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第二章
番外編 10執務室の日常②
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水も火も投げつけるだけなら慣れたものだ。グレンは左手をかざし、緩く木剣を構える上官へと攻撃を開始した。それらがたどり着く前にエルザは鋭く「三!」と声を上げる。すぐさまグレンは目を閉じた。瞼の裏が眩い赤に染まり、両手で出来る限りの水と火を放つ。これは外したとグレンが直感したと同時に頭の隅で数えていた数字が三秒になる。目を開けたらすぐ目の前に空色が迫ってきていた。
悲鳴を飲み込んで後ろに飛び退るグレンの鼻先をエルザの鋭い蹴りがかすめていった。
次にエルザが叫んだのは「二」だった。それと同時にグレンは空いた左手でサインを作り、目を一瞬だけ閉じた。
光はグレンのサインの通り一秒で治まったが、目の前にいるエルザの瞼は一秒だけ長く閉じられている。それを把握した時には木剣を手にしたザックと二人でエルザに斬りかかっていた。
二人に遅れて目を開いたエルザはすぐさま目の前のグレンから距離を取ったが、後ろにいるザックには気付かなかったらしい。コツンとエルザの頭上に木剣が振り下ろされた。
「よっしゃあ!」
思わずグレンの口から勝利の喜びが漏れる。それはザックも同じだった。
「上手く行ったな!」
「おう! 久しぶりだけど、覚えてるもんだな!」
不意打ちとはいえ上官に一撃入れられたのだから二人の喜びも一入だ。そんな二人にエルザがのしかかってきた。
「二人ともすごいじゃない! グレンはちゃんと蹴りを避けたし、ザックは魔法の調整が上手なのね。知らなかったわ!」
「そうだろ!? ザックはアカデミーでも百位以内に入る優秀な後衛だったんだぞ」
「そ、それは光属性の頭数が少ないだけだって……。グレンだって前衛やらせたら後衛まで抜けなくて勝率が上がるって評判だったんですよ」
得意げに友人を自慢し合う二人にエルザは満足げな笑みを向ける。どさくさに紛れて二人に抱き着いていたが喜ぶ二人は気付いていないらしい。
「それじゃあ朝からの鍛錬は二人とも不得手な内容だったわけね。得意なものは伸ばしていったほうがいいけど、不得意をそのままにしておくわけにはいかないから……次はザックが前衛、グレンが後衛で練習しましょう。少ししたら交代ね」
元気よく返事する二人のやる気が増したのは言うまでもない。しかし数度の打ち合いののち、ザックが時計を取り出した。
「そろそろ執務室に戻らないとですね。午後は休みじゃないですから」
「もうそんな時間か」と素直に木剣を下ろすグレンとは対照的に、エルザは「えー」と素直な不満を漏らした。
「せっかく楽しいところだったのに、ここでやめるなんてもったいないわ。もっと遊びましょうよ」
「……遊ぶってなんですか。これは兵士としての訓練でしょうが。オーウェン様も午前だけだって言われてたし午後は駄目ですよ」
二人は内心焦った。この上司のデスクワーク嫌いは相当なものなのだ。言葉巧みに言いくるめられて、午後も鍛錬に時間を割かれかねない。
なんとかして説得しなければと焦る二人の前で、エルザが何かを思いついたように手を打った。
「それなら、次、私に一発当てたら終了ってことにしない? 前衛後衛なしのなんでもありのルールでいいわ。私は変わらず剣のみで、どう?」
二人は目を見合わせた。
もちろんその提案は却下するべきだが、この人はとにかくデスクワークから逃げることにおいては往生際が悪い。しかし同時に一度約束したら破らない人でもあるのだ。ならいっそこの提案を受けて、さっさと執務室に連行するほうが手っ取り早い気がした。
当然エルザに一撃当てられるわけはないが、今は剣のみでいいというハンデをもらっている。そのうえで先ほどからの打ち合いではグレンとザックの木剣は何度もエルザに届いていたのだ。
