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第二章
34 ピュア系弟属性
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「こいつは、コニーを殺したんだぞ!? 飯までやって……命令違反じゃないか!!」
「それはお前もだろ。パンをポケットに入れてたの、見たんだぞ」
「こ、これは……自分の夜食に、だな……っ」
「なんだか聞いたことがあるフレーズね?」
「スペードの10は黙ってて」
「あら。エルザでいいって言わなかった?」
「言われてないよ」
「じゃあ、今言うわ。エルザって呼んでね、グレン君」
「断る。あんたの彼氏に絶対殺される」
「オーウェンはとっても優しいのよ。そんなことするわけないでしょう」
「いや、優しいのは絶対あんたの前でだけだ。確実に数人は亡き者にしてる目だったぞ、あれは」
「俺を無視してイチャつくなよ!! グレン。お前、コニーを殺したやつと仲良くするなんて、見損なったぞ」
昨日の会話ですっかり慣れてしまったこの人の相手をしていると、ザックが怒鳴り声を上げた。
最上級の憎悪を込めて、こちらを睨む、その目には少し怯んでしまう。
けど、俺は──。
バゲットサンドにかぶりつくスペードの10に、目を向けた。
「コニーを殺したのは」
「……私じゃない。私は悲鳴を聞いて、現場に駆けつけたのよ。私に出来たはずがないわ」
返事を聞いて、息を深く吸い、吐いた。
あの日は、馬車が急に故障して立ち往生することになった。訓練通り黙々と馬車の修理をして、そして手が足りているからと、コニーは付近の見回りに出たんだ。
心臓が痛いほど騒いで、友人の刺すような視線から逃げたくなった。けど、もう目を背けるのは嫌だ。
「ザック。俺は、この人を信じるよ。信じられる人だと思う。それに……お前も、分かってるよな。あの時。お前が俺に、言ったんだぞ」
『今、悲鳴みたいなのが聞こえなかったか? まぁあっちにはコニーと、ソフィア様がいるし、大丈夫だよな? ……あ。今走ってった女の人、見たか!? あの空色の髪は、きっとスペードの10だ。あの方はスペードでも、一二を争う騎士だぞ。何かトラブルがあったとしても、あの方が向かわれたなら、俺たちが行くまでもないよな。あー、あとで話が出来たりしないかな。俺ちょっとファンなんだよ。すっげー美人でさー』
「ザック。お前は…………悲鳴が聞こえた時、この人を見てる、よな」
あの時、ザックに言われてから振り返った俺は、この人を見ていない。けど、確かに聞いた。悲鳴が聞こえて、スペードの10が向かった、と。
ソフィア様の甲高い叫び声を聞いてから急いで駆けつけて。コニーの遺体を見て、頭が沸騰したように熱くなった。何も考えられず、こいつが殺したのかと、それだけが頭を支配していた。
けど、他国の位持ちの方を地下牢に放り込むと聞いて、ソフィア様の指示は、やりすぎだと思った。
そうして見張りに立って、この人と話して。
聞き流していたザックの言葉が、頭に、残って。
違う、違うと震える頭を振って後ずさるザックも、きっと俺と同じことを考えている。
──この人じゃないなら、誰がコニーを。
あの時、現場にいたのは。
「……グレン。隠れなさい。早く!」
突然、緊迫した様子のスペードの10が、俺の体を風の魔法で押して、そう囁いた。
一体何が。
そう思ったと同時に、コツリと軽快な足音が、地下牢に響いた。
テーブルの陰に急いで移動し、身を潜ませる。暗い地下ならこれでも十分、体を隠せた。
同僚の交代かと思って、それにしては足音が軽い気がした。まるで女性の足音のような……。
蝋燭の灯りの元、現れた亜麻色に、背筋がぞわりと凍りついた。
「それはお前もだろ。パンをポケットに入れてたの、見たんだぞ」
「こ、これは……自分の夜食に、だな……っ」
「なんだか聞いたことがあるフレーズね?」
「スペードの10は黙ってて」
「あら。エルザでいいって言わなかった?」
「言われてないよ」
「じゃあ、今言うわ。エルザって呼んでね、グレン君」
「断る。あんたの彼氏に絶対殺される」
「オーウェンはとっても優しいのよ。そんなことするわけないでしょう」
「いや、優しいのは絶対あんたの前でだけだ。確実に数人は亡き者にしてる目だったぞ、あれは」
「俺を無視してイチャつくなよ!! グレン。お前、コニーを殺したやつと仲良くするなんて、見損なったぞ」
昨日の会話ですっかり慣れてしまったこの人の相手をしていると、ザックが怒鳴り声を上げた。
最上級の憎悪を込めて、こちらを睨む、その目には少し怯んでしまう。
けど、俺は──。
バゲットサンドにかぶりつくスペードの10に、目を向けた。
「コニーを殺したのは」
「……私じゃない。私は悲鳴を聞いて、現場に駆けつけたのよ。私に出来たはずがないわ」
返事を聞いて、息を深く吸い、吐いた。
あの日は、馬車が急に故障して立ち往生することになった。訓練通り黙々と馬車の修理をして、そして手が足りているからと、コニーは付近の見回りに出たんだ。
心臓が痛いほど騒いで、友人の刺すような視線から逃げたくなった。けど、もう目を背けるのは嫌だ。
「ザック。俺は、この人を信じるよ。信じられる人だと思う。それに……お前も、分かってるよな。あの時。お前が俺に、言ったんだぞ」
『今、悲鳴みたいなのが聞こえなかったか? まぁあっちにはコニーと、ソフィア様がいるし、大丈夫だよな? ……あ。今走ってった女の人、見たか!? あの空色の髪は、きっとスペードの10だ。あの方はスペードでも、一二を争う騎士だぞ。何かトラブルがあったとしても、あの方が向かわれたなら、俺たちが行くまでもないよな。あー、あとで話が出来たりしないかな。俺ちょっとファンなんだよ。すっげー美人でさー』
「ザック。お前は…………悲鳴が聞こえた時、この人を見てる、よな」
あの時、ザックに言われてから振り返った俺は、この人を見ていない。けど、確かに聞いた。悲鳴が聞こえて、スペードの10が向かった、と。
ソフィア様の甲高い叫び声を聞いてから急いで駆けつけて。コニーの遺体を見て、頭が沸騰したように熱くなった。何も考えられず、こいつが殺したのかと、それだけが頭を支配していた。
けど、他国の位持ちの方を地下牢に放り込むと聞いて、ソフィア様の指示は、やりすぎだと思った。
そうして見張りに立って、この人と話して。
聞き流していたザックの言葉が、頭に、残って。
違う、違うと震える頭を振って後ずさるザックも、きっと俺と同じことを考えている。
──この人じゃないなら、誰がコニーを。
あの時、現場にいたのは。
「……グレン。隠れなさい。早く!」
突然、緊迫した様子のスペードの10が、俺の体を風の魔法で押して、そう囁いた。
一体何が。
そう思ったと同時に、コツリと軽快な足音が、地下牢に響いた。
テーブルの陰に急いで移動し、身を潜ませる。暗い地下ならこれでも十分、体を隠せた。
同僚の交代かと思って、それにしては足音が軽い気がした。まるで女性の足音のような……。
蝋燭の灯りの元、現れた亜麻色に、背筋がぞわりと凍りついた。
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