201 / 206
第三章
一年前①
しおりを挟む
ガタゴトと音を立て走る馬車の窓から目的地が見えて、心の中でため息をついた。
湖と見紛うほど幅の広い水堀に囲まれたスペードの城は屋根も黒ければ外壁や塔に至るまでがダークグレーで統一されている。
水面に逆さに映るその美しい景色はこの国の観光の目玉だが、あいにく俺は遊びに来たわけじゃない。
「まったく。なんだってあいつはスペードなどに逃げ込んだのだろうな」
向かいに腰を下ろしているクローバーの8、ヘクターは俺とは違って真正面から不満をあらわにした。
自国の9へと語りかけるのにタメ口なのは俺とこいつが同じアカデミーの同期だからだ。
それはこの男の言う『スペードに逃げ込んだあいつ』も同様に。
「知るか。ツテなんざなかっただろうに、こっちが聞きてぇよ。お陰で見つけるのが遅れて兄貴はカンカンだ」
「それだよ。キングも放っておけばいいと思わないか? 子供でもあるまいに。家出くらいのことでなんだって俺らがわざわざ真逆の国まで行かなきゃならんのか」
真逆の国、というのはスペードの国と俺達の国が隣り合っていないことを意味している。
行き来するには数日かかるほどの距離があって、俺達も来るのはこれが初めてだ。
「それをそのままキングに言えたら今後一生俺の給金はお前にやるよ」
「…………」
二人して目を見合わせ、ため息をついた。
クローバーに生まれた者の性か、キングの我儘に進言できるだけの度胸は俺達にはない。
俺達は、計り知れなく面倒で、とてつもなく厄介な命を受けてこの国に派遣されてしまった哀れな被害者なのだった。
藍色の髪の男を従え、謁見の間の玉座に腰掛けたスペードのキングは俺と同年代の若い男だった。
しかしいくら年が近いからと言っても相手は一国の長。燃えるような赤い瞳が俺へと向けられて、細められる。親しみなど微塵もない、格下を見る目だ。
わざとらしい大仰な動きで一礼して、笑みと共に口を開いた。
「ご機嫌麗しゅう。スペードのキング。クローバーの9、キーランにございます。偉大なるキングに目通り叶いますことまこと恐悦至極に存じます。スペードのキングのご高名は遠く我が国の貴族位はもちろんのこと国外れの村の赤子にまで響き渡り──」
「長ったらしい挨拶は不要だ。貴殿らが我が国に参られた目的なら、すでに貴国からの知らせで把握している」
へぇ。
やはり若い分なかなかに性急な方のようだ。これが吉と出るか凶と出るかはまだわからないが。
「それはそれは、有り難きお言葉に存じます、スペードのキング。であれば、こちらからの求めに対して貴国はどのようにお考えか伺っても宜しゅうございますか」
にっこりと外交用の笑みを浮かべて言えば、スペードのキングの口角がゆるりと上がった。
「そうして笑うとよく似ているな。年が近いように見えるが、ご友人だったのかな?」
誰と、とは問われなかったが、もちろん誰とのことかは把握している。
こちらの問いをはぐらかされた上のこの質問には口元が引きつりそうになったが、ここで顔に出しては外交を主な職務とするクローバーの9は務まらない。
「……ええ。アカデミーでは同じ学年に在籍しておりました」
「それは後ろの者もかな?」
俺の斜め後ろには護衛役のヘクターが控えている。スペードのキングの視線を受けて、ヘクターは胸に手を添えて綺麗に一礼して見せた。
「クローバーの8、ヘクターにございます。私やこちらの9、それに10とクイーン、そして──クレーヴェル卿も我々の親しい学友でございました」
「へぇ。クローバーのクイーンもか。それは知らなかった」
ヘクターがはっきりと名前を出したにもかかわらずスペードのキングはさらりと交わしてしまう。その国の特色に合わせて対応しなければならないのが外交官の難しいところだが、どうにもこの方は周りくどいのがお好きではないのかもしれない。
言いたいことがあるなら面と向かって言ってみろと、赤い目が楽しげに語っている。
先に知らせを出していることではあるが、はっきり言わなければこの方との交渉は始めることすら出来ないらしい。
少々型破りではあるが仕方ない。望み通りにしてやろうじゃねぇか。
「偉大なるスペードのキングにお願い申し上げます。我々は我が国の長クローバーのキング、ルーサー・クレーヴェル公の弟君、オーウェン・クレーヴェル卿を国にお返し願いたく参りました」
スペードのキングの瞳が獲物を見定めた肉食獣のように楽しげに細められ、さも今思い出したかのように膝を打った。
「ああ、そうだったな。うちの5はルーサー殿の弟御だった」
「はい。我が国のキングはオーウェン殿が長くご実家に帰られぬことを深く案じておいでです。なにせもう、三年にもわたってご実家にお戻りになられていないそうで」
「私にも弟がいるからその気持ちは分からんではないな。いやしかしうちの5はもう二十三になる一端の男だ。御兄君に言われずとも自らの意思で実家に顔を見せに行くこともあるだろう」
俺の思い切りの良い切り出しはこの方のお気に召したのだろうか。浮かべられた笑みは、返す返さないの話題を避けているように見えて、ただ俺達を甚振っているだけのようにも感じる。
しかし話題が動いたのは事実だ。
俺は畳みかけた。
「スペード国は我が国に引けも取らぬ大国、優秀な方をとても多く召し抱えておいででしょう。先日そちらの8のネビル殿ともお話をさせていただく機会がございましたが、我が国の歴史から土地の名産に至るまでその博識ぶりはさすがはスペード国の8であると感銘を受けました。オーウェン殿も我が国のキングの弟君でありますから当然その優秀さはアカデミー在学中も抜きんでておいででしたが、それでも貴国においては卿以上に優秀な方々が多くいらっしゃることでしょう」
更に続けようとした声は、くつくつとした意地の悪い笑い声にかき消された。
「いやいや、さすがはルーサー殿の弟御であると言うべきか、あれに匹敵するほどの人材は我が国にもなかなかいなくてな。重宝してるんだよ」
「……では、お返しいただくつもりはない、と?」
「そうは言っていない。先程も言っただろう。あれもいい歳の男だ。長期の休みには自らの意思で実家に顔を出すこともあるだろうとな。──しかしだなぁ。いや困った」
表情は確かに困った様に眉を下げ、腕を組んで唸っているが、やはりどうにも楽しそうに見えるのはこのキングの性格によるものかもしれない。人を揶揄うのがご趣味のキングとは、外交官にとっては最悪と言える。
「…………なにか、お困りなことでも?」
尋ねれば、やはりどことなく嬉しそうに口元が緩んで見えた。
「ああ。実はなぁ。オーウェンは前キングからの推薦によって5に付けた男なんだよ。それをお返しするというのは、どうにも……前キングに申し訳が立たんと思ってな。お前はどう思う?」
前キングの、推薦…………? あいつ、どこでそんなコネを得たんだ!?
内心の焦りは見通されたらしい。スペードのキングは楽しげに後ろに控えた男を振り返った。
スペードのクイーンと名乗った男は静かに「前キングはオーウェン殿を、当代スペードのキングの治世において必要な男であると仰せでありました」と俺達にとって死刑宣告にも等しい言葉を淡々と述べた。
「そうだったなぁ。そこまで言われてしまってはこちらも無碍にはできない」
やれやれと肩を竦める姿に、冷や汗が首筋から背中へと伝う。
正直に言って、スペードのキングからはさっさと許しをもらえるものと考えていた。
この命の一番厄介なところは、スペードのキングから許しをもらった後にあると思っていたが、まさか顔も見ずに追い返されることになるとは……。
だが俺達はどうやら、この意地悪なキングの掌の上であったらしい。
「いやしかし、大切なのは本人の意思だと私は考えている」
すでに国に戻った後の対応へと飛んでいた俺の意識はすぐさま現実へと戻ってきた。
「と、仰いますと……?」
「貴殿らはオーウェンの友人なのだろう? 君らの説得によってあれが国元へ帰ると言うなら、私に止めるつもりはない」
闇に落とされた後の光明のようだった。闇に落としたのも光を与えたのも目の前の意地悪に微笑む男ではあるが。
「説得をしても宜しゅうございますか」
「当然のことだ。私は部下が友人と会うことを制限するほど狭量ではないつもりだからな」
話は以上とばかりにスペードのキングが立ち上がった。
「スペードは貴殿らを歓迎しよう。足りないものがあれば、なんなりと言い付けてくれ」
胸を撫で下ろし礼を伝えれば、スペードのキングは満足げに笑って去っていった。
軽快な二つの足音が聞こえなくなくなり、どっと疲れが押し寄せる。
つまりは──初めからオーウェンを手放すつもりはあったわけだ。前キングから預かった男だから惜しむ姿勢を見せる必要があっただけで。
「……さっさとオーウェンを探して連れ帰るぞ。こんな伏魔殿に長居できるか!」
同じ結論に至ったらしいヘクターが顔をしかめて何度も頷いている。
自国のキングもかなりの問題児ではあるが、それでもこの男よりはマシだと心底思った。
湖と見紛うほど幅の広い水堀に囲まれたスペードの城は屋根も黒ければ外壁や塔に至るまでがダークグレーで統一されている。
水面に逆さに映るその美しい景色はこの国の観光の目玉だが、あいにく俺は遊びに来たわけじゃない。
「まったく。なんだってあいつはスペードなどに逃げ込んだのだろうな」
向かいに腰を下ろしているクローバーの8、ヘクターは俺とは違って真正面から不満をあらわにした。
自国の9へと語りかけるのにタメ口なのは俺とこいつが同じアカデミーの同期だからだ。
それはこの男の言う『スペードに逃げ込んだあいつ』も同様に。
「知るか。ツテなんざなかっただろうに、こっちが聞きてぇよ。お陰で見つけるのが遅れて兄貴はカンカンだ」