二人は、この提案は実現不可能ではない、と思った。
「本当に一発当たったらおとなしく執務室に戻るって約束します?」
「するわよ! 私が約束を破ったことある?」
「言い訳して、なかったことにされたのなら先日ありましたけど……」
二十四歳がケーキに目が眩んだ日の話だ。
「そ、それは……どのくらい仕事するかは、約束に含まれてなかったじゃない……?」
「見苦しいぞ。ならこれで俺達が勝ったら今日は終業まで仕事してるって約束な」
二人から半眼で睨まれたエルザは気まずそうにたじろいだが、憤然と宣言した。
「いいわよ。それでいきましょう! 負けないわよ!」
このとき、少なくともザックは思い出すべきだった。
この人がどれだけ仕事嫌いで甘いものに目がなく、今年五歳になる姪っ子のほうがしっかりしてるんじゃないかなぁと思ってしまうほど情けない上官だったとしても。
スペードでも一、二を争う騎士だぞ、という自らの発言をザックだけは思い出すべきだったのだが──もう遅い。
初めに違和感を覚えたのは前衛に立ったグレンだった。
──先ほどまで捌けていたはずのエルザの剣を避けきれなくなっている。
違和感を拭うためにサインで後衛に立つザックに『二』と送る。慣れた動作で目を閉じて、一、二と数える最中、腹部に鈍い衝撃があった。
「ぐっ……!?」
「グレン!」
後ろに立つザックが名を叫ぶその声は、ほとんど悲鳴だった。
痛みに呻きながらも前衛である自分は抜かれたらしいと悟り、それなら背中から斬りつけてやるとすぐさま振り返ったが──遅かった。
振り返った時にはすでにザックは蹴り飛ばされて、地面に尻餅をついていた。
これまでの数度の打ち合いで、これほど綺麗に抜かれたことは一度もない。
驚きに固まる二人にエルザは腰に手を当てて、にんまりと笑って言ったのだ。
「本気でかかってこないと、私に一撃喰らわせるなんて夢のまた夢で終わるわよ」
体がカッと熱くなり、同時にザックが『一秒』のサインを出したのが見えた。一秒目を瞑りながら、直前までエルザがいた場所へと踏み込む。目を開いた時には目眩しを受けた上官が目の前にいるはず──なのに、どうしていないんだ。
困惑に硬直する背中に硬いものがコツンと押しつけられた。
「ザックと組ませるならグレンにも相手の動きを読む訓練をさせなきゃダメねぇ……。誘いに素直に乗るんじゃないの。実戦なら二人とも死んでるわよ」
押されたまま地面に膝をつき、見上げた先ではエルザが意地悪な含み笑いを浮かべて木剣を肩に掛けてこちらを見下ろしていた。
先ほどとは明らかに動きが違うエルザに歯噛みする。
この時、二人の心は一つだった。
──騙された!!
「ひどいぞ! 手加減してたのかよ!?」
言われたエルザはキョトンとした。
「手加減なら初めからしてるじゃない。魔法抜きだって」
「そうじゃなくて──っ!」
さらに言い募ろうとしたとき、足音と共に呑気な声がした。
「二人とも見事に扱かれてるなぁ。久しぶりに俺も相手してください、と言いたいところですが、そろそろ執務室に戻りますよ。午後の仕事がありますから」
「オーウェン様……!」
その声の主は二人にとって天の助けというよりは死刑執行人寄りだった。
にこやかなオーウェンから少し距離を取ったエルザは得意げに胸を張って言ったのだ。
「……行かないわよ。だって、負けてないもの」
「は? なんの話です?」
エルザから地面に座り込むグレン、ザックへと目を移動させたオーウェンは再びエルザに目を向けて──口端を引きつらせた。
「……まさか、とは思いますが……エルザに勝てなきゃ仕事に戻らないとでも約束したんじゃないでしょうね……?」
状況判断が恐ろしく早い。
残念なことに雷はグレンとザックに落ちた。
「お前達は馬鹿か!? どうしてそんな約束を──そもそもこの人に勝てると本気で思ったのか! 俺だって勝てないんだぞ!!」
「申し訳ございません……」
「すみません……」
項垂れた二人は素直に謝罪したが、言い訳をすることは忘れなかった。
「手加減して油断を誘われたんですよ!」
「そうです。さっきまでは攻撃が当たってたんです!」
部下二人からこれまでの状況を聞いたオーウェンは少し落ち着いた口調になって言い諭してきた。
「それは鍛錬における誘いだ。わざと隙を見せて打たせるんだよ。エルザはお前達を騙したわけじゃない。お前達が何か隠し事をしているのがわかったから、恐らくはそれに乗っただけだろう。──だが鍛錬ならともかくスペードの方達は総じて勝負事にはとても厳しい。約束した以上、もう楽には打たせてくれないぞ。……ああ、ったく仕事がまた遅れる……っ」
歯軋りしたのちにオーウェンは、まるで仇に向けるような鋭い目を恋人に向けた。
「──それは俺も参戦していいのでしょうね」
「えー。オーウェンが混ざるなら私に不利じゃない?」
「どこがだ! ……とにかく、俺も参加させてもらいます。ルールはなんです?」
「私に一撃当てたら、だけど……オーウェンが入るなら動きを止めたらにしようかしら?」
「一撃のままでお願いします」
そうオーウェンが言った時にはエルザの背後に影の蛇が蠢いていた。
後ろも見ずにエルザが横飛びに避けると、立っていた位置に影が叩きつけられた。
「二人ともぼさっとするんじゃない! 魔法がないなら遠距離から攻撃を続けて、決して近寄らせるな!!」
言いながら影の蛇はエルザを追い、無数の火の玉が襲いかかっていたが、すべて避けられている。
慌てた二人も参戦するが、グレンの魔法も全て避けられ、ザックに至っては二人の邪魔になるからと光魔法を使いあぐねる有様だった。
「この状況、ララさんが見たら大喜びするだろうな……」
エルザの友人であるララのことは二人もよく知っている。
エルザが大好きなあの女性は、特にエルザが剣で戦う姿が好きなのだ。
心の中で激しく同意する最中、エルザが地面を力強く蹴り、オーウェンへと距離を詰めた。魔法での防御が間に合わないとふんだのか、オーウェンは木剣を取りエルザからの初撃を防ぐ。そのまま数度打ち合うもエルザから距離を取ることなどできるはずもなく、腹部にきつい蹴りを見舞われてオーウェンは吹っ飛ばされた。
まずい。そう思った時には目の前に空色が揺れていて。
二人して尻餅をつき、高笑う上官を憎々し気に見上げる羽目になっていた。
「この手を使うのは可哀想だと思っていたが……」
呆れたため息とともにオーウェンは決意した。
「致し方ないな。仕事が遅れるほうが今は問題だ。──エルザ。そんなことばかりして二人で遊んでいると、二人が愛想を尽かせて辞めてしまいますよ」
「えっ!?」
思いもよらない言葉にエルザは慌てて恋人に詰め寄った。
「な、な、なんで……どうしてよ!? いつも楽しく遊んでるのに!」
「……それはあなただけでしょうね。秘密にしていましたが、いつもあなたを探し回り疲れ果てた顔をしている二人をこれ以上うちで拘束するのは可哀想なので、他の部署に異動させてやることを考えていたんですよ」
「そんな!!」
愕然として顔を青ざめさせるエルザと同じくらい、このことが初耳な二人は驚いていたが、こちらに目を向けたオーウェンの目にほんの少し意地悪な、悪戯めいた光があるのを見て取る。
「二人もいい加減この人のお守は疲れただろう。なるべくなら希望に沿えるよう力添えはさせてもらうから、この人のことは気にせず正直に言いなさい。希望する部署はあるかな」
オーウェンの意図を察したグレンがこれに乗った。
「申し訳ございません、オーウェン様。俺はもう限界です。希望するところはありませんから、オーウェン様の良いようにしてください」
「そうか、仕方ないな。なら7のウィル殿……のところはここと似たようなものだそうだから、6のクライブ殿のところに話を通しておいてやろう。6は城下町の治安維持が主だからお前達にもなじみのある仕事内容になるだろうしな」
「はい。よろしくお願いします」
礼儀正しく頭を下げるグレンに、エルザが大慌てで駆け寄ってきた。
「グレン! ほ、本当に辞めちゃうつもりなの!? あんなに楽しく鬼ごっこしてたじゃない!」
「……鬼ごっこのつもりだったのかよ……」
この呆れは本物だが、眉を下げ慌てるエルザがどれだけ可哀想だろうともグレンは心を鬼にした。
「申し訳ありませんが、もう10の鬼ごっこに付き合わされるのは疲れたんです。今までお世話になりました」
お元気でとまで言い添えてやると、エルザは絶望したように言葉を詰まらせている。心が激しく痛む上に、今なら一撃当たりそうだなぁと思うが、まだ駄目だ。エルザからは見えないところでオーウェンが首を振っている。
ならザックからの精神攻撃も入れてもらおうと友人へと目を向けたが、グレンは驚きに目を瞬いた。ザックは眦を吊り上げて激しい怒りを自分へと向けていたのだ。
「グレン……お前、どういうつもりだよ!? 辞めるなんて本気か!? 確かにこの人は仕事を嫌がって逃げるし言葉だけはうまいからしょっちゅう人を言いくるめてくるし、仕事はさぼるくせにおやつの時間にはしっかり執務室に戻ってくるような駄目人間だけど、俺達の恩人だぞ! ここで俺達が見捨てたら、この人はもっと駄目になっちゃうだろ!!」
「…………」
「…………」
「駄目人間……」
オーウェンの意図をまったく察していなかったザックの上官への援護は、恐らくはグレンのものよりも深くエルザの心を抉った。
「も……申し訳、ございません……」
友人に代わり心から頭を下げたグレンをオーウェンは「事実だから……」と許したが、ザックはさらに憤然とエルザに言い募った。
「俺は部下を辞めませんからね! 世話がどれだけ大変だろうとペットの面倒は最後まで見なければならないと親からも教わっています。途中で投げ出すなんてことしませんから!!」
「ペット……」
「ザック、ちょっと黙ろうか……!?」
これ以上の傷を上官に負わせるわけにはいかない。グレンは必死に友人を止めに入ったが、ザックは「お前のような恩知らずなんか知るか!」と聞き分けない。
部下達からの度重なる謀反に、エルザが頼ったのは決して裏切らないだろう信頼を寄せる相手だった。
「……オーウェン~!」
目じりに涙まで浮かべて泣きついてきた恋人に、本当なら説教をするつもりだったオーウェンは迷った。ここでのお説教はちょっと可哀想すぎる。
「グレンが辞めてザックがペットって……!」
「ああ、うん……そうだな……可哀想にな……」
さすがに鬼にはなりきれなかった。
なりきれなかったが──勝負は勝負、がスペード流だ。さりげなく目を向けると、グレンがザックに耳打ちし、ザックが頭を抱えているのが見えた。
泣きつく恋人を抱き寄せて背中を撫でてあやす。エルザの背後で、部下二人が木剣を振り上げた。
コツンと空色の頭に二本の木剣が振り下ろされる。
いまだに涙の滲む目を大きく見開いた恋人に、オーウェンはにっこりと意地の悪い笑みを向けた。
「二人の勝ちでよろしいですね、上官殿」
ここでやっと、エルザは先ほど部下達が思ったことと同じ言葉を口にしたのだ。
「……騙したわね!?」
「騙されるほうが悪いもスペード流なんじゃないですか。さあ約束です。執務室へ戻りますよ」
怒れる恋人の背中を押して、いらないことを思い出さないようさっさと執務室へと向かう。
しかしこの恋人はそこまではおバカではないのだ。
「ねぇねぇ、じゃあグレンが辞めるのも嘘? 嘘よね?」
聞かれたグレンは平然と答えた。
「当たり前だよ。辞めるわけないだろ」
「ならザックが私をペット扱いしたのも冗談?」
「…………………………………………もちろんです。冗談に決まってるでしょう」
目を泳がせるんじゃない! とオーウェンが目で部下を叱責したことは、おバカじゃない恋人には気付かれなかった。
こうして終業まで仕事をするという約束は珍しく守られ、これまた珍しく本日の10の業務は滞りなく進めることが出来たのだった。
悲鳴を飲み込んで後ろに飛び退るグレンの鼻先をエルザの鋭い蹴りがかすめていった。
次にエルザが叫んだのは「二」だった。それと同時にグレンは空いた左手でサインを作り、目を一瞬だけ閉じた。
光はグレンのサインの通り一秒で治まったが、目の前にいるエルザの瞼は一秒だけ長く閉じられている。それを把握した時には木剣を手にしたザックと二人でエルザに斬りかかっていた。
二人に遅れて目を開いたエルザはすぐさま目の前のグレンから距離を取ったが、後ろにいるザックには気付かなかったらしい。コツンとエルザの頭上に木剣が振り下ろされた。
「よっしゃあ!」
思わずグレンの口から勝利の喜びが漏れる。それはザックも同じだった。
「上手く行ったな!」
「おう! 久しぶりだけど、覚えてるもんだな!」
不意打ちとはいえ上官に一撃入れられたのだから二人の喜びも一入だ。そんな二人にエルザがのしかかってきた。
「二人ともすごいじゃない! グレンはちゃんと蹴りを避けたし、ザックは魔法の調整が上手なのね。知らなかったわ!」
「そうだろ!? ザックはアカデミーでも百位以内に入る優秀な後衛だったんだぞ」
「そ、それは光属性の頭数が少ないだけだって……。グレンだって前衛やらせたら後衛まで抜けなくて勝率が上がるって評判だったんですよ」
得意げに友人を自慢し合う二人にエルザは満足げな笑みを向ける。どさくさに紛れて二人に抱き着いていたが喜ぶ二人は気付いていないらしい。
「それじゃあ朝からの鍛錬は二人とも不得手な内容だったわけね。得意なものは伸ばしていったほうがいいけど、不得意をそのままにしておくわけにはいかないから……次はザックが前衛、グレンが後衛で練習しましょう。少ししたら交代ね」
元気よく返事する二人のやる気が増したのは言うまでもない。しかし数度の打ち合いののち、ザックが時計を取り出した。
「そろそろ執務室に戻らないとですね。午後は休みじゃないですから」
「もうそんな時間か」と素直に木剣を下ろすグレンとは対照的に、エルザは「えー」と素直な不満を漏らした。
「せっかく楽しいところだったのに、ここでやめるなんてもったいないわ。もっと遊びましょうよ」
「……遊ぶってなんですか。これは兵士としての訓練でしょうが。オーウェン様も午前だけだって言われてたし午後は駄目ですよ」
二人は内心焦った。この上司のデスクワーク嫌いは相当なものなのだ。言葉巧みに言いくるめられて、午後も鍛錬に時間を割かれかねない。
なんとかして説得しなければと焦る二人の前で、エルザが何かを思いついたように手を打った。
「それなら、次、私に一発当てたら終了ってことにしない? 前衛後衛なしのなんでもありのルールでいいわ。私は変わらず剣のみで、どう?」
二人は目を見合わせた。
もちろんその提案は却下するべきだが、この人はとにかくデスクワークから逃げることにおいては往生際が悪い。しかし同時に一度約束したら破らない人でもあるのだ。ならいっそこの提案を受けて、さっさと執務室に連行するほうが手っ取り早い気がした。
当然エルザに一撃当てられるわけはないが、今は剣のみでいいというハンデをもらっている。そのうえで先ほどからの打ち合いではグレンとザックの木剣は何度もエルザに届いていたのだ。
二人は、この提案は実現不可能ではない、と思った。
「本当に一発当たったらおとなしく執務室に戻るって約束します?」
「するわよ! 私が約束を破ったことある?」
「言い訳して、なかったことにされたのなら先日ありましたけど……」
二十四歳がケーキに目が眩んだ日の話だ。
「そ、それは……どのくらい仕事するかは、約束に含まれてなかったじゃない……?」
「見苦しいぞ。ならこれで俺達が勝ったら今日は終業まで仕事してるって約束な」
二人から半眼で睨まれたエルザは気まずそうにたじろいだが、憤然と宣言した。
「いいわよ。それでいきましょう! 負けないわよ!」
このとき、少なくともザックは思い出すべきだった。
この人がどれだけ仕事嫌いで甘いものに目がなく、今年五歳になる姪っ子のほうがしっかりしてるんじゃないかなぁと思ってしまうほど情けない上官だったとしても。
スペードでも一、二を争う騎士だぞ、という自らの発言をザックだけは思い出すべきだったのだが──もう遅い。
初めに違和感を覚えたのは前衛に立ったグレンだった。
──先ほどまで捌けていたはずのエルザの剣を避けきれなくなっている。
違和感を拭うためにサインで後衛に立つザックに『二』と送る。慣れた動作で目を閉じて、一、二と数える最中、腹部に鈍い衝撃があった。
「ぐっ……!?」
「グレン!」
後ろに立つザックが名を叫ぶその声は、ほとんど悲鳴だった。
痛みに呻きながらも前衛である自分は抜かれたらしいと悟り、それなら背中から斬りつけてやるとすぐさま振り返ったが──遅かった。
振り返った時にはすでにザックは蹴り飛ばされて、地面に尻餅をついていた。
これまでの数度の打ち合いで、これほど綺麗に抜かれたことは一度もない。
驚きに固まる二人にエルザは腰に手を当てて、にんまりと笑って言ったのだ。
「本気でかかってこないと、私に一撃喰らわせるなんて夢のまた夢で終わるわよ」
体がカッと熱くなり、同時にザックが『一秒』のサインを出したのが見えた。一秒目を瞑りながら、直前までエルザがいた場所へと踏み込む。目を開いた時には目眩しを受けた上官が目の前にいるはず──なのに、どうしていないんだ。
困惑に硬直する背中に硬いものがコツンと押しつけられた。
「ザックと組ませるならグレンにも相手の動きを読む訓練をさせなきゃダメねぇ……。誘いに素直に乗るんじゃないの。実戦なら二人とも死んでるわよ」
押されたまま地面に膝をつき、見上げた先ではエルザが意地悪な含み笑いを浮かべて木剣を肩に掛けてこちらを見下ろしていた。
先ほどとは明らかに動きが違うエルザに歯噛みする。
この時、二人の心は一つだった。
──騙された!!
「ひどいぞ! 手加減してたのかよ!?」
言われたエルザはキョトンとした。
「手加減なら初めからしてるじゃない。魔法抜きだって」
「そうじゃなくて──っ!」
さらに言い募ろうとしたとき、足音と共に呑気な声がした。
「二人とも見事に扱かれてるなぁ。久しぶりに俺も相手してください、と言いたいところですが、そろそろ執務室に戻りますよ。午後の仕事がありますから」
「オーウェン様……!」
その声の主は二人にとって天の助けというよりは死刑執行人寄りだった。
にこやかなオーウェンから少し距離を取ったエルザは得意げに胸を張って言ったのだ。
「……行かないわよ。だって、負けてないもの」
「は? なんの話です?」
エルザから地面に座り込むグレン、ザックへと目を移動させたオーウェンは再びエルザに目を向けて──口端を引きつらせた。
「……まさか、とは思いますが……エルザに勝てなきゃ仕事に戻らないとでも約束したんじゃないでしょうね……?」
状況判断が恐ろしく早い。
残念なことに雷はグレンとザックに落ちた。
「お前達は馬鹿か!? どうしてそんな約束を──そもそもこの人に勝てると本気で思ったのか! 俺だって勝てないんだぞ!!」
「申し訳ございません……」
「すみません……」
項垂れた二人は素直に謝罪したが、言い訳をすることは忘れなかった。
「手加減して油断を誘われたんですよ!」
「そうです。さっきまでは攻撃が当たってたんです!」
部下二人からこれまでの状況を聞いたオーウェンは少し落ち着いた口調になって言い諭してきた。
「それは鍛錬における誘いだ。わざと隙を見せて打たせるんだよ。エルザはお前達を騙したわけじゃない。お前達が何か隠し事をしているのがわかったから、恐らくはそれに乗っただけだろう。──だが鍛錬ならともかくスペードの方達は総じて勝負事にはとても厳しい。約束した以上、もう楽には打たせてくれないぞ。……ああ、ったく仕事がまた遅れる……っ」
歯軋りしたのちにオーウェンは、まるで仇に向けるような鋭い目を恋人に向けた。
「──それは俺も参戦していいのでしょうね」
「えー。オーウェンが混ざるなら私に不利じゃない?」
「どこがだ! ……とにかく、俺も参加させてもらいます。ルールはなんです?」
「私に一撃当てたら、だけど……オーウェンが入るなら動きを止めたらにしようかしら?」
「一撃のままでお願いします」
そうオーウェンが言った時にはエルザの背後に影の蛇が蠢いていた。
後ろも見ずにエルザが横飛びに避けると、立っていた位置に影が叩きつけられた。
「二人ともぼさっとするんじゃない! 魔法がないなら遠距離から攻撃を続けて、決して近寄らせるな!!」
言いながら影の蛇はエルザを追い、無数の火の玉が襲いかかっていたが、すべて避けられている。
慌てた二人も参戦するが、グレンの魔法も全て避けられ、ザックに至っては二人の邪魔になるからと光魔法を使いあぐねる有様だった。
「この状況、ララさんが見たら大喜びするだろうな……」
エルザの友人であるララのことは二人もよく知っている。
エルザが大好きなあの女性は、特にエルザが剣で戦う姿が好きなのだ。
心の中で激しく同意する最中、エルザが地面を力強く蹴り、オーウェンへと距離を詰めた。魔法での防御が間に合わないとふんだのか、オーウェンは木剣を取りエルザからの初撃を防ぐ。そのまま数度打ち合うもエルザから距離を取ることなどできるはずもなく、腹部にきつい蹴りを見舞われてオーウェンは吹っ飛ばされた。
まずい。そう思った時には目の前に空色が揺れていて。
二人して尻餅をつき、高笑う上官を憎々し気に見上げる羽目になっていた。
「この手を使うのは可哀想だと思っていたが……」
呆れたため息とともにオーウェンは決意した。
「致し方ないな。仕事が遅れるほうが今は問題だ。──エルザ。そんなことばかりして二人で遊んでいると、二人が愛想を尽かせて辞めてしまいますよ」
「えっ!?」
思いもよらない言葉にエルザは慌てて恋人に詰め寄った。
「な、な、なんで……どうしてよ!? いつも楽しく遊んでるのに!」
「……それはあなただけでしょうね。秘密にしていましたが、いつもあなたを探し回り疲れ果てた顔をしている二人をこれ以上うちで拘束するのは可哀想なので、他の部署に異動させてやることを考えていたんですよ」
「そんな!!」
愕然として顔を青ざめさせるエルザと同じくらい、このことが初耳な二人は驚いていたが、こちらに目を向けたオーウェンの目にほんの少し意地悪な、悪戯めいた光があるのを見て取る。
「二人もいい加減この人のお守は疲れただろう。なるべくなら希望に沿えるよう力添えはさせてもらうから、この人のことは気にせず正直に言いなさい。希望する部署はあるかな」
オーウェンの意図を察したグレンがこれに乗った。
「申し訳ございません、オーウェン様。俺はもう限界です。希望するところはありませんから、オーウェン様の良いようにしてください」
「そうか、仕方ないな。なら7のウィル殿……のところはここと似たようなものだそうだから、6のクライブ殿のところに話を通しておいてやろう。6は城下町の治安維持が主だからお前達にもなじみのある仕事内容になるだろうしな」
「はい。よろしくお願いします」
礼儀正しく頭を下げるグレンに、エルザが大慌てで駆け寄ってきた。
「グレン! ほ、本当に辞めちゃうつもりなの!? あんなに楽しく鬼ごっこしてたじゃない!」
「……鬼ごっこのつもりだったのかよ……」
この呆れは本物だが、眉を下げ慌てるエルザがどれだけ可哀想だろうともグレンは心を鬼にした。
「申し訳ありませんが、もう10の鬼ごっこに付き合わされるのは疲れたんです。今までお世話になりました」
