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第一章
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「それを理解できてるなら簡単だろ」
ピクニックを楽しむ私の耳に、ショーンの声が届いた。
ふと目を向けると、ショーンが爪先立ちになってオーウェンの額に人差し指を指し当て――。
「大人になってからじゃ難しいから、手を使って且つここからも魔力が出ていると考えればいい。手を使わないでと考えるから出来な――」
「「なにそれずるい!!」」
なんっという羨ましいことを!!
「私だってそんなことしてもらったことないのに!」
「僕もそうだよ! 魔法について聞いても無視するくせに!」
「そもそも爪先立ちとか初めて見たんだけど!」
「身長差をうまく利用するなんて!」
きゃあきゃあ言い合っていると、レスターが影に平手打ちされた。
こっちを見てないのに、すごい!
「どこで気が合ってんだ、お前ら……」
ルーファスの呆れ声などどうでもいい。
「私もデコツンされたい!!」
「僕もデコツンされたい!!」
「馬鹿言ってないで、せっかくレスター殿も来ていただいたのですから、手合わせでもいかがですか?」
「それどころじゃないよ! あれは見守らなきゃいけない!」
「いや、早急に隔離すべきだ。よし、レスター殿。私と一戦いかがかな?」
立ち上がったルーファスが、不敵に笑ってレスターを見下ろす。口調の変わった相手に、レスターは心底嫌そうに顔を歪めた。
「それ、一戦じゃ済まなくなるやつじゃないか……仕方ないなぁもう……お相手を務めさせていただきます。スペードのキング」
ため息から一転、優雅に騎士の礼を執ったレスターとルーファスは離れていった。ゼンもそれに付き添うらしい。
あちらも気になるが、オーウェンとショーンを放置するのも気がひける。
「私達は猫と犬を眺めてましょうか。可愛くて和むわ」
「はい! 二人とも楽しそうですね」
「オタクは好きなものについて語る時が一番輝いてるわよねぇ」
先程の私達のことでもある。
それにしても本当に楽しそうだ。
瞳を輝かせてショーンと話すオーウェンを見ていると、ふつふつと心に名前のわからない感情が湧き上がる。
オーウェンは魔法が好きで、ショーンのことを稀代の魔法使いだと以前から絶賛していた。ゼンやルーファスのことを尊敬していると言っていたし、ノエルのことも魔法使いと対等以上に渡り合う剣術に感動していた。
もしも私が魔法を使えない人間だったら、オーウェンは私のことを認識すらしなかっただろう。
「エルザ殿!」
突然呼ばれて顔をあげると、オーウェンが満面の笑顔でこちらに駆け寄ってくる。慌てて立ち上がった。
「どうし――」
「……!? ……! …………!」
耳元で大声を出されているのに、何を言っているのかまったく聞こえなかった。
わかるのは、体を締め付ける熱とうるさく脈打つ心臓の鼓動だけだ。
ピクニックを楽しむ私の耳に、ショーンの声が届いた。
ふと目を向けると、ショーンが爪先立ちになってオーウェンの額に人差し指を指し当て――。
「大人になってからじゃ難しいから、手を使って且つここからも魔力が出ていると考えればいい。手を使わないでと考えるから出来な――」
「「なにそれずるい!!」」
なんっという羨ましいことを!!
「私だってそんなことしてもらったことないのに!」
「僕もそうだよ! 魔法について聞いても無視するくせに!」
「そもそも爪先立ちとか初めて見たんだけど!」
「身長差をうまく利用するなんて!」
きゃあきゃあ言い合っていると、レスターが影に平手打ちされた。
こっちを見てないのに、すごい!
「どこで気が合ってんだ、お前ら……」
ルーファスの呆れ声などどうでもいい。
「私もデコツンされたい!!」
「僕もデコツンされたい!!」
「馬鹿言ってないで、せっかくレスター殿も来ていただいたのですから、手合わせでもいかがですか?」
「それどころじゃないよ! あれは見守らなきゃいけない!」
「いや、早急に隔離すべきだ。よし、レスター殿。私と一戦いかがかな?」
立ち上がったルーファスが、不敵に笑ってレスターを見下ろす。口調の変わった相手に、レスターは心底嫌そうに顔を歪めた。
「それ、一戦じゃ済まなくなるやつじゃないか……仕方ないなぁもう……お相手を務めさせていただきます。スペードのキング」
ため息から一転、優雅に騎士の礼を執ったレスターとルーファスは離れていった。ゼンもそれに付き添うらしい。
あちらも気になるが、オーウェンとショーンを放置するのも気がひける。
「私達は猫と犬を眺めてましょうか。可愛くて和むわ」
「はい! 二人とも楽しそうですね」
「オタクは好きなものについて語る時が一番輝いてるわよねぇ」
先程の私達のことでもある。
それにしても本当に楽しそうだ。
瞳を輝かせてショーンと話すオーウェンを見ていると、ふつふつと心に名前のわからない感情が湧き上がる。
オーウェンは魔法が好きで、ショーンのことを稀代の魔法使いだと以前から絶賛していた。ゼンやルーファスのことを尊敬していると言っていたし、ノエルのことも魔法使いと対等以上に渡り合う剣術に感動していた。
もしも私が魔法を使えない人間だったら、オーウェンは私のことを認識すらしなかっただろう。
「エルザ殿!」
突然呼ばれて顔をあげると、オーウェンが満面の笑顔でこちらに駆け寄ってくる。慌てて立ち上がった。
「どうし――」
「……!? ……! …………!」
耳元で大声を出されているのに、何を言っているのかまったく聞こえなかった。
わかるのは、体を締め付ける熱とうるさく脈打つ心臓の鼓動だけだ。
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