45 / 206
第一章
45
しおりを挟む
目を開ければそこは慣れ親しんだ自室のベッドの上だった。穏やかな日の光での目覚めは決して悪くないが、私は唸りながら顔を手で覆い、再びベッドに背中から倒れ込んだ。
酔っても記憶を失わないから昨日のことは完全に覚えている。
ララに告白され、飲み物の確認もせずに一気に飲み干し、幼馴染に謝り続ける酔っ払いの所業を一片も漏らさず……。
「あああもう、なにがどうしてこうなっちゃったの……」
返事をしてくれる人はいない。
しかし吐き出さずにはいられなかった。
このゲームは自由行動があり、その時に会いに行ったキャラの好感度が上がってイベントが起こる、というシステムだった。
ルーファスなら中庭、ゼンなら執務室、ノエルなら修練場にいることが多く、会いに行って二言三言話すと好感度が上がるという具合だ。
ちなみにショーンは食堂か図書室にいることが多かった。
そしてこのゲームは寄り道にシビアだ。ほとんど毎ターン攻略したいキャラに会う必要があった。
それを踏まえて思い返せば……。
「会いに来てたわねぇ……毎日毎日……」
白の国から書状が届いてからのララは、毎日私に会いに来ていた。
誰かのイベントを起こしさえすれば問題ないと思って特に考えもせず一緒に過ごしていたが、まさか私が攻略される対象になるとは考えてもいなかった。
わかっていたら理由をつけて断っ……れただろうか。なんだかんだと言いつつ一緒に過ごすことになっていた気もする。
とにかく、早く返事をしないと。
いつまでもだらだらと先延ばしにすることは不誠実だし、何より私にはララを恋人として見ることは出来ない。
早い段階で断れば、まだストーリーへの軌道修正は可能かもしれないし……。
いや、ダンスを申し込まれなかった時点で、確実にもう好感度は足りない。
ララはノーマルエンドでこの世界を去ることになるだろう。
それを寂しく思ってしまうが仕方ないことだ。初見でグッドエンドは難しい。
ゆっくりと体を起こし身支度を整えた。
朝食前にララに会いに行こう。
ララも私達と同じ食堂で食事をしているから、顔を合わせることになる。
その前にきちんと返事をして、お友達としてこれからの時間を過ごしていこう。
泣かれてしまうかもしれないけど、長引かせたところで思いに応える気はない。
シャツにパンツとラフな服装に着替え、ララの部屋へと向かった。
部屋をノックすると、ララはすぐに出てきた。もしかして眠れなかったりしたのかしらと不安になる。しかし客が私だとわかったら花が咲いたような笑顔で出迎えてくれて、心が痛い。
「おはよう、ララ。少しお話がしたいのだけど、いいかしら」
「もちろんです! 朝からエルザさんが会いに来てくれるなんて、嬉しい」
頬を染めてはにかむララに、心臓が激しく脈打つ。
朝から会いに行くのって、もしかして断るには非常識だった? OKすると思われてる? この空気で断れるか、私!?
酔っても記憶を失わないから昨日のことは完全に覚えている。
ララに告白され、飲み物の確認もせずに一気に飲み干し、幼馴染に謝り続ける酔っ払いの所業を一片も漏らさず……。
「あああもう、なにがどうしてこうなっちゃったの……」
返事をしてくれる人はいない。
しかし吐き出さずにはいられなかった。
このゲームは自由行動があり、その時に会いに行ったキャラの好感度が上がってイベントが起こる、というシステムだった。
ルーファスなら中庭、ゼンなら執務室、ノエルなら修練場にいることが多く、会いに行って二言三言話すと好感度が上がるという具合だ。
ちなみにショーンは食堂か図書室にいることが多かった。
そしてこのゲームは寄り道にシビアだ。ほとんど毎ターン攻略したいキャラに会う必要があった。
それを踏まえて思い返せば……。
「会いに来てたわねぇ……毎日毎日……」
白の国から書状が届いてからのララは、毎日私に会いに来ていた。
誰かのイベントを起こしさえすれば問題ないと思って特に考えもせず一緒に過ごしていたが、まさか私が攻略される対象になるとは考えてもいなかった。
わかっていたら理由をつけて断っ……れただろうか。なんだかんだと言いつつ一緒に過ごすことになっていた気もする。
とにかく、早く返事をしないと。
いつまでもだらだらと先延ばしにすることは不誠実だし、何より私にはララを恋人として見ることは出来ない。
早い段階で断れば、まだストーリーへの軌道修正は可能かもしれないし……。
いや、ダンスを申し込まれなかった時点で、確実にもう好感度は足りない。
ララはノーマルエンドでこの世界を去ることになるだろう。
それを寂しく思ってしまうが仕方ないことだ。初見でグッドエンドは難しい。
ゆっくりと体を起こし身支度を整えた。
朝食前にララに会いに行こう。
ララも私達と同じ食堂で食事をしているから、顔を合わせることになる。
その前にきちんと返事をして、お友達としてこれからの時間を過ごしていこう。
泣かれてしまうかもしれないけど、長引かせたところで思いに応える気はない。
シャツにパンツとラフな服装に着替え、ララの部屋へと向かった。
部屋をノックすると、ララはすぐに出てきた。もしかして眠れなかったりしたのかしらと不安になる。しかし客が私だとわかったら花が咲いたような笑顔で出迎えてくれて、心が痛い。
「おはよう、ララ。少しお話がしたいのだけど、いいかしら」
「もちろんです! 朝からエルザさんが会いに来てくれるなんて、嬉しい」
頬を染めてはにかむララに、心臓が激しく脈打つ。
朝から会いに行くのって、もしかして断るには非常識だった? OKすると思われてる? この空気で断れるか、私!?
0
お気に入りに追加
1,161
あなたにおすすめの小説

わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~
絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

婚約破棄をいたしましょう。
見丘ユタ
恋愛
悪役令嬢である侯爵令嬢、コーデリアに転生したと気づいた主人公は、卒業パーティーの婚約破棄を回避するために奔走する。
しかし無慈悲にも卒業パーティーの最中、婚約者の王太子、テリーに呼び出されてしまうのだった。

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした
miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。
婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。
(ゲーム通りになるとは限らないのかも)
・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。
周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。
馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。
冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。
強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!?
※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!
蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」
「「……は?」」
どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。
しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。
前世での最期の記憶から、男性が苦手。
初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。
リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。
当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。
おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……?
攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。
ファンタジー要素も多めです。
※なろう様にも掲載中
※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる