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第二章
番外編 はじめてのしゅっちょう②
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ノブのない木製の扉を押し開くと、扉は両側の蝶番をギコギコと鳴らしながら、自然と元の位置に戻っていく。出入り口の足元と天井が空いていて外からでも店舗の中を覗けるようになっている変わった扉だ。
「いらっしゃーい!」
愛想の良さそうな若い女が二人を見て元気よく声を張った。王都ではあまり見かけないよく陽に焼けた肌をしていて、後ろで結ばれた色素の薄い明るい三つ編みの髪が振り返る動きに合わせて揺れる。
適当な椅子に腰掛けると、すかさず注文を聞きに来た。
「お兄さん達、旅行で来たの? 何にする?」
「おすすめはなんですか?」
オーウェンがやや素っ気なく問いかけたが、女は面白そうに目を細めた。
「わかった。お兄さん達、王都から来たんでしょ。ここらじゃあそんな丁寧な話し方する人いないもんね。おすすめは網焼きだよ。ここにグリルを置いて、お客さんの目の前で焼くの」
ここと言って、女は前屈みになりテーブルの中央を指す。色々と計算し尽くされた、見事な前屈みだった。
「ではそれを二人前お願いします」
だが客の一人、年上の方が顔色を一切変えずに注文したまではいいが、もう一人の若い方は顔を幾分か青ざめたものだから女は内心で『なんだか妙な反応だなぁ』と首を傾げた。だがそれはおくびにも出さず「はいよぉ」と愛想よく応えて下がる。
彼女は知らないが、この若いのは現在ある事情により、女性不審真っ最中なのだった。
店員の女が両手で持ってきた大きな四角い箱の中には大振りの木炭がいくつも入れられている。なるほど、これで魚介を焼くわけかとグレンは中を覗き込んで、女の細い指に額をついと押された。
「危ないから下がってね」
にっこりと可愛らしく微笑まれ、背中がぞわりと冷える。即座に目を逸らして椅子へと腰を戻した。
ところが、危ないと言った本人である店員の女が、無造作に箱の中へと手を突っ込んだ。これには女の行動に無関心を貫いていたオーウェンも目を大きく見開き、その動向に釘付けとなる。
そうして見つめているとチリチリと音を立てて炭が白くなっていき、あっという間に芯が赤くなった。
「見事ですね。魔法で焼いているのですか」
「そうよぉ。これだけはアカデミーですっごく練習したの。って言っても友達に魔法の使い方が上手い子がいたから、その子に教えてもらったんだけどね」
初めて自分に興味が向いて、女も少し得意げになる。
にんまり笑って下がっていき、すぐに大皿いっぱいに貝や魚、海老を乗せて戻ってきた。
手早く網にそれらを乗せて「あとこれはあたしからのサービス」と桃色のどろりとした何かが盛られた小皿を置き、空いた椅子に腰掛けた。
「この美人の同席もサービスね」
慣れた動作で肘をついた手に顎を添えて、可愛らしく小首を傾げて年上の方に狙いをつけたが、二人の視線は一点に置かれた小皿に向けられている。
この時、二人はまったく同じことを考えていた。
これはまさか、食べ物なのかと。
「……もしかして、食べたことないの? イカの塩辛」
「こ、これが、イカの塩辛……ですか」
とんでもないものを二人の実家に送りつけてしまったとオーウェンが呻いて額を叩く。
「とんでもないってねぇ……美味しいから食べてみなよ。ほら、あーん」
「自分で食べられますから結構です」
若い女が上官に近付くのをグレンがハラハラしつつ見守る。素気無く断ったオーウェンは引ったくられた箸を取り返して恐る恐るイカを持ち上げた。
料理好きな恋人の大好物が、よもやこんなゲテモノだったとは。恋人至上主義なオーウェンでも少々心が揺らぐ見た目だが、自らが食べられないものを部下二人の両親に送ったままにしておくわけにはいかない。意を決して口へと運んだ。
グレンが固唾を飲んで見守る中、オーウェンの口がもぐもぐと動き──小さく吹き出した。
「なるほど、これは……酒呑みが好みそうだ」
弱いくせに酒好きな恋人を思い出しているらしいオーウェンは笑いながら再び塩辛を口に運ぶ。その様子に安心したグレンも食べてみたが、こちらは正直あまり美味しいものではないと思った。
二人の様子に気を良くしたらしい店員の女がまた得意げに笑った。
「ね、だから言ったでしょ。美味しいって。せっかくだし何か飲む? 今なら美人が付き合ってあげる」
「結構です。仕事中ですので」
「え~、堅いなぁ。お兄さん強そうだし、ちょっとくらい大丈夫じゃない」
「お断りします。昼間から飲むような男に見えますか」
あくまでオーウェンは女に素っ気ない態度を貫いた。パチパチと爆ぜる音がして、女の声がほんの少し気落ちしたように大人しくなる。
「やっぱり都会の男の人からすれば、同じ都会の綺麗な女の人と比べたらこんな田舎の町女なんて魅力ないかな?」
「……それはまた随分と小狡い質問ですね。そう言われては男に許された答えは一つしかなくなる。ですが生憎私にとっては都会の方だろうが町の方だろうが、私の恋人こそが最高の方であると認識していますので、その比較はお答えのしようがありません」
ここで来店してから初めて、オーウェンの目が女に焦点を合わせた。
「その質問はあなたの言う『都会の男の人』に直接聞かれてはいかがですか。あなたは今、俺が男に媚びる女性を好かないと分かっていてわざと演じてらっしゃいますね。そうなるとどうしてそのような行動に出たのか、という話になりますが……その質問を、都会から来た男に聞きたかったから、でしょうか。美味しいサービスをいただいたのでお返しに答えますが、あなたは一般的に見て魅力のある女性だとは認識されるだろう外見をしていて、仕事する姿も非常に効率的で頭が良いように見受けられます。初めて来店した客に対しての人当たりも良い。これであなたを田舎者だと馬鹿にして相手にしないような男なのであれば、早々に捨ててしまうべきだと思いますが」
唐突に長い台詞を喋ったオーウェンを、女は両手で肘をつき、まじまじと見つめた。
「……もしかして、あたし、口説かれてる?」
「まさか。先ほども言いましたが、私にとっては私の恋人こそがこの世界で至高です。他になど目は移りませんよ」
まだこの上官のことをよく知らないグレンは、まさかこの人はここで浮気でもするつもりではないだろうなと気が気じゃない。もしもそのようなことがあれば、恩人だからといって許すわけには。
意識せず、上官を見る目に怒りが篭る。
だが、グレンの静かな決意も他所に、女は肩を揺らし始めた。
「あんたさぁ、ぱっと見はモテるんだろうけど……付き合ったらしんどそうね」
「それに関しては、後ほど恋人に確認しておきますよ」
「はいはい。ごちそうさまでした」
女は先ほどの媚びた顔をガラリと変えてニヤけた顔で笑い、立ち上がった。そしてなぜか視線をグレンへと移し、パチリと片目を瞑って「ハラハラさせちゃってごめんねぇ」と謝り去っていった。
思わずホッと息をついたグレンだった。
しかしなぜか目の前の上官まで可笑しそうにこちらに目を向けてくる。
「……安心していていいのか、グレン」
「え?」
意味が分からないグレンは首を傾げ、さらに上官の笑いを誘った。
「今の『ごめんね』は、君の彼氏を口説いてごめんって意味だ」
「…………………………ちっ……」
違います!!! と叫んだところですでに女の姿は厨房の奥へと消えている。
焦る部下を見守りながらオーウェンは『この手があればエルザのいない出張でも面倒がなくなっていいなぁ』と呑気に考えていたのだった。
「本当に本当に違うんですってば!!」
店舗中にグレンの否定が響き渡るが、女は焼き具合を確認する手を止めず「はいはい。もう口説かないよぉ」と宥めるだけだ。
「グレン、諦めろ。もうバレてるらしいからな。堂々としていなさい」
「なんであなたはそんなノリノリなんですか!!」
女に声をかけられる煩わしさから解放されたオーウェンは、部下を犠牲にした。
「はい、じゃあこれもう食べていいからね。ごゆっくりーっと……そうだった」
女が、これでもかとにんまり笑った。
「うち、宿屋もやってるから。部屋使いたくなったら言ってねぇ」
「今日で帰るんだから使わないよ!!」
「いや、その返事は間違ってないか……」
騒ぐ一人と呆れる一人を残して女がテーブルから去った時、変わった作りの扉が押し開かれて、ギコギコと音を立てた。
「いらっしゃー……うっわ、久しぶりー!」
愛想のいい声が一転、甲高く響いた。どうやら久しい友人でも来店したらしいと二人は意識をテーブルの中央へと向けて──。
「こんにちは。久しぶりね、ミア。おじいちゃんはお元気?」
グレンの海老を剥く手が止まり、上官はボトリと帆立を落とした。その上官の顔に付属された唇は間違えようもなく『まずい』と動いたのだった。
「いらっしゃーい!」
愛想の良さそうな若い女が二人を見て元気よく声を張った。王都ではあまり見かけないよく陽に焼けた肌をしていて、後ろで結ばれた色素の薄い明るい三つ編みの髪が振り返る動きに合わせて揺れる。
適当な椅子に腰掛けると、すかさず注文を聞きに来た。
「お兄さん達、旅行で来たの? 何にする?」
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ここと言って、女は前屈みになりテーブルの中央を指す。色々と計算し尽くされた、見事な前屈みだった。
「ではそれを二人前お願いします」
だが客の一人、年上の方が顔色を一切変えずに注文したまではいいが、もう一人の若い方は顔を幾分か青ざめたものだから女は内心で『なんだか妙な反応だなぁ』と首を傾げた。だがそれはおくびにも出さず「はいよぉ」と愛想よく応えて下がる。
彼女は知らないが、この若いのは現在ある事情により、女性不審真っ最中なのだった。
店員の女が両手で持ってきた大きな四角い箱の中には大振りの木炭がいくつも入れられている。なるほど、これで魚介を焼くわけかとグレンは中を覗き込んで、女の細い指に額をついと押された。
「危ないから下がってね」
にっこりと可愛らしく微笑まれ、背中がぞわりと冷える。即座に目を逸らして椅子へと腰を戻した。
ところが、危ないと言った本人である店員の女が、無造作に箱の中へと手を突っ込んだ。これには女の行動に無関心を貫いていたオーウェンも目を大きく見開き、その動向に釘付けとなる。
そうして見つめているとチリチリと音を立てて炭が白くなっていき、あっという間に芯が赤くなった。
「見事ですね。魔法で焼いているのですか」
「そうよぉ。これだけはアカデミーですっごく練習したの。って言っても友達に魔法の使い方が上手い子がいたから、その子に教えてもらったんだけどね」
初めて自分に興味が向いて、女も少し得意げになる。
にんまり笑って下がっていき、すぐに大皿いっぱいに貝や魚、海老を乗せて戻ってきた。
手早く網にそれらを乗せて「あとこれはあたしからのサービス」と桃色のどろりとした何かが盛られた小皿を置き、空いた椅子に腰掛けた。
「この美人の同席もサービスね」
慣れた動作で肘をついた手に顎を添えて、可愛らしく小首を傾げて年上の方に狙いをつけたが、二人の視線は一点に置かれた小皿に向けられている。
この時、二人はまったく同じことを考えていた。
これはまさか、食べ物なのかと。
「……もしかして、食べたことないの? イカの塩辛」
「こ、これが、イカの塩辛……ですか」
とんでもないものを二人の実家に送りつけてしまったとオーウェンが呻いて額を叩く。
「とんでもないってねぇ……美味しいから食べてみなよ。ほら、あーん」
「自分で食べられますから結構です」
若い女が上官に近付くのをグレンがハラハラしつつ見守る。素気無く断ったオーウェンは引ったくられた箸を取り返して恐る恐るイカを持ち上げた。
料理好きな恋人の大好物が、よもやこんなゲテモノだったとは。恋人至上主義なオーウェンでも少々心が揺らぐ見た目だが、自らが食べられないものを部下二人の両親に送ったままにしておくわけにはいかない。意を決して口へと運んだ。
グレンが固唾を飲んで見守る中、オーウェンの口がもぐもぐと動き──小さく吹き出した。
「なるほど、これは……酒呑みが好みそうだ」
弱いくせに酒好きな恋人を思い出しているらしいオーウェンは笑いながら再び塩辛を口に運ぶ。その様子に安心したグレンも食べてみたが、こちらは正直あまり美味しいものではないと思った。
二人の様子に気を良くしたらしい店員の女がまた得意げに笑った。
「ね、だから言ったでしょ。美味しいって。せっかくだし何か飲む? 今なら美人が付き合ってあげる」
「結構です。仕事中ですので」
「え~、堅いなぁ。お兄さん強そうだし、ちょっとくらい大丈夫じゃない」
「お断りします。昼間から飲むような男に見えますか」
あくまでオーウェンは女に素っ気ない態度を貫いた。パチパチと爆ぜる音がして、女の声がほんの少し気落ちしたように大人しくなる。
「やっぱり都会の男の人からすれば、同じ都会の綺麗な女の人と比べたらこんな田舎の町女なんて魅力ないかな?」
「……それはまた随分と小狡い質問ですね。そう言われては男に許された答えは一つしかなくなる。ですが生憎私にとっては都会の方だろうが町の方だろうが、私の恋人こそが最高の方であると認識していますので、その比較はお答えのしようがありません」
ここで来店してから初めて、オーウェンの目が女に焦点を合わせた。
「その質問はあなたの言う『都会の男の人』に直接聞かれてはいかがですか。あなたは今、俺が男に媚びる女性を好かないと分かっていてわざと演じてらっしゃいますね。そうなるとどうしてそのような行動に出たのか、という話になりますが……その質問を、都会から来た男に聞きたかったから、でしょうか。美味しいサービスをいただいたのでお返しに答えますが、あなたは一般的に見て魅力のある女性だとは認識されるだろう外見をしていて、仕事する姿も非常に効率的で頭が良いように見受けられます。初めて来店した客に対しての人当たりも良い。これであなたを田舎者だと馬鹿にして相手にしないような男なのであれば、早々に捨ててしまうべきだと思いますが」
唐突に長い台詞を喋ったオーウェンを、女は両手で肘をつき、まじまじと見つめた。
「……もしかして、あたし、口説かれてる?」
「まさか。先ほども言いましたが、私にとっては私の恋人こそがこの世界で至高です。他になど目は移りませんよ」
まだこの上官のことをよく知らないグレンは、まさかこの人はここで浮気でもするつもりではないだろうなと気が気じゃない。もしもそのようなことがあれば、恩人だからといって許すわけには。
意識せず、上官を見る目に怒りが篭る。
だが、グレンの静かな決意も他所に、女は肩を揺らし始めた。
「あんたさぁ、ぱっと見はモテるんだろうけど……付き合ったらしんどそうね」
「それに関しては、後ほど恋人に確認しておきますよ」
「はいはい。ごちそうさまでした」
女は先ほどの媚びた顔をガラリと変えてニヤけた顔で笑い、立ち上がった。そしてなぜか視線をグレンへと移し、パチリと片目を瞑って「ハラハラさせちゃってごめんねぇ」と謝り去っていった。
思わずホッと息をついたグレンだった。
しかしなぜか目の前の上官まで可笑しそうにこちらに目を向けてくる。
「……安心していていいのか、グレン」
「え?」
意味が分からないグレンは首を傾げ、さらに上官の笑いを誘った。
「今の『ごめんね』は、君の彼氏を口説いてごめんって意味だ」
「…………………………ちっ……」
違います!!! と叫んだところですでに女の姿は厨房の奥へと消えている。
焦る部下を見守りながらオーウェンは『この手があればエルザのいない出張でも面倒がなくなっていいなぁ』と呑気に考えていたのだった。
「本当に本当に違うんですってば!!」
店舗中にグレンの否定が響き渡るが、女は焼き具合を確認する手を止めず「はいはい。もう口説かないよぉ」と宥めるだけだ。
「グレン、諦めろ。もうバレてるらしいからな。堂々としていなさい」
「なんであなたはそんなノリノリなんですか!!」
女に声をかけられる煩わしさから解放されたオーウェンは、部下を犠牲にした。
「はい、じゃあこれもう食べていいからね。ごゆっくりーっと……そうだった」
女が、これでもかとにんまり笑った。
「うち、宿屋もやってるから。部屋使いたくなったら言ってねぇ」
「今日で帰るんだから使わないよ!!」
「いや、その返事は間違ってないか……」
騒ぐ一人と呆れる一人を残して女がテーブルから去った時、変わった作りの扉が押し開かれて、ギコギコと音を立てた。
「いらっしゃー……うっわ、久しぶりー!」
愛想のいい声が一転、甲高く響いた。どうやら久しい友人でも来店したらしいと二人は意識をテーブルの中央へと向けて──。
「こんにちは。久しぶりね、ミア。おじいちゃんはお元気?」
グレンの海老を剥く手が止まり、上官はボトリと帆立を落とした。その上官の顔に付属された唇は間違えようもなく『まずい』と動いたのだった。
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