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第20話 蜘蛛の糸と毒牙
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森の東地区。
そこは、陽の光も届きにくい、鬱蒼とした木々が支配するエリアだった。
木々の間には、まるで悪意を持って張り巡らされたかのように、白く太い蜘蛛の糸が無数に存在し、不気味な静寂を際立たせている。
アルトは、足元に絡みつく粘つく糸に注意しながら、ナイフを片手に慎重に進んでいた。
その時、頭上の太い枝から、巨大な影が音もなく降りてきた。
体長はアルトの背丈ほどもあるだろうか。
8本の毛むくじゃらの脚、多数の複眼が不気味に光る。
フォレストスパイダーだ。
さらに、アルトが後退しようとした瞬間、背後の茂みからも、もう一体のフォレストスパイダーがガサガサと音を立てて姿を現した。
挟み撃ち。
依頼書には「2匹討伐」とあったが、まさか同時に相手にすることになるとは。
キシャアァァッ!
独特の威嚇音を発すると共に、2匹のスパイダーは、その腹部から白い粘液のような塊――粘着性の高い糸を、アルトに向かって同時に噴射してきた。
想像以上の速さと量だ。
「うわっ!」
アルトは咄嗟に横へ跳んで回避する。
地面に落ちた糸は、ネバネバとした音を立てて広がった。
あれに絡め取られたら、身動きが取れなくなるのは明らかだ。
アルトはすぐにナイフを構え、次の糸攻撃に備える。
訓練通り、飛んでくる糸を切り払おうとする。
しかし、糸は見た目以上に粘り気が強く、ナイフの刃にまとわりつき、動きを鈍らせる。
「くそっ、切りにくい…!」
これでは埒が明かない。
アルトは思い切って、ポイズンスライム戦で効果があった「衝撃波(仮)」を試してみることにした。
迫り来る糸の塊に向かって腕を突き出し、ギフトの反射の感覚で、力を前方に押し出す!
「――ッ!」
目には見えない力が放たれ、糸の塊にぶつかる。
完全に弾き飛ばすことはできないまでも、糸の軌道はわずかに逸れ、勢いが弱まった。
その隙に、アルトは素早く身を翻し、糸の直撃を避ける。
「やっぱり使える!これなら…!」
ギフトの応用が実戦で役立つことを確認し、アルトは少しだけ希望を見出す。
しかし、衝撃波(仮)は連発できるものではなく、体力の消耗も激しい。
糸を捌いている間に、スパイダーたちは素早く距離を詰めてきていた。
「接近戦に持ち込むしかない!」
アルトは意を決し、衝撃波(仮)で糸を牽制しつつ、一体のスパイダーに向かって駆け出した。
接近すれば、あの厄介な糸は使いにくくなるはずだ。
しかし、接近戦もまた、アルトの想像以上に困難だった。
スパイダーは8本の脚を巧みに使い、多方面から攻撃を仕掛けてくる。
鋭く尖った脚の先端での突きや薙ぎ払い。
アルトはその不規則な動きに翻弄されながらも、ナイフで必死に攻撃を受け流す。
そして、最も警戒すべきは、頭部にある鋭い毒牙だ。
スパイダーが大きく口を開け、緑色の涎を垂らしながら噛みついてくる。
「危ない!」
アルトは咄嗟に、革の腕当てを装着した左腕を盾にした。
ガチッ!という鈍い音と共に、鋭い牙が腕当てに食い込む。
衝撃で腕が痺れる。
幸い、兄がくれた丈夫な腕当てのおかげで、牙は貫通しなかった。
毒が注入されることもなかったようだ。
だが、もし腕当てがなければ、今頃は毒で動けなくなっていただろう。
冷や汗がアルトの額を伝う。
「こっちの攻撃も、通さないと…!」
スパイダーの脚による叩きつけ攻撃。
これは、反射の好機だ。
アルトはその攻撃を、あえて腕で受け止めた。
そして、全神経を集中させ、ギフトを発動!
「ギャッ!」
反射ダメージを受けたスパイダーは、甲高い鳴き声を上げ、わずかに怯んだように後退した。
効果はある!
アルトはこの隙を見逃さなかった。
弱点は腹部。
地面に近い位置にあり、普段は多くの脚で守られているが、怯んだ今なら…!
アルトは低い姿勢から、ナイフを突き上げるようにして繰り出した。
狙いは、柔らかそうな腹部。
ザシュッ!
ナイフの先端が、スパイダーの腹部に浅くだが突き刺さった。
「ギシャアアア!!」
スパイダーは苦痛に身をよじり、激しく脚を動かしてアルトを振り払おうとする。
致命傷ではないが、ダメージは与えられたはずだ。
アルトはすぐに距離を取り、追撃の機会をうかがう。
しかし、もう一体のスパイダーが、アルトの隙を突いて再び糸を飛ばしてきた。
アルトは衝撃波(仮)で糸を防ぎつつ、一体目のスパイダーとの距離を保つ。
糸を捌き、脚の攻撃を反射し、隙を見てナイフで腹部を狙う。
この攻防を、アルトは粘り強く繰り返した。
毒牙による攻撃も、間一髪でかわし続ける。
集中力が途切れたら、一瞬でやられてしまうだろう。
そして、ついにその時が来た。
度重なる反射ダメージと、腹部への攻撃によって、一体目のスパイダーの動きが明らかに鈍くなる。
アルトは最後の勝機と見て、渾身の集中力で反射を放った。
スパイダーの脚による叩きつけを受け止め、溜め込んだエネルギーを叩きつける!
「これで、どうだ!!」
反射を受けたスパイダーは、大きな悲鳴と共に後方へ吹き飛び、地面に叩きつけられると、脚を数度痙攣させた後、ぴくりとも動かなくなった。
「よし、まず一匹……!」
アルトは荒い息をつきながら、肩で息をする。
一体倒すだけで、これほどの消耗。
しかし、休んでいる暇はない。
残る一体のスパイダーが、仲間をやられた怒りと警戒心からか、さらに凶暴な気配を漂わせてアルトを睨みつけている。
ギフトの応用(衝撃波)は、糸に対して有効だった。
しかし、連続使用はできない。
毒牙の脅威は常に付きまとう。
そして何より、自分の防御力の低さが、大胆な攻撃をためらわせる。
「あと一匹……集中だ!」
アルトはナイフを強く握り直し、最後の敵との戦いに臨む。
Fランク冒険者として、この試練を乗り越えなければならない。
そこは、陽の光も届きにくい、鬱蒼とした木々が支配するエリアだった。
木々の間には、まるで悪意を持って張り巡らされたかのように、白く太い蜘蛛の糸が無数に存在し、不気味な静寂を際立たせている。
アルトは、足元に絡みつく粘つく糸に注意しながら、ナイフを片手に慎重に進んでいた。
その時、頭上の太い枝から、巨大な影が音もなく降りてきた。
体長はアルトの背丈ほどもあるだろうか。
8本の毛むくじゃらの脚、多数の複眼が不気味に光る。
フォレストスパイダーだ。
さらに、アルトが後退しようとした瞬間、背後の茂みからも、もう一体のフォレストスパイダーがガサガサと音を立てて姿を現した。
挟み撃ち。
依頼書には「2匹討伐」とあったが、まさか同時に相手にすることになるとは。
キシャアァァッ!
独特の威嚇音を発すると共に、2匹のスパイダーは、その腹部から白い粘液のような塊――粘着性の高い糸を、アルトに向かって同時に噴射してきた。
想像以上の速さと量だ。
「うわっ!」
アルトは咄嗟に横へ跳んで回避する。
地面に落ちた糸は、ネバネバとした音を立てて広がった。
あれに絡め取られたら、身動きが取れなくなるのは明らかだ。
アルトはすぐにナイフを構え、次の糸攻撃に備える。
訓練通り、飛んでくる糸を切り払おうとする。
しかし、糸は見た目以上に粘り気が強く、ナイフの刃にまとわりつき、動きを鈍らせる。
「くそっ、切りにくい…!」
これでは埒が明かない。
アルトは思い切って、ポイズンスライム戦で効果があった「衝撃波(仮)」を試してみることにした。
迫り来る糸の塊に向かって腕を突き出し、ギフトの反射の感覚で、力を前方に押し出す!
「――ッ!」
目には見えない力が放たれ、糸の塊にぶつかる。
完全に弾き飛ばすことはできないまでも、糸の軌道はわずかに逸れ、勢いが弱まった。
その隙に、アルトは素早く身を翻し、糸の直撃を避ける。
「やっぱり使える!これなら…!」
ギフトの応用が実戦で役立つことを確認し、アルトは少しだけ希望を見出す。
しかし、衝撃波(仮)は連発できるものではなく、体力の消耗も激しい。
糸を捌いている間に、スパイダーたちは素早く距離を詰めてきていた。
「接近戦に持ち込むしかない!」
アルトは意を決し、衝撃波(仮)で糸を牽制しつつ、一体のスパイダーに向かって駆け出した。
接近すれば、あの厄介な糸は使いにくくなるはずだ。
しかし、接近戦もまた、アルトの想像以上に困難だった。
スパイダーは8本の脚を巧みに使い、多方面から攻撃を仕掛けてくる。
鋭く尖った脚の先端での突きや薙ぎ払い。
アルトはその不規則な動きに翻弄されながらも、ナイフで必死に攻撃を受け流す。
そして、最も警戒すべきは、頭部にある鋭い毒牙だ。
スパイダーが大きく口を開け、緑色の涎を垂らしながら噛みついてくる。
「危ない!」
アルトは咄嗟に、革の腕当てを装着した左腕を盾にした。
ガチッ!という鈍い音と共に、鋭い牙が腕当てに食い込む。
衝撃で腕が痺れる。
幸い、兄がくれた丈夫な腕当てのおかげで、牙は貫通しなかった。
毒が注入されることもなかったようだ。
だが、もし腕当てがなければ、今頃は毒で動けなくなっていただろう。
冷や汗がアルトの額を伝う。
「こっちの攻撃も、通さないと…!」
スパイダーの脚による叩きつけ攻撃。
これは、反射の好機だ。
アルトはその攻撃を、あえて腕で受け止めた。
そして、全神経を集中させ、ギフトを発動!
「ギャッ!」
反射ダメージを受けたスパイダーは、甲高い鳴き声を上げ、わずかに怯んだように後退した。
効果はある!
アルトはこの隙を見逃さなかった。
弱点は腹部。
地面に近い位置にあり、普段は多くの脚で守られているが、怯んだ今なら…!
アルトは低い姿勢から、ナイフを突き上げるようにして繰り出した。
狙いは、柔らかそうな腹部。
ザシュッ!
ナイフの先端が、スパイダーの腹部に浅くだが突き刺さった。
「ギシャアアア!!」
スパイダーは苦痛に身をよじり、激しく脚を動かしてアルトを振り払おうとする。
致命傷ではないが、ダメージは与えられたはずだ。
アルトはすぐに距離を取り、追撃の機会をうかがう。
しかし、もう一体のスパイダーが、アルトの隙を突いて再び糸を飛ばしてきた。
アルトは衝撃波(仮)で糸を防ぎつつ、一体目のスパイダーとの距離を保つ。
糸を捌き、脚の攻撃を反射し、隙を見てナイフで腹部を狙う。
この攻防を、アルトは粘り強く繰り返した。
毒牙による攻撃も、間一髪でかわし続ける。
集中力が途切れたら、一瞬でやられてしまうだろう。
そして、ついにその時が来た。
度重なる反射ダメージと、腹部への攻撃によって、一体目のスパイダーの動きが明らかに鈍くなる。
アルトは最後の勝機と見て、渾身の集中力で反射を放った。
スパイダーの脚による叩きつけを受け止め、溜め込んだエネルギーを叩きつける!
「これで、どうだ!!」
反射を受けたスパイダーは、大きな悲鳴と共に後方へ吹き飛び、地面に叩きつけられると、脚を数度痙攣させた後、ぴくりとも動かなくなった。
「よし、まず一匹……!」
アルトは荒い息をつきながら、肩で息をする。
一体倒すだけで、これほどの消耗。
しかし、休んでいる暇はない。
残る一体のスパイダーが、仲間をやられた怒りと警戒心からか、さらに凶暴な気配を漂わせてアルトを睨みつけている。
ギフトの応用(衝撃波)は、糸に対して有効だった。
しかし、連続使用はできない。
毒牙の脅威は常に付きまとう。
そして何より、自分の防御力の低さが、大胆な攻撃をためらわせる。
「あと一匹……集中だ!」
アルトはナイフを強く握り直し、最後の敵との戦いに臨む。
Fランク冒険者として、この試練を乗り越えなければならない。
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