115 / 206
第一章
115
しおりを挟む
「では、女王陛下。ララを元の世界へと帰してやっていただけますか」
女王陛下の機嫌が良くなった頃を見計らったのか、ルーファスがララを指し示して言った。
「そうだな……」
まだ未練はあるようだが女王陛下は頷いてくれて、ほっと胸を撫で下ろす。
ララに対する執着はもちろんクッキーだけではないはずだ。女王陛下ルートには、ララとの初対面でクッキーを食べながら一緒にベンチに座ってお喋りするスチルがあった。母を亡くしたばかりで寂しかった女王陛下には、それは手放し難い時間だったのだろう。
「あ、あの……!」
慌てた高い声に、何事かと声の主へと視線が集まる。
声を上げたララは勢いよく立ち上がり、頭を下げた。
「ごめんなさい!」
思わずみんなと目を見合わせてしまった。
何に対する謝罪なのか、と。
ララはそれはもう気まずげな表情で、私に一度視線を合わせ、ルーファスの前に立った。
「エルザさんが怪我をしたのは、私を元の世界に帰すため、です。そしてこんなにも大怪我をしたのに、約束通り帰られるように白の女王陛下と話をしてくださって……なのに、私……本当にごめんなさい! この世界に残りたいんです! エルザさんとお話ししたいことも聞きたいこともあるし、こんな気持ちで元の世界に帰ったら絶対に後悔する……怪我をさせておいてこんなわがままを言うなんて、断られても仕方ないと分かっているんですが、それでも……ご迷惑でなければ今まで通り城で働かせてもらえませんか。お願いします!」
一息に言ったララは、再び頭を勢いよく下げた。その桃色の頭を見つめるルーファスは乱雑に頭をかいたが、私はゼンと視線を合わせて少し笑った。
頭をかくのはルーファスが嬉しさをごまかす時の癖だ。おまけに唇は嬉しそうに、もぞもぞと動いている。
「そんな殊勝な態度を取られると、反応に困るな」
照れ隠しの言葉に顔を上げたララはムッと眉を寄せていて、ルーファスはそれはもう楽しげな笑いを漏らした。
「なぁ、ララさんよ」
「なんですか?」
ルーファスは細い肩から前に垂れた桃色の髪を一房すくい上げ、それを親指で撫でた。
「この世界に残るってことは、俺はお前を口説いてもいいってことだな?」
ペシリと音が鳴り、憤然とした足取りのララが胸に飛び込んできた。
「聞く相手を間違えました。エルザさん、私がこの世界に残ってもいいですか?」
「いいわよ」
抱きとめた腕に力を込めるも、笑いが止まらない。「わーい!」とわざとらしいほどの大声で騒ぐララと笑い合う。
ララが残ってくれる。気になることもあるし、こんなに嬉しいことはない。親友として、ルーファスの恋も応援してあげるべきか。
「仕方ない。女を口説くコツは先輩にご教授願うとするかな」
「俺ですか……?」
「その人、それに関しては役に立たないと思いますよ」
ルーファスがオーウェンの肩を抱くと、私の肩口からララが揶揄う声を上げる。
そういえば。
「たしかに私、口説かれてないわ」
「ここでそんなこと言わなくていい!」
オーウェンに怒られて肩をすくめる。
それでも、一度くらい口説き文句を聞いてみたいなぁと瞳で訴えてみると、オーウェンの顔が真っ赤になってしまった。
うん。口説く参考にはなりそうにない。
「ちょ、ちょっと待ってください……!」
制止の声が上がり、手のひらが目の前に掲げられた。
「どうしたの、フェリクス?」
ヒョロリとした白のジャックは困惑したように眉尻を下げ、言い募ってきた。
「く、口説くって何の話だ! 誰が誰を!」
「ああ、そうか……」
私は首を傾げたのに、なぜかルーファスやゼンは訳知り顔で頭を振っている。
「誰がって……恋人が、私に……?」
「恋人!?」
「……私に恋人がいたら、そんなにおかしい?」
聞いたこともないほどの裏返った声に戸惑ってしまう。そりゃあモテないけど……。
「恋人がいるわけないような女だと思われていたなんて」
「そ、そうじゃない! だって……君が!? 何度気持ちを伝えても『友達』だと言う君に! 恋人!?」
「気持ち?」
「ほらぁ!!」
フェリクスは膝と手をついてうずくまってしまった。そんなフェリクスにノエルがそっと近付き、慰めるように肩を叩いた。
「フェリクスは友達のエルザに恋人が出来たのが寂しいだけなんだよ! ……ね?」
「おかしい、おかしいと思っていたが……やはり貴様の仕業か!!」
剣の柄に手をかけて叫ぶフェリクスに、ノエルは「え~なんのことか僕にはわからないなぁ」と天使の笑顔で答えている。
この二人がこんなに仲良しだとは知らなかったなぁ。
それにしても、気持ち。気持ちねぇ。
「それって、白の国の湖で水遊びしたときに言われたようなこと?」
今にも剣を抜きそうなフェリクスに尋ねると、本当に嬉しそうに笑いながらにじり寄ってきた。
「そう! それだ! 思い出したか!?」
「思い出したというか……」
あの時フェリクスに言われたのは――。
『白の国の湖に行かないか。その、とても……とても綺麗なところなんだ。いつかエルザといきたいと思っていたのだが、どうかな』だ。
水遊びはルーファス達に伝えたらみんなで行くことになった。ハートの国の方達にも声をかけたから、ショーンの水着姿という、レアなものも見れた。
かつてのスチルにない素晴らしい光景に想いを馳せる。
「楽しかったわね! あの外出嫌いのショーンが水着を着てくれるなんて! いつもいつも裾の長いローブ姿ばかりだったから、肌の白さがもうほんっとに……ほんっとにね、もう……この世界に生まれて良かった! それに尽きる! 水着姿で照れるショーンをこの目で拝めるなんてもうたまんな……じゃなくて、本当に綺麗なところだったわね、うん。あの姿はしっかりと心のフィルムに収めたわ……いい思い出よ、ありがとう!」
他にも首や体の線の細さや濡れた黒髪から滴り落ちる雫の尊さを語りたかったが、これはすでにレスターと存分に語り合い済みだ。自重しよう。
手をファインダーの形にしてお礼を言うと、フェリクスは俯いて肩を震わせている。
「どうかした?」
少し心配になるほどの震えようだ。
「……こ、恋人とは、ハートのジャックか」
「ショーン? 違うわよ。あの子が私を好きになるわけないじゃない」
攻略対象のショーンはララみたいに可愛い子が好みなのだ。私は完全に当てはまらない。
「ショーンはエルザのこと大好きな友達だって思ってくれてるよ! そっけないのは照れ屋さんなだけなんだよね」
「そうよねぇ。最近やっと仲良くしてくれるようになって嬉しいの」
手懐けるのに苦労したものだ。
キラキラ笑顔のノエルと笑い合う。
「またみんなで遊びに行きたいなぁ」
「そうね。どこに行こうかしら。当然、ララも一緒にね」
まだ腕の中にいるララに笑顔を向けるも、なんとも言えない笑顔を返された。
「そうか……ハートのジャックも被害者か……」
「あれが、スペードの不落城の異名の元です」
「本人は不落城の刺客と呼ばれているがな」
「俺、明日にでも川の底に沈んでいたりしませんよね……兄上が止めてくださいますよね……?」
「あいつ、兄ちゃんよりつえーからなぁ……」
「ちょっと。なんの話よ?」
刺客だとか川の底だとか、やけに物騒な言葉が並んでいる。
「不落城?」
「エルザは気にしなくて良い。君の友人となれたことに対する感謝を、スペードの皆様に伝えていたところだ」
「私の友人の話でどうしてそんなに物騒な単語が出てくるのよ」
私の印象に関わる問題だ。更に問い詰めようとしたら、くいと裾を引かれて振り向くも誰もいない。視線を下にずらせば、真剣な眼差しの赤い瞳があった。
女王陛下の機嫌が良くなった頃を見計らったのか、ルーファスがララを指し示して言った。
「そうだな……」
まだ未練はあるようだが女王陛下は頷いてくれて、ほっと胸を撫で下ろす。
ララに対する執着はもちろんクッキーだけではないはずだ。女王陛下ルートには、ララとの初対面でクッキーを食べながら一緒にベンチに座ってお喋りするスチルがあった。母を亡くしたばかりで寂しかった女王陛下には、それは手放し難い時間だったのだろう。
「あ、あの……!」
慌てた高い声に、何事かと声の主へと視線が集まる。
声を上げたララは勢いよく立ち上がり、頭を下げた。
「ごめんなさい!」
思わずみんなと目を見合わせてしまった。
何に対する謝罪なのか、と。
ララはそれはもう気まずげな表情で、私に一度視線を合わせ、ルーファスの前に立った。
「エルザさんが怪我をしたのは、私を元の世界に帰すため、です。そしてこんなにも大怪我をしたのに、約束通り帰られるように白の女王陛下と話をしてくださって……なのに、私……本当にごめんなさい! この世界に残りたいんです! エルザさんとお話ししたいことも聞きたいこともあるし、こんな気持ちで元の世界に帰ったら絶対に後悔する……怪我をさせておいてこんなわがままを言うなんて、断られても仕方ないと分かっているんですが、それでも……ご迷惑でなければ今まで通り城で働かせてもらえませんか。お願いします!」
一息に言ったララは、再び頭を勢いよく下げた。その桃色の頭を見つめるルーファスは乱雑に頭をかいたが、私はゼンと視線を合わせて少し笑った。
頭をかくのはルーファスが嬉しさをごまかす時の癖だ。おまけに唇は嬉しそうに、もぞもぞと動いている。
「そんな殊勝な態度を取られると、反応に困るな」
照れ隠しの言葉に顔を上げたララはムッと眉を寄せていて、ルーファスはそれはもう楽しげな笑いを漏らした。
「なぁ、ララさんよ」
「なんですか?」
ルーファスは細い肩から前に垂れた桃色の髪を一房すくい上げ、それを親指で撫でた。
「この世界に残るってことは、俺はお前を口説いてもいいってことだな?」
ペシリと音が鳴り、憤然とした足取りのララが胸に飛び込んできた。
「聞く相手を間違えました。エルザさん、私がこの世界に残ってもいいですか?」
「いいわよ」
抱きとめた腕に力を込めるも、笑いが止まらない。「わーい!」とわざとらしいほどの大声で騒ぐララと笑い合う。
ララが残ってくれる。気になることもあるし、こんなに嬉しいことはない。親友として、ルーファスの恋も応援してあげるべきか。
「仕方ない。女を口説くコツは先輩にご教授願うとするかな」
「俺ですか……?」
「その人、それに関しては役に立たないと思いますよ」
ルーファスがオーウェンの肩を抱くと、私の肩口からララが揶揄う声を上げる。
そういえば。
「たしかに私、口説かれてないわ」
「ここでそんなこと言わなくていい!」
オーウェンに怒られて肩をすくめる。
それでも、一度くらい口説き文句を聞いてみたいなぁと瞳で訴えてみると、オーウェンの顔が真っ赤になってしまった。
うん。口説く参考にはなりそうにない。
「ちょ、ちょっと待ってください……!」
制止の声が上がり、手のひらが目の前に掲げられた。
「どうしたの、フェリクス?」
ヒョロリとした白のジャックは困惑したように眉尻を下げ、言い募ってきた。
「く、口説くって何の話だ! 誰が誰を!」
「ああ、そうか……」
私は首を傾げたのに、なぜかルーファスやゼンは訳知り顔で頭を振っている。
「誰がって……恋人が、私に……?」
「恋人!?」
「……私に恋人がいたら、そんなにおかしい?」
聞いたこともないほどの裏返った声に戸惑ってしまう。そりゃあモテないけど……。
「恋人がいるわけないような女だと思われていたなんて」
「そ、そうじゃない! だって……君が!? 何度気持ちを伝えても『友達』だと言う君に! 恋人!?」
「気持ち?」
「ほらぁ!!」
フェリクスは膝と手をついてうずくまってしまった。そんなフェリクスにノエルがそっと近付き、慰めるように肩を叩いた。
「フェリクスは友達のエルザに恋人が出来たのが寂しいだけなんだよ! ……ね?」
「おかしい、おかしいと思っていたが……やはり貴様の仕業か!!」
剣の柄に手をかけて叫ぶフェリクスに、ノエルは「え~なんのことか僕にはわからないなぁ」と天使の笑顔で答えている。
この二人がこんなに仲良しだとは知らなかったなぁ。
それにしても、気持ち。気持ちねぇ。
「それって、白の国の湖で水遊びしたときに言われたようなこと?」
今にも剣を抜きそうなフェリクスに尋ねると、本当に嬉しそうに笑いながらにじり寄ってきた。
「そう! それだ! 思い出したか!?」
「思い出したというか……」
あの時フェリクスに言われたのは――。
『白の国の湖に行かないか。その、とても……とても綺麗なところなんだ。いつかエルザといきたいと思っていたのだが、どうかな』だ。
水遊びはルーファス達に伝えたらみんなで行くことになった。ハートの国の方達にも声をかけたから、ショーンの水着姿という、レアなものも見れた。
かつてのスチルにない素晴らしい光景に想いを馳せる。
「楽しかったわね! あの外出嫌いのショーンが水着を着てくれるなんて! いつもいつも裾の長いローブ姿ばかりだったから、肌の白さがもうほんっとに……ほんっとにね、もう……この世界に生まれて良かった! それに尽きる! 水着姿で照れるショーンをこの目で拝めるなんてもうたまんな……じゃなくて、本当に綺麗なところだったわね、うん。あの姿はしっかりと心のフィルムに収めたわ……いい思い出よ、ありがとう!」
他にも首や体の線の細さや濡れた黒髪から滴り落ちる雫の尊さを語りたかったが、これはすでにレスターと存分に語り合い済みだ。自重しよう。
手をファインダーの形にしてお礼を言うと、フェリクスは俯いて肩を震わせている。
「どうかした?」
少し心配になるほどの震えようだ。
「……こ、恋人とは、ハートのジャックか」
「ショーン? 違うわよ。あの子が私を好きになるわけないじゃない」
攻略対象のショーンはララみたいに可愛い子が好みなのだ。私は完全に当てはまらない。
「ショーンはエルザのこと大好きな友達だって思ってくれてるよ! そっけないのは照れ屋さんなだけなんだよね」
「そうよねぇ。最近やっと仲良くしてくれるようになって嬉しいの」
手懐けるのに苦労したものだ。
キラキラ笑顔のノエルと笑い合う。
「またみんなで遊びに行きたいなぁ」
「そうね。どこに行こうかしら。当然、ララも一緒にね」
まだ腕の中にいるララに笑顔を向けるも、なんとも言えない笑顔を返された。
「そうか……ハートのジャックも被害者か……」
「あれが、スペードの不落城の異名の元です」
「本人は不落城の刺客と呼ばれているがな」
「俺、明日にでも川の底に沈んでいたりしませんよね……兄上が止めてくださいますよね……?」
「あいつ、兄ちゃんよりつえーからなぁ……」
「ちょっと。なんの話よ?」
刺客だとか川の底だとか、やけに物騒な言葉が並んでいる。
「不落城?」
「エルザは気にしなくて良い。君の友人となれたことに対する感謝を、スペードの皆様に伝えていたところだ」
「私の友人の話でどうしてそんなに物騒な単語が出てくるのよ」
私の印象に関わる問題だ。更に問い詰めようとしたら、くいと裾を引かれて振り向くも誰もいない。視線を下にずらせば、真剣な眼差しの赤い瞳があった。
0
お気に入りに追加
1,161
あなたにおすすめの小説

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした
miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。
婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。
(ゲーム通りになるとは限らないのかも)
・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。
周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。
馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。
冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。
強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!?
※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

婚約破棄をいたしましょう。
見丘ユタ
恋愛
悪役令嬢である侯爵令嬢、コーデリアに転生したと気づいた主人公は、卒業パーティーの婚約破棄を回避するために奔走する。
しかし無慈悲にも卒業パーティーの最中、婚約者の王太子、テリーに呼び出されてしまうのだった。

好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。

【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる