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20.魔水

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 眠るジャニスティの横で手を握ったまま、心配そうに見つめるアメジストの視界に映るもの。それは綺麗な硝子の深皿に入った水。

(あっ、これって私が準備したお水かしら?)
「色が、黒くなっているわ」

――透明だったはずなのに。

 指示されたキャビネットに置かれていた瓶。その中に入っていた水が普通ではない事は察しがついていた。それには何らかの魔法がかけられているのであろうと、感じていたのだ。

「う……ぅ」
「ジャニス?! 分かるかしら」

 すると眠っていたジャニスティがゆっくりと瞼を開ける。周りの風景が見えるぐらいにはっきりと、その美しい瞳に光が沁み込んだ。

「ア……メジス……ト……さ、ま?」
「そう、そうよ! 私です、ジャニスしっかりして」

 その声にジャニスティの精神は現実の世界へと引き戻された。しかし話すのはとても苦しそうである。

「なぜ……此処、に」

 ドキッ――。

 アメジストは部屋に近づいてはいけないと言われていた事を思い出し、慌てて説明をし始めた。

「ごめんなさい、ジャニス。私どうしても二人が心配で、お部屋の近くまで来てしまったの。そしたらこの子と通路で出会って……思わず一緒に部屋へ」
「フッ――そう、ですか。この子と……あり、がとうござぃ……」

 約束を破ってしまった事を謝りつつ話をするアメジスト。その素直すぎる彼女の話にジャニスティは、少しだけ笑い答えた。言葉は途切れ途切れだがレヴの子と一緒にいてくれた事に、彼はお礼を伝えていた。

「ごめんなさい」
「ぃぇ、いい……のです」

 静かな部屋に響く二人の声は優しさと温もりが溢れている。そんな中、アメジストはどうしても気になった水の事を聞くため、口を開いた。

「ジャニス、この深皿のお水の事なのだけれど。どうしてこのような色になってしまったの? もし、あなたが元気を取り戻すために必要だというのであれば私、何でもお手伝いするわ」

 アメジストはそう言いながら頬を赤らめた。ジャニスティを助けたい気持ちで心がいっぱいになったからだ。昨夜から今も、こんなに自分の思いを主張した事はなかったと、彼女自身驚いていた。

 するとゆっくりと、彼の口から返事が返ってくる。

「その、水……は私の魔力が、そして黒い色は、私の血……です」

――黒の血?! 復元に必要だった?

(どういう事なの)
「ジャニスがこんな事になって、私は悲しいのよ」

「ひ、とつ……伝え……」
 ジャニスティは体力の戻らぬ辛い中で、話を切り出した。
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