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24.発動、第二のゴ●スキル②

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「……シズク!! シズクや!!」

 どれだけ時間が経ったのだろう。

 耳元で響くドリンの叫声で、シズクははっと我に返った。

「ほら、シズ姉!! 水だよ――」
「ツク……リ? うん、ありがと」

 額についた玉の汗を袖でぐいっと拭い、大きく息を吐いてからシズクは、竹のような植物を節と節とで切っただけの水筒を、ツクリの手から受け取った。

「冷たい! この水、硬水だね。美味しい――」
「ミネラルたっぷりって感じだよね! さっき、そこの沢から汲んできたんだ」
「沢? ねえ、ツクリ? この近くに沢なんてあったっけ?」
「……お前は勝ったんだよ、シズク」
「ふぇっ?」

 目の前では、ソダツが両の掌を天に向け、「参ったよ」とばかりに軽く両肩をすくめた。その脇では、ドリンがボロボロに朽ちた金属の棒を拾い上げ、渋い表情を浮かべている。

「私……出来たの?」

 巨漢ソダツの肩口から見える森の景色に、見覚えはない。

 視界を遮っていたことに気がついたソダツがその場を離れれば、木々が適度に伐採され、陽光がたっぷり降り注ぐ広い土地がシズクの目の前に広がった。

 中央には美しい水が流れて行き、その両側には、かつての圃場と思われる平原。とても、森の中とは思えない景色だ。
 山も麓にはぽつり、ウェルテの建築によく似た木造骨と漆喰の、大きな大きな二階建ての建物が見えた。

「行こう、シズ姉!! 古代遺跡を見つけたら、まずは探検しないとだよ!」

 幼少期、好奇心旺盛なツクリにこうして手を引かれ、野山や自然の祠を駆け回った記憶がシズクの頭の中でフラッシュバックする。

「うんうん! これが異世界ものの醍醐味だよ!! ほら、カイエンもっ!」

 シズクは迷うことなくその手を取り、なだらかに傾斜する遺跡へと元気いっぱい駆けだした。
 誘いを受けたカイエンは大きく頷き、二人の後を踊るようにして追いかけていく。

「……なあ。神さん?」
「どうかしたかえ、兄殿?」

 残された「年寄り」二人は、はしゃぐ彼女たちの様子を、微笑みを浮かべて見守っていた。

「シズクのスキルの話だがよぉ……。確か『温度操作』と『微生物活性化』だったか」
「左様、左様。気の毒なことじゃな。ランク外のスキルなど、儂も初めて見るわい」
「『温度操作』ってぇと……。まさか炎とか、氷とか……自在に使いこなせるってわけじゃあ……?」
「ご明察じゃ。シズクはぶんしの運動がどうのこうのと、訳の分からぬことを言っておったわ。氷は難しそうじゃったが、炎はかるく出してみせおったぞい」
「まじかよ……。はっは! 属性の概念、ぶっ壊しちまうヤツじゃねぇか!」
「ふむ。魔法で火を扱うものは水や氷を使えんというのが、エーテリアルの理じゃの」
「そいつもやべぇが、問題なのは『微生物活性化』だぜ。俺の専門、農業とも関わるが……微生物の働きって色々でよぉ。要は、腐食や熟成を自由に操ることが出来るスキルってわけだろ?」
「よく分からんが、そうではないのかろうか。先ほど、シズクがやって見せおったではないか。『時の錠前』、高かったのじゃが……背に腹は代えられんか」

 ぼやくドリンは、錆びだらけのかんぬきを、未練を断ち切るように握りつぶした。

「詰まるところ、どんな武器や鎧でもぶっ壊せちまう上に、生物を腐らせる事も出来ちまうわけだ……。妄想力次第じゃあ、最強の毒にもなり得る」
「ほう。微少な生き物の力が、それ程とはのぉ。かの錠前は、天界で最強の破壊力を持つ力の神ギガンテの全力にも耐えたのじゃが」
「ったく、恐ろしいぜ。シズクのSSランクの認定だがよぉ。ひょっとするとカイエンの力でも神さんの存在でもなく、あいつ自身の力じゃねぇの?」
「……ふむ。一理あるのぅ。いま一度、神マニュアルを確認せねばならんか」
「そっちは頼んだぜ、神さん! 俺は、可愛い妹達と遺跡探検に行ってくるぜ!! おーい! お前らぁー!! 兄ちゃん一人おいていかないでくれーー!!」

 ゴーレムとカイエンが暴れ回ったおかげで、周囲の魔物は山奥へと逃げ込んでいったようだ。

 敵がいなければ、武器など邪魔で重いだけ。
 鞘に収まった剣を放り投げ、ソダツは二人の後を追って、醸造所の敷地へと駆けていく――
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