最強村長の無双日記

シマセイ

文字の大きさ
上 下
17 / 19

第17話:魔王の城と村の噂

しおりを挟む
溶岩が流れる荒野を進むカイルは、剣を手に汗ばむ掌を拭った。
背後にはソフィが杖を軽く握り、ハンスが盾を背負って黙々と歩く。

三人はモロコシ村を後にして二日、魔王ゴルザードの城を目指していた。
黒い岩の尖塔が遠くに見え、空は灰色の雲に覆われている。  

「魔王の力がここにあるなら、俺の名は王都に刻まれる」  
カイルの声は低く、野心が滲む。
ソフィが風で髪をかき上げながら笑った。  

「カイルってば、また大物ぶってる。
でも、あのジジイの村、ほんと面白かったね」  

ハンスが盾を調整し、短く言う。「強い奴がいるなら、また試したい。それだけだ」  
カイルはモロコシ村での出来事を思い出す。
ガルドの杖一振りで跳ね返された剣、ミナの光の蝶、チビの素早さ。
あの村はただの辺境じゃない。ゴルザードとの繋がりが鍵だ。  

「城に何かあるはずだ。あのジジイが隠してる秘密を俺が暴く」  
カイルが剣を握り直し、城の門へ近づいた。

---

その頃、モロコシ村では穏やかな朝が訪れていた。
陽光が畑を照らし、ミナがトゲちゃんに跨って光の蝶を飛ばす。「トゲちゃん、上手く追える?」と笑う声が響く。
チビはナイフで木の枝を削り、「俺、冒険者みたいに旅してみたいっす」と呟く。
トビーは芋を手に持つけど、少し落ち着かない。  
「なんか…あの冒険者たち、気になっちゃって。胃がモヤモヤするよ…」  

ガゾルが鉄腕をガチャンと鳴らし、「お前、胃が敏感すぎるだろ。
あいつら、ゴルザード様に会いに行ったのかもな」と言う。  

ガルドは広場のボロ椅子に座り、目を閉じてたけど、鼻をクンクンと動かした。  
「ゴルザードの城か。あの冒険者のガキども、野心丸出しだったな。まぁ、何か見つけたら面白いか」  

ミナが首をかしげ、「村長さん、あの人たち大丈夫かな?」と聞く。
チビが目を輝かせ、「ジジイ、俺も城行ってみたいっす!」と叫ぶ。
村人たちがざわつく中、ガルドが眠そうな声で答えた。  
「城ねぇ。昔はゴルザードと酒飲んでただけだ。冒険者が何か騒ぐなら、放っとけよ」  

---

魔王の城の門は黒い岩でできていて、魔物がうろつく気配が漂う。
カイルが剣を抜き、「行くぞ」と囁く。
ソフィが杖を振って風を起こし、門の隙間をこじ開けた。
ハンスが盾を構え、先に進む。  
中は薄暗く、石の床に埃が積もってる。
玉座の間へ続く廊下を進むと、魔王軍の残党らしい影がちらつくけど、近づくと逃げ出した。  

「ゴルザードの部下、妙に少ないな?
あのジジイのせいか?」  
カイルが呟くと、ソフィが笑う。
「あの村にやられたなら、魔王も大変ね」  

玉座の間にたどり着くと、巨大な椅子が寂しげに佇んでる。
その奥、壁に埋め込まれた石板が目に入った。古い文字が刻まれ、赤い宝石が光ってる。  
「これだ…!」  
カイルが近づき、石板に触れる。
すると、低い声が響いた。  

「我が力を求める者か?ゴルザードの過去を知る覚悟はあるか?」  
三人が凍りつく。
ソフィが「何!?魔王の声じゃないわ!」と杖を構え、ハンスが「罠か?」と盾を上げる。
カイルが剣を握り直し、「続けろ」と呟く。  
石板が光り、幻影が浮かんだ。
若いゴルザードと、見慣れない老人が酒を飲む姿。老人は杖を持ち、笑ってる――ガルドだ。  

「こいつ…あのジジイか!」  
カイルが目を細める中、幻影が語り始めた。
「我は古の魔王。
ゴルザードとガルドに倒され、力を封じられた。
この宝石に我が残魂が宿る。求めるなら、試練を越えろ」  

---

モロコシ村では、チビが広場で跳び回ってた。
「ジジイ!冒険者が城で何か見つけたら、俺らも行くっすよ!」  
ミナが光の蝶を飛ばしながら、「ゴルザードさんの城ってどんなとこなんだろ?私も見てみたい!」と笑う。
トビーが「胃が…でもちょっとワクワクする…」と呟き、ガゾルが「ゴルザード様の城に何かあるなら、昔の話かもしれないな」と鉄腕を鳴らす。  

ガルドが芋をかじりながら答えた。  
「城に何かねぇ。昔、ゴルザードと前魔王をしばいて、玉座で寝てただけだ。冒険者が騒ぐなら、勝手にやらせとけ」  

村人たちが「えぇぇ!?」「また昔話!?」とざわつく中、ミナが目を輝かせ、「村長さん、ほんと?」と聞く。ガルドがニヤリと笑う。  

「まぁ、古い魔王のガラクタが残っててもおかしくねぇ。
俺とゴルザードで封じたもんだからな」  
チビが「何!?ジジイ、もっと教えてっす!」とせがむけど、ガルドは芋をかじって黙った。

---

魔王の城では、石板の光が強まり、玉座の間に黒い影が現れた。
狼のような魔物が三匹、牙を剥いてカイルたちを囲む。  

「試練か…受けてやる!」  
カイルが剣を振り、狼を斬るけど、影が再生する。
ソフィが風の刃を放ち、「やりにくいわね!」と叫ぶ。ハンスが盾で防ぎ、「硬ぇな…!」と呻く。
三人は息を合わせて戦うけど、魔物の数は増えるばかり。  

幻影が笑う。「我が力を求めるなら、己を超えろ。ガルドとゴルザードの絆を越えられるか?」  
カイルが歯を食いしばる。
「絆だと?あのジジイと魔王が…!」  
戦いは続くけど、カイルの頭にモロコシ村が浮かんだ。
あの村の強さは、ガルドだけじゃない。
ミナ、チビ、ガゾル――皆が繋がってる。  
「くそっ…俺たちも負けねぇ!」  

村では、夜が訪れていた。
ガルドが椅子に座り、星空を見上げる。  
(冒険者のガキども、城で何見つけたかな。昔の魔王のガラクタでも騒ぐなら、笑いもんだな)  

ミナが「村長さん、冒険者さんたち、戻ってくるかな?」と聞く。
チビが「俺、城行って確かめるっす!」と意気込む。トビーが「胃が…でも楽しみ…」と笑う。村の灯りが静かに揺れ、新たな波紋が広がり始めていた。
しおりを挟む
script?guid=on

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

願いの代償

らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。 公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。 唐突に思う。 どうして頑張っているのか。 どうして生きていたいのか。 もう、いいのではないだろうか。 メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。 *ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。 ※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

処理中です...