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第一章
77 補佐は頑張りました
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「先日、キングからお話を伺って、その、私は逃げました。エルザ殿とお二人の間に割り入ることなど出来ないと。また割って入ったところでエルザ殿と今の関係を続けることが出来なくなることの方が私にはとても恐ろしくもありました。ただ近くで見つめていられればそれで、キングとクイーンと三人で笑っている彼女を見ていられれば俺は幸せだとずっと思っていたのです。ですが、俺は」
いつのまにか俺はソファから立ち上がっていた。
「それ以上を望んでしまいました。俺はエルザを愛しています! 分不相応だということは承知の上です。それでもエルザのそばに、お二人とともにありたいのです! どうか、交際を認めていただけないでしょうか!」
手も声も震えて仕方ない。
それでも目だけは絶対に逸らさずに、キングとクイーンを見つめ続けた。
ほんの数秒とも数分とも思える時間が過ぎたのち、音が聞こえるほどキングは深く息を吐いて、天を仰いだ。
「………………良かった……」
良かった?
俺の耳はキングの小さい呟きをきちんと拾い上げたが、意味がわからず首を傾げる。
「一生恨まれるところだった……」
「恨まれるで済めば良いですがね」
「他人事みたいに言いやがって……お前も共犯だからな」
二人の会話は要領を得ない。
これは、認めていただけるということなのか、やはり駄目なのか。
「座ってください、オーウェン殿」
「……前にも言っただろ。俺達に遠慮することはない。好きなら構わず口説き落とせってな」
言われて腰掛け、どうやら許しは得られたらしいと悟る。
「よろしいのでしょうか」
「ああ。あっ、もちろん俺達から離れるようなことは言うなよ」
念を押すように言われて慌てる。
「当然のことです! そのようなことをお伝えすればエルザはきっと困り果てるでしょうから……」
そう伝えるとキングとクイーンの目は柔らかさを帯び、一気に肩の力が抜けた。
「……あいつはいいのを見つけたもんだな。いや、5にした俺の手柄か?」
「それを言うなら補佐に指名したのは私です」
和やかに話すお二人にほっと息をついた。
良かった、本当に。
「……いや、しかしこれではあいつらに不公平かな?」
優しげな声は唐突に面白げなものに変わり、思わず顔を上げるとキングの赤い目はあの日のように俺を写す。
ツウっと背筋に汗が流れたのがわかった。
「また馬鹿なことを」
呆れた様子のクイーンに助けを求める目を向けるも、決して視線は合わなかった。
「な、なんの話でしょう……?」
恐る恐る問いかければ、キングはにやける口を重苦しく開いた。
「いやぁ、レグ達にエルザに告白するなら俺とゼンを倒してからにしろって言ったことがあってな。お前にそれを言わないのは、やっぱり不公平だよなぁ?」
告白……?
言葉をなくす俺に、キングは面白い玩具を見つけた子供のように笑って言った。
「よし、オーウェン。修練場に行くぞ。エルザに告白したければ、俺を倒してからにしろ!」
さっさとマントを翻して扉に向かうキングと「もう知りませんからね」とため息交じりながらも後に続くクイーンは、幸いにも俺の様子に気付かなかった。
頭の中にはどうしようという五文字だけが延々と流れ続けている。
どうしよう。もうすでに想いを交わし、キスまで済ませた挙句、昨日エルザは俺の部屋に泊まりました。
などと。
意気揚々と歩いていくキングとクイーンに、言えるはずもなかった。
いつのまにか俺はソファから立ち上がっていた。
「それ以上を望んでしまいました。俺はエルザを愛しています! 分不相応だということは承知の上です。それでもエルザのそばに、お二人とともにありたいのです! どうか、交際を認めていただけないでしょうか!」
手も声も震えて仕方ない。
それでも目だけは絶対に逸らさずに、キングとクイーンを見つめ続けた。
ほんの数秒とも数分とも思える時間が過ぎたのち、音が聞こえるほどキングは深く息を吐いて、天を仰いだ。
「………………良かった……」
良かった?
俺の耳はキングの小さい呟きをきちんと拾い上げたが、意味がわからず首を傾げる。
「一生恨まれるところだった……」
「恨まれるで済めば良いですがね」
「他人事みたいに言いやがって……お前も共犯だからな」
二人の会話は要領を得ない。
これは、認めていただけるということなのか、やはり駄目なのか。
「座ってください、オーウェン殿」
「……前にも言っただろ。俺達に遠慮することはない。好きなら構わず口説き落とせってな」
言われて腰掛け、どうやら許しは得られたらしいと悟る。
「よろしいのでしょうか」
「ああ。あっ、もちろん俺達から離れるようなことは言うなよ」
念を押すように言われて慌てる。
「当然のことです! そのようなことをお伝えすればエルザはきっと困り果てるでしょうから……」
そう伝えるとキングとクイーンの目は柔らかさを帯び、一気に肩の力が抜けた。
「……あいつはいいのを見つけたもんだな。いや、5にした俺の手柄か?」
「それを言うなら補佐に指名したのは私です」
和やかに話すお二人にほっと息をついた。
良かった、本当に。
「……いや、しかしこれではあいつらに不公平かな?」
優しげな声は唐突に面白げなものに変わり、思わず顔を上げるとキングの赤い目はあの日のように俺を写す。
ツウっと背筋に汗が流れたのがわかった。
「また馬鹿なことを」
呆れた様子のクイーンに助けを求める目を向けるも、決して視線は合わなかった。
「な、なんの話でしょう……?」
恐る恐る問いかければ、キングはにやける口を重苦しく開いた。
「いやぁ、レグ達にエルザに告白するなら俺とゼンを倒してからにしろって言ったことがあってな。お前にそれを言わないのは、やっぱり不公平だよなぁ?」
告白……?
言葉をなくす俺に、キングは面白い玩具を見つけた子供のように笑って言った。
「よし、オーウェン。修練場に行くぞ。エルザに告白したければ、俺を倒してからにしろ!」
さっさとマントを翻して扉に向かうキングと「もう知りませんからね」とため息交じりながらも後に続くクイーンは、幸いにも俺の様子に気付かなかった。
頭の中にはどうしようという五文字だけが延々と流れ続けている。
どうしよう。もうすでに想いを交わし、キスまで済ませた挙句、昨日エルザは俺の部屋に泊まりました。
などと。
意気揚々と歩いていくキングとクイーンに、言えるはずもなかった。
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