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ハチ
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「とりあえず初めに、みんなはあの夜のことを覚えているか?」
大前提としてまず初めに確認しなければならないと思った。忘れていないからこそここにいるのだろうが、それでも確認するべきだとおれは考えた。
やはりというべきだろうか。皆おれの問いに頷いた。つまり覚えているのだろう。あの少女のことも、おれ達がその少女に殺されたことも。
「ね、ねぇ……零士くん。色々考えたんだけど『げーむ?』の所為であたし達殺されたんじゃない?」
「『げーむ?』の所為?」
確かに昨日やった『げーむ?』のタイミングも合わせれば疑いたくなる気持ちは分からなくもないが、だがそれはあまりにも……。
「……現実離れしすぎていないか?」
「た、確かにそうだけど」
朝霧さんも無茶苦茶を言っていることは理解していたのか、おれの反論にすぐに縮こまってしまった。
だがここで意外なところから声があがる。
「……で、ですけど……昨夜の出来事も現実離れしてますし……一概に否定はできないと……思います」
「おれも愛菜に賛成だ。……あんなことが起きたんだ、現実離れなんて今更だろ?」
永井と佐藤さんの意見も最もだ。事実としておれは殺されたしその記憶もある。それだけではなく昨日と同じ曜日に日付、この時点で現実離れはとっくにしているといっていい。
あの夜の出来事の原因に心当たりは『げーむ?』を除いてまったくない。だとしたら今は『げーむ?』について調べるのが利口だろう。
「……確かにそれもそうだな。……もう一度アプリを起動するか?」
ごくりっと誰かが唾液を飲み込んだ音が聞こえた気がした。本音を言えばおれだって『げーむ?』を起動したくない。
現在おれ達には情報がないから無闇矢鱈なことをして状況を悪化させる可能性だってある。
もしかしたら『げーむ?』を起動したからあの夜が訪れた可能性だってある。もしそうだとしたら今ここで『げーむ?』を起動しなければおれ達はあの夜を過ごす必要だってなくなるわけだ。
「あ、あたしはそれでもいいと思う。……このまま何もしなかったらまたあの夜が来るかもしれないし」
朝霧さんの言葉に後押しされた残りの二人も頷いた。
おれは手汗が尋常なほど出ていることがわかった。お陰でスマホが持ちづらい。
『げーむ?』を開きアプリを始めようとした時に何か違和感を感じた。その違和感が何なのかおれは気づかなかったが、朝霧さんの言葉によってすぐに気付かされた。
「あ、あれ……あたしっていつ『げーむ?』をインストールしたっけ?」
朝霧さんがおれ達に見せるのはスマホの『げーむ?』がインストールされているホーム画面。
その瞬間、場の空気が凍り時が止まった気がした。そしてそれと同時におれはその時、昨日の何の変哲もない会話を思い出していた。
“ちょっと待ってね今から『げーむ?』をインストールするから”
“早くしろよ朝霧”
そうだ。確かに朝霧さんは昨日初めてこの公園で『げーむ?』をインストールしたはずなんだ。
だがおれはそんなことを認めたくなくて、少しの期待を求めた。
「あ、朝霧さんはいつインストールしたのか覚えてないのか?」
「……い、いや……絶対にインストールしてない。……だってあたしずっと怖くて、……今日初めてスマホを触ったし……」
朝霧さんの震えた声から嘘はついていないとわかった。それどころか普段の活発な彼女からは想像もできない姿におれも戸惑いを隠せない。
「お、落ち着いて。……佐藤さん頼んでいいか?」
「は、はい」
おれは混乱して疲弊している朝霧さんをこのまま放っておくのは危険だと判断した。
この中で一番朝霧さんと仲がいいのは佐藤さんなので、この件は彼女に任せようと思いおれと永井は彼女達と少し離れた。
「……珍しいこともあるもんだな?」
「こんな状況なんだ、別に不思議なことじゃない」
それでも驚いたが、よく考えれば異常じゃない。いや、むしろ普通だ。
逆におれや佐藤さんは落ち着きすぎている。もっと焦っていいはずなのに……。
大前提としてまず初めに確認しなければならないと思った。忘れていないからこそここにいるのだろうが、それでも確認するべきだとおれは考えた。
やはりというべきだろうか。皆おれの問いに頷いた。つまり覚えているのだろう。あの少女のことも、おれ達がその少女に殺されたことも。
「ね、ねぇ……零士くん。色々考えたんだけど『げーむ?』の所為であたし達殺されたんじゃない?」
「『げーむ?』の所為?」
確かに昨日やった『げーむ?』のタイミングも合わせれば疑いたくなる気持ちは分からなくもないが、だがそれはあまりにも……。
「……現実離れしすぎていないか?」
「た、確かにそうだけど」
朝霧さんも無茶苦茶を言っていることは理解していたのか、おれの反論にすぐに縮こまってしまった。
だがここで意外なところから声があがる。
「……で、ですけど……昨夜の出来事も現実離れしてますし……一概に否定はできないと……思います」
「おれも愛菜に賛成だ。……あんなことが起きたんだ、現実離れなんて今更だろ?」
永井と佐藤さんの意見も最もだ。事実としておれは殺されたしその記憶もある。それだけではなく昨日と同じ曜日に日付、この時点で現実離れはとっくにしているといっていい。
あの夜の出来事の原因に心当たりは『げーむ?』を除いてまったくない。だとしたら今は『げーむ?』について調べるのが利口だろう。
「……確かにそれもそうだな。……もう一度アプリを起動するか?」
ごくりっと誰かが唾液を飲み込んだ音が聞こえた気がした。本音を言えばおれだって『げーむ?』を起動したくない。
現在おれ達には情報がないから無闇矢鱈なことをして状況を悪化させる可能性だってある。
もしかしたら『げーむ?』を起動したからあの夜が訪れた可能性だってある。もしそうだとしたら今ここで『げーむ?』を起動しなければおれ達はあの夜を過ごす必要だってなくなるわけだ。
「あ、あたしはそれでもいいと思う。……このまま何もしなかったらまたあの夜が来るかもしれないし」
朝霧さんの言葉に後押しされた残りの二人も頷いた。
おれは手汗が尋常なほど出ていることがわかった。お陰でスマホが持ちづらい。
『げーむ?』を開きアプリを始めようとした時に何か違和感を感じた。その違和感が何なのかおれは気づかなかったが、朝霧さんの言葉によってすぐに気付かされた。
「あ、あれ……あたしっていつ『げーむ?』をインストールしたっけ?」
朝霧さんがおれ達に見せるのはスマホの『げーむ?』がインストールされているホーム画面。
その瞬間、場の空気が凍り時が止まった気がした。そしてそれと同時におれはその時、昨日の何の変哲もない会話を思い出していた。
“ちょっと待ってね今から『げーむ?』をインストールするから”
“早くしろよ朝霧”
そうだ。確かに朝霧さんは昨日初めてこの公園で『げーむ?』をインストールしたはずなんだ。
だがおれはそんなことを認めたくなくて、少しの期待を求めた。
「あ、朝霧さんはいつインストールしたのか覚えてないのか?」
「……い、いや……絶対にインストールしてない。……だってあたしずっと怖くて、……今日初めてスマホを触ったし……」
朝霧さんの震えた声から嘘はついていないとわかった。それどころか普段の活発な彼女からは想像もできない姿におれも戸惑いを隠せない。
「お、落ち着いて。……佐藤さん頼んでいいか?」
「は、はい」
おれは混乱して疲弊している朝霧さんをこのまま放っておくのは危険だと判断した。
この中で一番朝霧さんと仲がいいのは佐藤さんなので、この件は彼女に任せようと思いおれと永井は彼女達と少し離れた。
「……珍しいこともあるもんだな?」
「こんな状況なんだ、別に不思議なことじゃない」
それでも驚いたが、よく考えれば異常じゃない。いや、むしろ普通だ。
逆におれや佐藤さんは落ち着きすぎている。もっと焦っていいはずなのに……。
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