46 / 125
第47話 再訪、ゴブリンの巣窟へ
しおりを挟む
Eランク冒険者としての実力を証明し、次なるステップへと進むために。
アルトは、迷うことなくギルドで目的の依頼書を手に取った。
『ゴブリン・リーダー討伐:西の森洞窟。巣の主(ホブゴブリン級)の討伐、及び残存ゴブリンの掃討。報酬 銀貨3枚~。ランクE推奨(要注意)』
以前、命からがら逃げ出した、あの忌まわしい巣窟への再挑戦だ。
カウンターで依頼書を提出すると、ギルドマスターはその内容とアルトの顔を交互に見て、重々しく頷いた。
「ついに、あれに挑むか。ホブゴブリンは、ただのゴブリンとは全くの別物だぞ。力も強いが、それなりに知恵も働き、部下のゴブリンを巧みに使って攻撃してくる。前回の偵察でその存在は確認できたようだが、実際に戦うとなれば、話は全く違う。決して油断するなよ」
「はい。覚悟はできています」
アルトの目に宿る決意を見て、マスターはそれ以上何も言わず、ただ「健闘を祈る」とだけ付け加えた。
訓練場では、バルガスがアルトを呼び止めた。
「聞いたぞ、アルト。ホブゴブリンに挑むそうじゃねえか」
「はい。今の俺の実力を試してみたいんです」
「ふん、威勢だけは一人前だな。いいか、ホブゴブリン相手なら、力押しだけじゃ絶対に勝てん。相手の動き、特にあの戦斧の動きをよく読み、カウンター反射のタイミングを完璧に合わせろ。そして、奴が一瞬でも隙を見せたら、躊躇するな。躊躇なく剣で急所を突け。お前がこの数ヶ月でどれだけ成長したか、見せてみろ」
バルガスの言葉は厳しくも、その奥には確かな期待が込められていた。
アルトは力強く頷き、師からの最後の激励を胸に刻んだ。
これまでにない危険な任務になることは間違いない。
アルトは、考えうる限りの準備を整えた。
革鎧とバックラーはオイルで念入りに磨き上げられ、鈍い光を放っている。
ショートソードの刃は、砥石で極限まで鋭く研ぎ澄まされた。
腰のポーチには、通常より多めの回復軟膏と、リナが特別に調合してくれた強力な解毒薬草。
そして、長丁場になることを見越して、携帯食料と水筒も満タンにした。
ロープや松明といった基本的な道具も、改めて状態を確認する。
最後に、アルトは静かに目を閉じ、数分間、精神を統一した。
恐怖心はない。
あるのは、強敵に挑む武者震いと、必ず生きて帰るという強い決意だけだった。
そして、アルトは三度(みたび)、あのゴブリンの巣がある洞窟の前に立った。
前回とは違う。
今はもう、偵察のためにこそこそと隠れる必要はない。
目的は、巣の掃討、そしてリーダーの討伐だ。
洞窟入り口で見張りをしていたゴブリン数匹が、アルトの姿を認めるや否や、奇声を上げて襲いかかってくる。
アルトはそれを、冷静沈着に迎え撃った。
バックラーで一体の棍棒を受け止め、ショートソードで別の個体の喉を素早く掻き切る。
さらに別のゴブリンの体当たりを、腕に装着したバックラー越しに反射!
バキリ、と骨の砕ける音が響き、ゴブリンは吹き飛んだ。
見張りは、あっという間に沈黙した。
以前の苦戦が嘘のような、圧倒的な速さと効率。
アルト自身の成長が、そこにはっきりと表れていた。
洞窟内部へと足を踏み入れる。
相変わらずの悪臭と、湿った空気。
アルトは松明に火を灯し、慎重に奥へと進んでいく。
今回は、遭遇するゴブリンを一体残らず排除していくつもりだ。
リーダーとの戦いに集中するため、そして、後顧の憂いを断つために。
狭い通路で、曲がり角で、あるいは小さな広間で。
アルトは次々とゴブリンたちに遭遇した。
弓を持つ者、槍を持つ者、棍棒を振り回す者。
しかし、今のアルトにとって、通常のゴブリンはもはや脅威ではなかった。
向上した剣術で攻撃を捌き、バックラーで確実に防御し、そして必殺のカウンター反射で骨を砕く。
時には、ギフトの応用である「衝撃波(仮)」を放ち、複数の敵を同時に怯ませ、その隙に各個撃破する。
アルトの動きには無駄がなく、冷静かつ効率的だった。
できるだけ大きな物音を立てないように、一撃で仕留めることを意識しながら、彼は着実に巣の内部を制圧していく。
前回見つけた罠にも注意を払う。
鳴子は静かに dâyを切り、落とし穴の目印は記憶し、慎重に迂回する。
ゴブリンたちの稚拙な罠は、アルトの注意力を鈍らせることはできなかった。
洞窟内のゴブリンを、おそらく半数以上は掃討しただろうか。
ついに、アルトはあの最深部に位置する、広い空間へとたどり着いた。
中央の焚き火が、周囲の壁に揺らめく不気味な影を映し出している。
そして、その広間の中央、岩の玉座のような場所に、あのホブゴブリンが座っていた。
アルトの侵入に気づき、ホブゴブリンはゆっくりと立ち上がった。
その体躯はやはり大きく、鍛え上げられた筋肉が盛り上がっている。
手には、鈍い光を放つ金属製の戦斧。
周囲には、まだ5匹ほどのゴブリンが護衛として控えており、それぞれが武器を構え、殺気を放っている。
ホブゴブリンの、他のゴブリンとは明らかに違う、憎悪と狡猾さが入り混じったような鋭い瞳が、アルトを射抜いた。
「グルオオオォォ……!」
低い、しかし腹の底に響くような唸り声と共に、ホブゴブリンは巨大な戦斧を構える。
周囲のゴブリンたちも、リーダーの号令を待つかのように、一斉に武器を構え、アルトを取り囲もうと動き始めた。
一触即発の、張り詰めた空気。
(逃げない……今度は、絶対に!)
アルトは、右手にショートソードを、左腕にはバックラーを構え、ホブゴブリンとその護衛たちと真っ向から対峙する。
彼の背には、もはや退路はない。
ここで全てを終わらせる。
その覚悟が、彼の瞳に強い光を宿らせていた。
Eランク冒険者として、これまでの厳しい訓練と、数々の死線を乗り越えてきた経験。
その全てをぶつける時が来た。
剣術、盾術、そして彼だけが持つギフト【ダメージ反射】。
アルトの持つ力の全てを総動員して、この巣の絶対的な支配者との決戦に挑む。
静まり返った洞窟の広間に、アルトの荒い呼吸と、ゴブリンたちの低い唸り声だけが響いていた。
アルトは、迷うことなくギルドで目的の依頼書を手に取った。
『ゴブリン・リーダー討伐:西の森洞窟。巣の主(ホブゴブリン級)の討伐、及び残存ゴブリンの掃討。報酬 銀貨3枚~。ランクE推奨(要注意)』
以前、命からがら逃げ出した、あの忌まわしい巣窟への再挑戦だ。
カウンターで依頼書を提出すると、ギルドマスターはその内容とアルトの顔を交互に見て、重々しく頷いた。
「ついに、あれに挑むか。ホブゴブリンは、ただのゴブリンとは全くの別物だぞ。力も強いが、それなりに知恵も働き、部下のゴブリンを巧みに使って攻撃してくる。前回の偵察でその存在は確認できたようだが、実際に戦うとなれば、話は全く違う。決して油断するなよ」
「はい。覚悟はできています」
アルトの目に宿る決意を見て、マスターはそれ以上何も言わず、ただ「健闘を祈る」とだけ付け加えた。
訓練場では、バルガスがアルトを呼び止めた。
「聞いたぞ、アルト。ホブゴブリンに挑むそうじゃねえか」
「はい。今の俺の実力を試してみたいんです」
「ふん、威勢だけは一人前だな。いいか、ホブゴブリン相手なら、力押しだけじゃ絶対に勝てん。相手の動き、特にあの戦斧の動きをよく読み、カウンター反射のタイミングを完璧に合わせろ。そして、奴が一瞬でも隙を見せたら、躊躇するな。躊躇なく剣で急所を突け。お前がこの数ヶ月でどれだけ成長したか、見せてみろ」
バルガスの言葉は厳しくも、その奥には確かな期待が込められていた。
アルトは力強く頷き、師からの最後の激励を胸に刻んだ。
これまでにない危険な任務になることは間違いない。
アルトは、考えうる限りの準備を整えた。
革鎧とバックラーはオイルで念入りに磨き上げられ、鈍い光を放っている。
ショートソードの刃は、砥石で極限まで鋭く研ぎ澄まされた。
腰のポーチには、通常より多めの回復軟膏と、リナが特別に調合してくれた強力な解毒薬草。
そして、長丁場になることを見越して、携帯食料と水筒も満タンにした。
ロープや松明といった基本的な道具も、改めて状態を確認する。
最後に、アルトは静かに目を閉じ、数分間、精神を統一した。
恐怖心はない。
あるのは、強敵に挑む武者震いと、必ず生きて帰るという強い決意だけだった。
そして、アルトは三度(みたび)、あのゴブリンの巣がある洞窟の前に立った。
前回とは違う。
今はもう、偵察のためにこそこそと隠れる必要はない。
目的は、巣の掃討、そしてリーダーの討伐だ。
洞窟入り口で見張りをしていたゴブリン数匹が、アルトの姿を認めるや否や、奇声を上げて襲いかかってくる。
アルトはそれを、冷静沈着に迎え撃った。
バックラーで一体の棍棒を受け止め、ショートソードで別の個体の喉を素早く掻き切る。
さらに別のゴブリンの体当たりを、腕に装着したバックラー越しに反射!
バキリ、と骨の砕ける音が響き、ゴブリンは吹き飛んだ。
見張りは、あっという間に沈黙した。
以前の苦戦が嘘のような、圧倒的な速さと効率。
アルト自身の成長が、そこにはっきりと表れていた。
洞窟内部へと足を踏み入れる。
相変わらずの悪臭と、湿った空気。
アルトは松明に火を灯し、慎重に奥へと進んでいく。
今回は、遭遇するゴブリンを一体残らず排除していくつもりだ。
リーダーとの戦いに集中するため、そして、後顧の憂いを断つために。
狭い通路で、曲がり角で、あるいは小さな広間で。
アルトは次々とゴブリンたちに遭遇した。
弓を持つ者、槍を持つ者、棍棒を振り回す者。
しかし、今のアルトにとって、通常のゴブリンはもはや脅威ではなかった。
向上した剣術で攻撃を捌き、バックラーで確実に防御し、そして必殺のカウンター反射で骨を砕く。
時には、ギフトの応用である「衝撃波(仮)」を放ち、複数の敵を同時に怯ませ、その隙に各個撃破する。
アルトの動きには無駄がなく、冷静かつ効率的だった。
できるだけ大きな物音を立てないように、一撃で仕留めることを意識しながら、彼は着実に巣の内部を制圧していく。
前回見つけた罠にも注意を払う。
鳴子は静かに dâyを切り、落とし穴の目印は記憶し、慎重に迂回する。
ゴブリンたちの稚拙な罠は、アルトの注意力を鈍らせることはできなかった。
洞窟内のゴブリンを、おそらく半数以上は掃討しただろうか。
ついに、アルトはあの最深部に位置する、広い空間へとたどり着いた。
中央の焚き火が、周囲の壁に揺らめく不気味な影を映し出している。
そして、その広間の中央、岩の玉座のような場所に、あのホブゴブリンが座っていた。
アルトの侵入に気づき、ホブゴブリンはゆっくりと立ち上がった。
その体躯はやはり大きく、鍛え上げられた筋肉が盛り上がっている。
手には、鈍い光を放つ金属製の戦斧。
周囲には、まだ5匹ほどのゴブリンが護衛として控えており、それぞれが武器を構え、殺気を放っている。
ホブゴブリンの、他のゴブリンとは明らかに違う、憎悪と狡猾さが入り混じったような鋭い瞳が、アルトを射抜いた。
「グルオオオォォ……!」
低い、しかし腹の底に響くような唸り声と共に、ホブゴブリンは巨大な戦斧を構える。
周囲のゴブリンたちも、リーダーの号令を待つかのように、一斉に武器を構え、アルトを取り囲もうと動き始めた。
一触即発の、張り詰めた空気。
(逃げない……今度は、絶対に!)
アルトは、右手にショートソードを、左腕にはバックラーを構え、ホブゴブリンとその護衛たちと真っ向から対峙する。
彼の背には、もはや退路はない。
ここで全てを終わらせる。
その覚悟が、彼の瞳に強い光を宿らせていた。
Eランク冒険者として、これまでの厳しい訓練と、数々の死線を乗り越えてきた経験。
その全てをぶつける時が来た。
剣術、盾術、そして彼だけが持つギフト【ダメージ反射】。
アルトの持つ力の全てを総動員して、この巣の絶対的な支配者との決戦に挑む。
静まり返った洞窟の広間に、アルトの荒い呼吸と、ゴブリンたちの低い唸り声だけが響いていた。
22
あなたにおすすめの小説
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
無属性魔法しか使えない少年冒険者!!
藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。
不定期投稿作品です。
クラスまるごと異世界転移
八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。
ソレは突然訪れた。
『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』
そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。
…そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。
どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。
…大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても…
そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる