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第43話 新たな盾、新たな敵
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バックラー。
左腕に装着された、鉄で縁取られた革張りの円盾は、アルトにとって新たな力の象徴だった。
これを手に入れてから数週間、彼はバルガスの指導の下、来る日も来る日もソード&バックラースタイルの基礎訓練に明け暮れていた。
最初はぎこちなかった盾の扱いも、反復練習によって驚くほど体に染みつき始めていた。
右手のショートソードで攻撃を受け流し、死角から来る攻撃を左腕のバックラーで弾く。
バックラーで相手の攻撃を受け止め、体勢を崩した一瞬の隙に、右手の剣でカウンターを叩き込む。
あるいは、バックラー自体を武器として振り回し、相手を打ち据える打撃技(バッシュ)。
バルガスの指導は常に実践的で、アルトは防御だけでなく、攻撃の選択肢も増えたことを実感していた。
もちろん、ギフト【ダメージ反射】と盾の連携も、アルトは熱心に研究していた。
バックラーで相手の物理攻撃を受け止めた、まさにその瞬間に、ギフトを発動させる。
腕で直接受ける時とは衝撃の伝わり方が微妙に異なり、最初はタイミングを掴むのに苦労した。
しかし、練習を重ねるうちに、盾越しの反射も確実に可能であることを確認できた。
その威力も、直接受け止める場合と遜色ないようだ。
これで、より安全に、より戦略的に反射を使うことができるだろう。
「衝撃波(仮)」をバックラーから放つようなイメージも試してみたが、こちらはまだ実用レベルには至っていない。
そんなある日、訓練を終えたアルトに、バルガスが声をかけた。
「だいぶ様になってきたじゃねえか、アルト。剣と盾の連携もスムーズになってきたし、あの妙な反射も、盾越しに問題なく使えるようだな」
バルガスは、満足そうに頷くと、続けた。
「どうだ?そろそろ、その新しい『おもちゃ』を、実戦で試してみる頃合いじゃねえか?」
その言葉を待っていたかのように、アルトの心は高鳴った。
新しい装備と、磨き上げた技術。
それを試す時が来たのだ。
アルトはギルドへ向かい、Eランクの依頼掲示板を注意深く吟味した。
バックラーと剣術、そしてギフトの連携。
その全てを試せるような相手はいないだろうか。
そこで彼の目に留まったのが、一枚の古びた羊皮紙に書かれた依頼だった。
『古い墓地のスケルトン兵討伐:村はずれの旧墓地に出現したスケルトン兵を3体討伐。アンデッド注意。報酬銅貨40枚。ランクE推奨』
スケルトン。
骨がひとりでに動く、アンデッドモンスター。
アルトにとっては、初めて戦うことになる種族だ。
報酬も、これまでの依頼より高い。
挑戦しがいのある相手だと、アルトは直感した。
ギルドマスターに依頼書を提出すると、マスターはアルトの顔を見て少し眉をひそめた。
「スケルトンか…。Eランクになったばかりのお前にしては、少しばかり骨のある相手かもしれんな。奴らは痛みを感じんし、疲れも知らん。普通の生物とは勝手が違うぞ」
マスターは、スケルトンの特徴と注意点を教えてくれた。
「弱点は頭部、あるいは体を繋ぎ止めている魔力の核のようなものだと言われている。だが、一番厄介なのは、斬撃が効きにくいことだ。骨の隙間をすり抜けちまったり、中途半端な攻撃じゃ、骨を叩き折るほどの威力がないと止められんかもしれん」
バルガスにも相談に行くと、彼は腕を組んで唸った。
「アンデッド相手か。聖水でもあれば楽なんだが…まあ、お前さんは持ってないだろうな。奴らの動きは単調なことが多いが、油断してると足をすくわれるぞ。マスターの言う通り、斬るよりは叩き潰す方が有効だ。一体ずつ、確実に頭蓋骨を砕くか、関節を破壊して動きを止めることだな。…まてよ、お前のあの反射なら、その打撃力で骨を砕くことも可能かもしれんな」
師匠たちの言葉を胸に、アルトは準備を整えた。
念入りに手入れされたショートソードと革鎧。
そして、左腕には真新しいバックラー。
聖水はないが、念のため回復軟膏と解毒薬草は携帯していく。
準備を終え、アルトは村のはずれにある古い墓地へと向かった。
そこは、もう何十年も打ち捨てられた場所で、墓石は苔むし、雑草が人の背丈ほどにも伸び放題になっていた。
昼間だというのに、太陽の光はどこか弱々しく、陰鬱で不気味な空気が漂っている。
時折吹き抜ける風が、ヒュウと気味の悪い音を立てて、アルトの外套を揺らした。
墓地の奥深くへと進んでいくと、崩れかけた古い霊廟が見えてきた。
そして、その前に、依頼書にあった通りの魔物の姿があった。
白く、乾いた人間の骨。
それが、まるで操り人形のように動き、錆びついた剣と、ボロボロに朽ちかけた木の盾を手にしている。
それが、3体。
カチャカチャ、カチャカチャ……。
骨と骨が擦れ合う、乾いた不快な音が響く。
生気のない空っぽの眼窩が、侵入者であるアルトを捉えた。
そして、ゆっくりと、しかし確かな敵意を持って、3体のスケルトン兵がアルトに向かって襲いかかってきた。
アルトは、右手にショートソードを、左腕にはバックラーを構える。
初めて対峙するアンデッドモンスター。
そして、新しい装備と戦術を試す、最初の実戦。
背筋に、これまでとは違う種類の緊張が走る。
Eランク冒険者アルトの、新たな戦いが始まろうとしていた。
骨の戦士たちを相手に、彼の剣と盾、そしてギフトは、果たして通用するのだろうか。
左腕に装着された、鉄で縁取られた革張りの円盾は、アルトにとって新たな力の象徴だった。
これを手に入れてから数週間、彼はバルガスの指導の下、来る日も来る日もソード&バックラースタイルの基礎訓練に明け暮れていた。
最初はぎこちなかった盾の扱いも、反復練習によって驚くほど体に染みつき始めていた。
右手のショートソードで攻撃を受け流し、死角から来る攻撃を左腕のバックラーで弾く。
バックラーで相手の攻撃を受け止め、体勢を崩した一瞬の隙に、右手の剣でカウンターを叩き込む。
あるいは、バックラー自体を武器として振り回し、相手を打ち据える打撃技(バッシュ)。
バルガスの指導は常に実践的で、アルトは防御だけでなく、攻撃の選択肢も増えたことを実感していた。
もちろん、ギフト【ダメージ反射】と盾の連携も、アルトは熱心に研究していた。
バックラーで相手の物理攻撃を受け止めた、まさにその瞬間に、ギフトを発動させる。
腕で直接受ける時とは衝撃の伝わり方が微妙に異なり、最初はタイミングを掴むのに苦労した。
しかし、練習を重ねるうちに、盾越しの反射も確実に可能であることを確認できた。
その威力も、直接受け止める場合と遜色ないようだ。
これで、より安全に、より戦略的に反射を使うことができるだろう。
「衝撃波(仮)」をバックラーから放つようなイメージも試してみたが、こちらはまだ実用レベルには至っていない。
そんなある日、訓練を終えたアルトに、バルガスが声をかけた。
「だいぶ様になってきたじゃねえか、アルト。剣と盾の連携もスムーズになってきたし、あの妙な反射も、盾越しに問題なく使えるようだな」
バルガスは、満足そうに頷くと、続けた。
「どうだ?そろそろ、その新しい『おもちゃ』を、実戦で試してみる頃合いじゃねえか?」
その言葉を待っていたかのように、アルトの心は高鳴った。
新しい装備と、磨き上げた技術。
それを試す時が来たのだ。
アルトはギルドへ向かい、Eランクの依頼掲示板を注意深く吟味した。
バックラーと剣術、そしてギフトの連携。
その全てを試せるような相手はいないだろうか。
そこで彼の目に留まったのが、一枚の古びた羊皮紙に書かれた依頼だった。
『古い墓地のスケルトン兵討伐:村はずれの旧墓地に出現したスケルトン兵を3体討伐。アンデッド注意。報酬銅貨40枚。ランクE推奨』
スケルトン。
骨がひとりでに動く、アンデッドモンスター。
アルトにとっては、初めて戦うことになる種族だ。
報酬も、これまでの依頼より高い。
挑戦しがいのある相手だと、アルトは直感した。
ギルドマスターに依頼書を提出すると、マスターはアルトの顔を見て少し眉をひそめた。
「スケルトンか…。Eランクになったばかりのお前にしては、少しばかり骨のある相手かもしれんな。奴らは痛みを感じんし、疲れも知らん。普通の生物とは勝手が違うぞ」
マスターは、スケルトンの特徴と注意点を教えてくれた。
「弱点は頭部、あるいは体を繋ぎ止めている魔力の核のようなものだと言われている。だが、一番厄介なのは、斬撃が効きにくいことだ。骨の隙間をすり抜けちまったり、中途半端な攻撃じゃ、骨を叩き折るほどの威力がないと止められんかもしれん」
バルガスにも相談に行くと、彼は腕を組んで唸った。
「アンデッド相手か。聖水でもあれば楽なんだが…まあ、お前さんは持ってないだろうな。奴らの動きは単調なことが多いが、油断してると足をすくわれるぞ。マスターの言う通り、斬るよりは叩き潰す方が有効だ。一体ずつ、確実に頭蓋骨を砕くか、関節を破壊して動きを止めることだな。…まてよ、お前のあの反射なら、その打撃力で骨を砕くことも可能かもしれんな」
師匠たちの言葉を胸に、アルトは準備を整えた。
念入りに手入れされたショートソードと革鎧。
そして、左腕には真新しいバックラー。
聖水はないが、念のため回復軟膏と解毒薬草は携帯していく。
準備を終え、アルトは村のはずれにある古い墓地へと向かった。
そこは、もう何十年も打ち捨てられた場所で、墓石は苔むし、雑草が人の背丈ほどにも伸び放題になっていた。
昼間だというのに、太陽の光はどこか弱々しく、陰鬱で不気味な空気が漂っている。
時折吹き抜ける風が、ヒュウと気味の悪い音を立てて、アルトの外套を揺らした。
墓地の奥深くへと進んでいくと、崩れかけた古い霊廟が見えてきた。
そして、その前に、依頼書にあった通りの魔物の姿があった。
白く、乾いた人間の骨。
それが、まるで操り人形のように動き、錆びついた剣と、ボロボロに朽ちかけた木の盾を手にしている。
それが、3体。
カチャカチャ、カチャカチャ……。
骨と骨が擦れ合う、乾いた不快な音が響く。
生気のない空っぽの眼窩が、侵入者であるアルトを捉えた。
そして、ゆっくりと、しかし確かな敵意を持って、3体のスケルトン兵がアルトに向かって襲いかかってきた。
アルトは、右手にショートソードを、左腕にはバックラーを構える。
初めて対峙するアンデッドモンスター。
そして、新しい装備と戦術を試す、最初の実戦。
背筋に、これまでとは違う種類の緊張が走る。
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