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ならザックからの精神攻撃も入れてもらおうと友人へと目を向けたが、グレンは驚きに目を瞬いた。ザックは眦を吊り上げて激しい怒りを自分へと向けていたのだ。
「グレン……お前、どういうつもりだよ!? 辞めるなんて本気か!? 確かにこの人は仕事を嫌がって逃げるし言葉だけはうまいからしょっちゅう人を言いくるめてくるし、仕事はさぼるくせにおやつの時間にはしっかり執務室に戻ってくるような駄目人間だけど、俺達の恩人だぞ! ここで俺達が見捨てたら、この人はもっと駄目になっちゃうだろ!!」
「…………」
「…………」
「駄目人間……」
オーウェンの意図をまったく察していなかったザックの上官への援護は、恐らくはグレンのものよりも深くエルザの心を抉った。
「も……申し訳、ございません……」
友人に代わり心から頭を下げたグレンをオーウェンは「事実だから……」と許したが、ザックはさらに憤然とエルザに言い募った。
「俺は部下を辞めませんからね! 世話がどれだけ大変だろうとペットの面倒は最後まで見なければならないと親からも教わっています。途中で投げ出すなんてことしませんから!!」
「ペット……」
「ザック、ちょっと黙ろうか……!?」
これ以上の傷を上官に負わせるわけにはいかない。グレンは必死に友人を止めに入ったが、ザックは「お前のような恩知らずなんか知るか!」と聞き分けない。
部下達からの度重なる謀反に、エルザが頼ったのは決して裏切らないだろう信頼を寄せる相手だった。
「……オーウェン~!」
目じりに涙まで浮かべて泣きついてきた恋人に、本当なら説教をするつもりだったオーウェンは迷った。ここでのお説教はちょっと可哀想すぎる。
「グレンが辞めてザックがペットって……!」
「ああ、うん……そうだな……可哀想にな……」
さすがに鬼にはなりきれなかった。
なりきれなかったが──勝負は勝負、がスペード流だ。さりげなく目を向けると、グレンがザックに耳打ちし、ザックが頭を抱えているのが見えた。
泣きつく恋人を抱き寄せて背中を撫でてあやす。エルザの背後で、部下二人が木剣を振り上げた。
コツンと空色の頭に二本の木剣が振り下ろされる。
いまだに涙の滲む目を大きく見開いた恋人に、オーウェンはにっこりと意地の悪い笑みを向けた。
「二人の勝ちでよろしいですね、上官殿」
ここでやっと、エルザは先ほど部下達が思ったことと同じ言葉を口にしたのだ。
「……騙したわね!?」
「騙されるほうが悪いもスペード流なんじゃないですか。さあ約束です。執務室へ戻りますよ」
怒れる恋人の背中を押して、いらないことを思い出さないようさっさと執務室へと向かう。
しかしこの恋人はそこまではおバカではないのだ。
「ねぇねぇ、じゃあグレンが辞めるのも嘘? 嘘よね?」
聞かれたグレンは平然と答えた。
「当たり前だよ。辞めるわけないだろ」
「ならザックが私をペット扱いしたのも冗談?」
「…………………………………………もちろんです。冗談に決まってるでしょう」
目を泳がせるんじゃない! とオーウェンが目で部下を叱責したことは、おバカじゃない恋人には気付かれなかった。
こうして終業まで仕事をするという約束は珍しく守られ、これまた珍しく本日の10の業務は滞りなく進めることが出来たのだった。
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ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
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※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
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