「それだよ。キングも放っておけばいいと思わないか? 子供でもあるまいに。家出くらいのことでなんだって俺らがわざわざ真逆の国まで行かなきゃならんのか」
真逆の国、というのはスペードの国と俺達の国が隣り合っていないことを意味している。
行き来するには数日かかるほどの距離があって、俺達も来るのはこれが初めてだ。
「それをそのままキングに言えたら今後一生俺の給金はお前にやるよ」
「…………」
二人して目を見合わせ、ため息をついた。
クローバーに生まれた者の性か、キングの我儘に進言できるだけの度胸は俺達にはない。
俺達は、計り知れなく面倒で、とてつもなく厄介な命を受けてこの国に派遣されてしまった哀れな被害者なのだった。
藍色の髪の男を従え、謁見の間の玉座に腰掛けたスペードのキングは俺と同年代の若い男だった。
しかしいくら年が近いからと言っても相手は一国の長。燃えるような赤い瞳が俺へと向けられて、細められる。親しみなど微塵もない、格下を見る目だ。
わざとらしい大仰な動きで一礼して、笑みと共に口を開いた。
「ご機嫌麗しゅう。スペードのキング。クローバーの9、キーランにございます。偉大なるキングに目通り叶いますことまこと恐悦至極に存じます。スペードのキングのご高名は遠く我が国の貴族位はもちろんのこと国外れの村の赤子にまで響き渡り──」
「長ったらしい挨拶は不要だ。貴殿らが我が国に参られた目的なら、すでに貴国からの知らせで把握している」
へぇ。
やはり若い分なかなかに性急な方のようだ。これが吉と出るか凶と出るかはまだわからないが。
「それはそれは、有り難きお言葉に存じます、スペードのキング。であれば、こちらからの求めに対して貴国はどのようにお考えか伺っても宜しゅうございますか」
にっこりと外交用の笑みを浮かべて言えば、スペードのキングの口角がゆるりと上がった。
「そうして笑うとよく似ているな。年が近いように見えるが、ご友人だったのかな?」
誰と、とは問われなかったが、もちろん誰とのことかは把握している。
こちらの問いをはぐらかされた上のこの質問には口元が引きつりそうになったが、ここで顔に出しては外交を主な職務とするクローバーの9は務まらない。
「……ええ。アカデミーでは同じ学年に在籍しておりました」
「それは後ろの者もかな?」
俺の斜め後ろには護衛役のヘクターが控えている。スペードのキングの視線を受けて、ヘクターは胸に手を添えて綺麗に一礼して見せた。
「クローバーの8、ヘクターにございます。私やこちらの9、それに10とクイーン、そして──クレーヴェル卿も我々の親しい学友でございました」
「へぇ。クローバーのクイーンもか。それは知らなかった」
ヘクターがはっきりと名前を出したにもかかわらずスペードのキングはさらりと交わしてしまう。その国の特色に合わせて対応しなければならないのが外交官の難しいところだが、どうにもこの方は周りくどいのがお好きではないのかもしれない。
言いたいことがあるなら面と向かって言ってみろと、赤い目が楽しげに語っている。
先に知らせを出していることではあるが、はっきり言わなければこの方との交渉は始めることすら出来ないらしい。
少々型破りではあるが仕方ない。望み通りにしてやろうじゃねぇか。
「偉大なるスペードのキングにお願い申し上げます。我々は我が国の長クローバーのキング、ルーサー・クレーヴェル公の弟君、オーウェン・クレーヴェル卿を国にお返し願いたく参りました」
スペードのキングの瞳が獲物を見定めた肉食獣のように楽しげに細められ、さも今思い出したかのように膝を打った。
「ああ、そうだったな。うちの5はルーサー殿の弟御だった」
「はい。我が国のキングはオーウェン殿が長くご実家に帰られぬことを深く案じておいでです。なにせもう、三年にもわたってご実家にお戻りになられていないそうで」
「私にも弟がいるからその気持ちは分からんではないな。いやしかしうちの5はもう二十三になる一端の男だ。御兄君に言われずとも自らの意思で実家に顔を見せに行くこともあるだろう」
俺の思い切りの良い切り出しはこの方のお気に召したのだろうか。浮かべられた笑みは、返す返さないの話題を避けているように見えて、ただ俺達を甚振っているだけのようにも感じる。
しかし話題が動いたのは事実だ。
俺は畳みかけた。
「スペード国は我が国に引けも取らぬ大国、優秀な方をとても多く召し抱えておいででしょう。先日そちらの8のネビル殿ともお話をさせていただく機会がございましたが、我が国の歴史から土地の名産に至るまでその博識ぶりはさすがはスペード国の8であると感銘を受けました。オーウェン殿も我が国のキングの弟君でありますから当然その優秀さはアカデミー在学中も抜きんでておいででしたが、それでも貴国においては卿以上に優秀な方々が多くいらっしゃることでしょう」
更に続けようとした声は、くつくつとした意地の悪い笑い声にかき消された。
「いやいや、さすがはルーサー殿の弟御であると言うべきか、あれに匹敵するほどの人材は我が国にもなかなかいなくてな。重宝してるんだよ」
「……では、お返しいただくつもりはない、と?」
「そうは言っていない。先程も言っただろう。あれもいい歳の男だ。長期の休みには自らの意思で実家に顔を出すこともあるだろうとな。──しかしだなぁ。いや困った」
表情は確かに困った様に眉を下げ、腕を組んで唸っているが、やはりどうにも楽しそうに見えるのはこのキングの性格によるものかもしれない。人を揶揄うのがご趣味のキングとは、外交官にとっては最悪と言える。
「…………なにか、お困りなことでも?」
尋ねれば、やはりどことなく嬉しそうに口元が緩んで見えた。
「ああ。実はなぁ。オーウェンは前キングからの推薦によって5に付けた男なんだよ。それをお返しするというのは、どうにも……前キングに申し訳が立たんと思ってな。お前はどう思う?」
前キングの、推薦…………? あいつ、どこでそんなコネを得たんだ!?
内心の焦りは見通されたらしい。スペードのキングは楽しげに後ろに控えた男を振り返った。
スペードのクイーンと名乗った男は静かに「前キングはオーウェン殿を、当代スペードのキングの治世において必要な男であると仰せでありました」と俺達にとって死刑宣告にも等しい言葉を淡々と述べた。
「そうだったなぁ。そこまで言われてしまってはこちらも無碍にはできない」
やれやれと肩を竦める姿に、冷や汗が首筋から背中へと伝う。
正直に言って、スペードのキングからはさっさと許しをもらえるものと考えていた。
この命の一番厄介なところは、スペードのキングから許しをもらった後にあると思っていたが、まさか顔も見ずに追い返されることになるとは……。
だが俺達はどうやら、この意地悪なキングの掌の上であったらしい。
「いやしかし、大切なのは本人の意思だと私は考えている」
すでに国に戻った後の対応へと飛んでいた俺の意識はすぐさま現実へと戻ってきた。
「と、仰いますと……?」
「貴殿らはオーウェンの友人なのだろう? 君らの説得によってあれが国元へ帰ると言うなら、私に止めるつもりはない」
闇に落とされた後の光明のようだった。闇に落としたのも光を与えたのも目の前の意地悪に微笑む男ではあるが。
「説得をしても宜しゅうございますか」
「当然のことだ。私は部下が友人と会うことを制限するほど狭量ではないつもりだからな」
話は以上とばかりにスペードのキングが立ち上がった。
「スペードは貴殿らを歓迎しよう。足りないものがあれば、なんなりと言い付けてくれ」
胸を撫で下ろし礼を伝えれば、スペードのキングは満足げに笑って去っていった。
軽快な二つの足音が聞こえなくなくなり、どっと疲れが押し寄せる。
つまりは──初めからオーウェンを手放すつもりはあったわけだ。前キングから預かった男だから惜しむ姿勢を見せる必要があっただけで。
「……さっさとオーウェンを探して連れ帰るぞ。こんな伏魔殿に長居できるか!」
同じ結論に至ったらしいヘクターが顔をしかめて何度も頷いている。
自国のキングもかなりの問題児ではあるが、それでもこの男よりはマシだと心底思った。
0
お気に入りに追加
1,161
あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした
miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。
婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。
(ゲーム通りになるとは限らないのかも)
・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。
周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。
馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。
冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。
強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!?
※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

婚約破棄をいたしましょう。
見丘ユタ
恋愛
悪役令嬢である侯爵令嬢、コーデリアに転生したと気づいた主人公は、卒業パーティーの婚約破棄を回避するために奔走する。
しかし無慈悲にも卒業パーティーの最中、婚約者の王太子、テリーに呼び出されてしまうのだった。

好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる