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第一章
81 補佐は頑張りました
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「お前、ほんと素直すぎて心配になるわ」
「あなたに褒められたら誰でも喜びますよ!」
今の褒め言葉は嘘なのか本当なのかだけ教えてほしい。
そう叫ぶとキングは腹を抱えて笑った。
「本当だって。俺は戦闘中は火の玉を投げつけるくらいしかできないからな。エルザやゼンが羨ましいよ。もちろんお前もな」
「あなたでもそう思うことがあるんですか」
「当たり前だろ。魔法は結局ゼンに勝てずじまいだし、剣だけならエルザに勝てるが魔法を混ぜられると駄目だな。三人の中じゃ俺が最弱なんだよ、実のところ」
言いながらもキングの剣は俺の影を切り、間合いを詰められる。
キングの避ける方向を予測して、影を出す場所に気を付けた。後ろに意識が向かないように。
「ああ、でもゼンと組んだ時にエルザに負けたことはないぞ。前で足を止めてりゃ、そのうち二対一になるからな。……だからな、その、負けてもあんま気にしなくていい、というか、そこまで深く考えなくて、いいからな? ほんと。ちょっとお前と遊びたくなっただけ、いや、悪ふざけしたっつーか……」
「……いえ、キングに勝てずにエルザの隣には立てません。キングがお決めになったことを俺がうやむやにするわけにはいきませんので」
「えっ、いや、ほんと気にしなくていいんだって! まいったな、わざと負けるのはむず痒いし、エルザに絶対バレる……気にすんなって! エルザもお前が好きだぞ! 俺にはわかる!」
俺にもわかる。
慌てるキングの様子に、どうやら俺が意地を張るとこの人は困るらしいとわかった。
なるほど、この方向か。
「そういうわけには。エルザが俺を好きなんてことがあるわけないですし、やはり俺はキングに勝てぬままのほうが良いかもしれません」
俺がうなだれて言うと、キングは声にも焦りを滲ませた。
「いやちょっと落ち着け! 大丈夫だって! あいつはかなりお前が好きだぞ! ダンスも楽しそうだったろ!?」
「あのダンスはキングの代わりに過ぎませんよ。やはり俺とエルザでは釣り合わない。気持ちを伝えるのはやめにしておきます」
「だから待てって!! くっそ……本気で殺される……っ」
キングは遂に剣を振る手を止めて、そのまま鞘に収めてしまった。
まさかここまで動揺されるとは。さすがに少し心が痛むが、あと少し耐えなければならなかった。
俺を説得するつもりらしいキングは、足早ににじりよってきた。
「こんなのただの遊びだって! 言ってやったらあいつ絶対喜ぶぞ? 俺を信じろ!」
「果たしてそうでしょうか。エルザはハートの方々とも親しくされていますし、俺を好きになるとは思えません」
「いやいや俺がどれだけエルザと一緒にいると思う? あいつのことは俺が一番よく知ってる。あれのお前を見る目は」
「キング」
不遜だが、言葉を区切らせてもらった。
「なんだっ言う気になったか!?」
「俺の仕事はあなたの足止めです」
焦る顔は一瞬で険しくなり、キングは真横に飛び退った。
その時には収められていた剣はすでにキングの手元にある。
「……どうして仲良くお喋りしてるの? 剣までしまって。手合わせ中でしょう?」
「……オーウェン……お前……っ」
笑いの滲む顔で睨まれるが、騒ぐ心臓を抑えて声をあげた。
「俺は気持ちを伝えるために、ここに参りました」
正確にはここにではなく執務室にだが。
「絶対に諦めません!」
影を操り、キングの足を留める。
「あー、くっそ……」
悔しげなキングとエルザの鋭い声。
どさりと倒れたキングにエルザが剣を突きつけて数秒。
キングは手を緩慢に振り、勝敗を表した。
エルザは満足げに剣をしまい「よっしゃあ、焼肉!」と勝鬨をあげた。
「あなたに褒められたら誰でも喜びますよ!」
今の褒め言葉は嘘なのか本当なのかだけ教えてほしい。
そう叫ぶとキングは腹を抱えて笑った。
「本当だって。俺は戦闘中は火の玉を投げつけるくらいしかできないからな。エルザやゼンが羨ましいよ。もちろんお前もな」
「あなたでもそう思うことがあるんですか」
「当たり前だろ。魔法は結局ゼンに勝てずじまいだし、剣だけならエルザに勝てるが魔法を混ぜられると駄目だな。三人の中じゃ俺が最弱なんだよ、実のところ」
言いながらもキングの剣は俺の影を切り、間合いを詰められる。
キングの避ける方向を予測して、影を出す場所に気を付けた。後ろに意識が向かないように。
「ああ、でもゼンと組んだ時にエルザに負けたことはないぞ。前で足を止めてりゃ、そのうち二対一になるからな。……だからな、その、負けてもあんま気にしなくていい、というか、そこまで深く考えなくて、いいからな? ほんと。ちょっとお前と遊びたくなっただけ、いや、悪ふざけしたっつーか……」
「……いえ、キングに勝てずにエルザの隣には立てません。キングがお決めになったことを俺がうやむやにするわけにはいきませんので」
「えっ、いや、ほんと気にしなくていいんだって! まいったな、わざと負けるのはむず痒いし、エルザに絶対バレる……気にすんなって! エルザもお前が好きだぞ! 俺にはわかる!」
俺にもわかる。
慌てるキングの様子に、どうやら俺が意地を張るとこの人は困るらしいとわかった。
なるほど、この方向か。
「そういうわけには。エルザが俺を好きなんてことがあるわけないですし、やはり俺はキングに勝てぬままのほうが良いかもしれません」
俺がうなだれて言うと、キングは声にも焦りを滲ませた。
「いやちょっと落ち着け! 大丈夫だって! あいつはかなりお前が好きだぞ! ダンスも楽しそうだったろ!?」
「あのダンスはキングの代わりに過ぎませんよ。やはり俺とエルザでは釣り合わない。気持ちを伝えるのはやめにしておきます」
「だから待てって!! くっそ……本気で殺される……っ」
キングは遂に剣を振る手を止めて、そのまま鞘に収めてしまった。
まさかここまで動揺されるとは。さすがに少し心が痛むが、あと少し耐えなければならなかった。
俺を説得するつもりらしいキングは、足早ににじりよってきた。
「こんなのただの遊びだって! 言ってやったらあいつ絶対喜ぶぞ? 俺を信じろ!」
「果たしてそうでしょうか。エルザはハートの方々とも親しくされていますし、俺を好きになるとは思えません」
「いやいや俺がどれだけエルザと一緒にいると思う? あいつのことは俺が一番よく知ってる。あれのお前を見る目は」
「キング」
不遜だが、言葉を区切らせてもらった。
「なんだっ言う気になったか!?」
「俺の仕事はあなたの足止めです」
焦る顔は一瞬で険しくなり、キングは真横に飛び退った。
その時には収められていた剣はすでにキングの手元にある。
「……どうして仲良くお喋りしてるの? 剣までしまって。手合わせ中でしょう?」
「……オーウェン……お前……っ」
笑いの滲む顔で睨まれるが、騒ぐ心臓を抑えて声をあげた。
「俺は気持ちを伝えるために、ここに参りました」
正確にはここにではなく執務室にだが。
「絶対に諦めません!」
影を操り、キングの足を留める。
「あー、くっそ……」
悔しげなキングとエルザの鋭い声。
どさりと倒れたキングにエルザが剣を突きつけて数秒。
キングは手を緩慢に振り、勝敗を表した。
エルザは満足げに剣をしまい「よっしゃあ、焼肉!」と勝鬨をあげた。
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