのは、目に見えていた。

「え、えぇ。ありがとう」

『お嬢様のお護り役、ジャニスティ』に気持ちを入れ替え、調子を立て直した。
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